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駐車場に戻って、車がないことに愕然とした大野だった。
「なっちゃん。野田さん・・・!」
なんで!?と考えることもなかった。とにかく、2人はいない。それは事実だ。
そして、なつきが、野田のことを嫌がっていたのは知っているから、この場合、2人で仲良くとんづらしたとは考えにくい。
「しまった。俺は、なんつーヤバイことをしちまったんだ」
それからの大野の行動は早かった。


勉強の合間に、ふとゴロリと床に寝転がり、梶本は電話に目をやった。
今日こそは桜井さんにでも電話してみようかな・・・と思った。
しようと思えば幾らでも出来た電話だったが、なんとなくする気になれずに梶本は日々を過ごしていた。
なつきの電話番号は、勿論ちゃんと覚えていて、今だってなにも見ずに正しく番号出来る自信はあった。

もう二週間も経つんだ。桜井さんと偶然逢ってから。
梶本は目を閉じながら、そんなふうに思った。
そろそろ・・・。してもいいかもしれない。
あの人のことだ。もしかしたら、待ってるかもしれない。
いや、きっと待っている。
素直じゃないから、自分からは絶対に電話はしてこないだろうけど、きっと、電話を待っている。

腕を伸ばし、床に置いたままの電話をズルズルと引っ張った。
今まさに、受話器を持ち上げようとしたら、電話が鳴った。
「もしもし」
「なっちゃんが大変なんだ」
「え?どちら様ですか」
「とにかく。すぐに来てくれ!」
電話はそう叫ぶと、いきなり場所を指定して、ブツリと切れた。
「なっちゃん・・・。なつき。桜井なつき!?」
梶本はガバッと起きあがった。
なにがあった!?なんだろう?
慌てて梶本は、戸締りをすると家を飛び出した。
指定場所に行くと、そこにはなつきの大学の友人という、大野悟が立っていた。
偶然桜井さんに逢ったあの日に、一緒にいた人だと梶本はすぐにわかった。
「呼び出してすまない。覚えてないかもしれないが、君とはこの前会った。俺は」
「大野悟さん。覚えてますよ。で、どうしたんですか?」
梶本は、大野の顔色を見て、僅かに眉を寄せた。
「桜井さんに。なにがあったんですか」
「なっちゃん。野田さんに拉致されちまったんだ。たぶん、無理矢理」
「野田・・・さん。野田さんって、店長?なんで、また・・・」
「ああ。君もよく知ってるよな。あの店の店長だよ。嫌がるなっちゃんを俺が無理矢理野田さんに会わせてしまったんだ」
大野はそう言って俯いた。
「俺。今、あの店で働いているんだけど・・・。なっちゃん。最近元気がなくって」
「元気ないって!?病気かなんか?」
それがどう野田と繋がるのか?と思いながらも、元気がないときけば、当然ながら病気への不安があって、梶本は聞き返す。
「違うと思う。彼女からの電話がなくって、落ち込んでたらしい。元気なくって。
いつもなんだか苛々しながら、それでいて寂しそうで。
うまいモン食いにいけば、
元気になるだろと勝手に思い込んでさ。
野田さんならば、羽振りがいいし、
ちょうど誘われていたから、
なっちゃんも・・・って。それがいけなかったんだ」
頭を抱えながら、大野は続けた。
「一緒に3人で食事して・・・。野田さんが、俺に、名刺入れを店に忘れたから取りにいってくれって言って。
俺は2人を駐車場において店に
戻ったんだ。名刺入れはなくて、駐車場に戻ったら、車はなくって、
なっちゃんも野田さんもいなかった・・・」

話を聞き終えてから、梶本は大野に向かって、手を伸ばした。
「携帯貸して」
「え?」
「携帯を貸せ」
怒鳴られて、大野は、慌てて携帯を取り出し梶本に手渡した。
梶本は、少しも考え込むこともなく、キーを叩いてダイヤルする。
液晶画面には、「なっちゃん」と表示されていた。
「ちっ。電源切られたか」
アナウンスに、梶本は唇を噛んだ。
「大野さん。他にどこに電話しました?」
「店の・・・。知っているヤツには、ほとんど電話したよ」
大野は半分泣きそうだった。
「でも、皆。誰もなんも教えてくれない」
「そりゃそうでしょう。誰も皆店長は怖いんですよ」
「なあ、梶本。なっちゃん。今頃、どうなってんだ?まさか、殴られたりしてねーよな。
あんな辞め方しちまって、野田さんは
怒っているんだろう」
「見当違いですよ。大野さん。貴方はなにも知らないんですか?」
「え」
「あの店で働いていてよくそういう鈍感なこと言えますね。もしかして、野田さんとはお知り合いかなんかですか?」
「知り合いって。野田さんは俺の姉貴のダンナの友達なんだよ」
梶本はうなづいた。
「だから・・・か。大野さん。野田さんってね。両刀なんですよ。つまり、男も食えるんです。
あの人ね。2年前から桜井さんに
惚れていて、追っかけ回していたんですよ。でも、桜井さんは、
そうとは知らずに店長袖にして、逃げ切ったんですよ。野田さんは、
俺の知る限りすげー執念深いから・・・」
梶本は、大野に携帯を投げ返した。
「桜井さん・・・。レイプされてるかもしれない。殴られたりもしてると思う。あの人、おとなしくしてる人じゃないから」
梶本の言葉を聞き、大野は座り込んでしまった。
「マジかよ。なんだよ、それ・・・」
「へばってる場合じゃないです。探すんですよ。出来る限り、早く」
「どうやって!?見つかる訳ねーじゃんかッ。誰も教えてくれねーよ」
大野は半泣きで叫んだ。
「教えてくれねーならば、吐かせるまでです。誰か一人くらいは、野田の自宅か、行きつけのホテルは知ってる筈だ」
座り込んで弱音を吐いている大野を一瞥し、梶本は走り出した。
「梶本。どこへ行くんだ」
「貴方も心当たりを探してください。どんな方法でも、いい。とにかく、早く!!」
走りながら、梶本は唇を噛んだ。
どうしよう。どうしたらいいんだ。一体なんで、こんなことに。
彼女からの電話がないから落ち込んでいたって?それってどういうことだよ!それって俺からの電話のことかよ・・・!
簡単なことだった。電話をかけるなんて。
手を伸ばして、もう既にインプットされている桜井の新しい電話番号を押して。容易いことだった。それをしなかった自分。
あの信号待ちの時。
桜井がぶっきらぼうに教えてきた番号。何度も何度も復唱させられた、あの、番号。
どうしてしなかった?簡単なことじゃないか。
「元気ですか?桜井先輩」
その一言で。それだけで、いいじゃないか!
なのに。自分は、それをしようとはしなかった。出来なかったんじゃなく、しようとしなかった。
待たれていたことを知っていて、しようとしなかった。これは、俺の罪になるのか?たぶん、そうだ。
あの人は、俺が好き。
あの人が、俺からの電話を待っていることを、知っていた。
決して自分からは、かけてこないプライドの高さを知りながら、それを無視したのは、俺の方だった。

今、気づいたよ。
駆け引きしてる時点で、始まっている。始まっているじゃねーかよ!何故気づかなかったのか?
どうでもいい訳じゃなかった。踏み込むのが怖かった。冷めていながら、熱いあの人に、踏み込むのが怖かった。
桜井。桜井なつき。
松木先輩と入れ違いに、知り合った人。
難解な方程式解いてる場合じゃなかった。
俺は。まず最初に。
桜井なつきという、自分にとっての、不可解な存在を、解釈しなきゃならなかったんだ。
今頃、解けても、もう遅い・・・!落第決定だ・・・。

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営業開始前の店に飛び込んで、梶本は辺りを見回す。
店内には、3人の従業員が、煙草をふかして座っていた。
見知った顔はいない。

「野田の場所を教えろよ」
梶本は、カウンターに座る、自分に1番近い男に向かって言った。
「なんだ?てめえ、いきなり」
「うるせえ。とっとと野田のヤローの場所を教えろよ。誰か一人くれーは知ってるだろう。野田の自宅。野田の使うホテル。教えろよ」
「んだ、このガキ?」
「いきなり来てなに喚いてやがるよ」
「大野さんから電話貰っただろ」
梶本の言葉に、3人は顔を見合わせた。
「ああ。さとるちゃんね。状況聞いたけどさァ。なんだか知らないけど、てんちょー、遊んでいるんでしょ。邪魔しちゃうと時給下がっちまうよお」
3人はクスクスと笑った。
「そんなに慌てること?相手誰だか知らないけど、フラフラついていく方も悪いじゃん。野田さん、紳士だし、んなに心配することねえって、
さとるちゃんに伝えなよ」

梶本はフッと笑った。
「どうしても教える気ねーみてーだな」
「ないよ。ガキは家帰ってクソして寝てなよ。オトナの世界に首ツッこんじゃいけないよ」
「ギャハハ。そうだよ、そうだよ」
つかつかと、梶本は3人のうちの一人の元へと歩いていった。
「もう一度、聞くぜ。教える気、マジねえのな?」
「ねえよ」
梶本は、男の吸っていた煙草を、叩き落とした。
「ぶち切れたぜッ」
ガッと梶本は、男を殴り倒した。
「うわっ」
「ってえ!なんなんだ、コイツ」
「どうしても言いたくねえならば、吐かせてやるぜ」
「う、うわ、やめろ。コイツ目イッてるぞ」
「に、逃げろ」
男達は悲鳴をあげて、逃げ出した。


大野が店に来た時は、既に全てのコトがついていた。
店の中は、めちゃくちゃで、3人の男がソファにグッタリとのびていた。
「こ、これは・・・」
「さとるちゃん。カジくんからの伝言があるわ」
「美奈子さん・・・。ちょっと、待ってよ。この状況って・・・」
美奈子は、店の隣にある小さな喫茶店のマスターだった。
「すごい音がして、悲鳴が聞こえたから、ビックリして来て見れば、この様よ。よく見たら、狼藉者らしきは、
2年前にここにいたカジくんじゃない。こいつら、叩きのめして
ついさっき出ていったわよ」
松子はいつものように気だるい声で状況を説明した。
「警察が来るわ。アンタも早く行った方がいい。カジくんからの伝言は、館野町6―1―505。これは野田ちゃんのマンションよ」
「館野町・・・」
大野は繰り返す。
「館野町6―1―505。わかった!」
「エスタヴォールっつーマンションよ」
「ありがとう。美奈子さん」
慌てて大野は、梶本の後を追った。

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こーゆー痛みって、気持ちわりぃよな。
なつきは、ぼんやりと霞む頭で思っていた。

セックスって、もっと、楽しくて気持ちいいよなァ。
なのに。
気持ち悪いばっかなんて、どういうことだよ。
「なつきちゃん。気持ち良くないの?」
野田が聞いてくる。
なつきちゃんだって!?気持ち悪い、嘔吐しちまうぜ!
「ここ、感じないの?」
乳首をグリグリやられて、なつきは顔を顰めた。
「っ・・・!気持ちわりぃーんだよッ」
「そんなこと言って。気持ちイイの間違いだろ。ココ、勃ちつつあるじゃん」
野田は、なつきの剥き出しのソコに長い指を絡めた。
「止めろよ」
「使ってる割には、なつきちゃんのココ、綺麗だよね」
「っせえ・・・な」
「でも、きっと。後ろはもっと綺麗だよね。君、初めてでしょ」
「当たり前だろッ」
クスクス笑いながら、野田はなつきの尻に手を伸ばした。
「ここ、固そうだ」
言いながら、野田はなつきの尻に手をかけて、ソコを大きく広げた。
「!」
ジャラと耳の横で、繋がれた手錠が鳴った。
「ちくしょう。この手錠を外せ」
「イヤだよ。外したら、なつきちゃん、逃げちゃうだろう」
「当たり前だろ!ボケナスッ!」
なつきは、喚いた。

なつきは、薬のせいで朦朧とした意識のまま、どこだか知らない部屋に連れこまれ、
気づいたら裸に剥かれてベッドに手錠でくくりつけられていた。

どんなアホでも、この状況では、自分が強姦されることは理解出来る。
こいつは、極悪人だと、なつきは野田を睨みつけた。
「可愛い顔して、ホントに気が強いよね。君は。そこがまた、可愛いところなんだけどね。僕みたいな性癖の男には」
ウットリと言いながら、野田は、なつきの最奥に指を伸ばした。
「おっと。ヤバイ。いきなりじゃ、切れちゃうね」
ベッドサイドに手を伸ばし、野田はクリームを手にした。
「君も。処女相手に、気を使っただろ?やっぱりね。初めての子には優しくしてあげたいよね」
「優しくしてやりてーならば、この手錠を外せよ!」
「それは・・・無理だよ。オンナノコ相手ならば勝てるけど、君は男だからね。殴られちゃたまらんよ」
野田は、長い指に、クリームを乗せてニッコリと微笑んだ。
「さあ。僕に、見せてよ。君の、まだ穢れてない場所」
「・・・」
ゾーッとする台詞に、なつきは別の意味で気絶しそうになる。
なんか変な本の読み過ぎだぜ、このオッサン。見せたくなくても、この状態じゃどうしようもない。
ガシッと足首を掴まれて、ソコを開かせられる。

満足そうに野田は唇を噛むと、指を伸ばす。
「我慢だよ」
「!」
グッと、微かな振動があり、それから、強烈な痛みが下半身からせりあがってきて、なつきは思わず腰を浮かした。
「いって!いてッ。あ」
「我慢だって。誰でも通る道なんだから」
「通らねーよッ、フツーは。あ、う」
グリグリと野田の指が、なつきの狭いソコを開いていく。
「うっ・・・」
ガッシャンと手錠が激しい音を立てた。
「やめろ。いやだッ。梶本。助けてくれ」
思わず口から出た言葉に、なつきよりも、野田のが先に反応した。
「梶本って、もしかして、カジくんのこと?」
なつきはハッとした。
「なつきちゃん。答えなよ。梶本ってカジくんのことだろ」
野田は、思わず指を止めて、なつきの顔を覗きこんだ。
「かんけー・・ねえだろ」
プイッとなつきは、野田から顔を反らした。
「・・・」
イマイチ釈然としない顔のまま、野田は再び指を動かした。
「ん・・・。あ」
一本だった指が、二本に増え、そしてあっという間に三本に増えてしまう。
「あ、あ。や、やめろ」
ズブリと入った指の感覚に、なつきのソコは、ヒクヒクと音を上げるかのように震えた。
「いてー・・・ぞ。てめ、何本入れてんだよ」
「三本だよ。御望みならばもっと入るよ」
「冗談じゃねー・・・よ。もう、やだ。んんッ」
野田は、散々なつきのソコを荒らしては、退いていった。
「指がいやならば、本番だね」
なつきは、手錠で縛られている手首を激しく動かして抗議する。
「そんなもの突っ込んでみやがれ!呪い殺してやっからな」
「って言ってもね。ソンナモノをツッコミたくて、君を拉致してきたんだから。
明日、悟ちゃんに何言われるか、
我ながら怖いよ。でもね・・・。それでも。
僕は君とヤりたかったんだ。
僕は自分に正直に生きたいから」
うすら笑いを浮かべながら、野田は、なつきの太股に、自分の屹立したモノをわざと擦りつけた。
「どう?たぶん。君を満足させてあげれると思うよ。初めてには、ちょっとキツイかもしれないけれど、なに、何度もやれば慣れるサ」
「ふざけんな。いらん、そんなモン」
バタバタとなつきは暴れた。
「いらんと言われてもやるよ。受け取れよ」
野田は、なつきの両足首を掴んで、左右に割る。
「君は知らないだろうけど。想像通りに綺麗な穴だよ、君のは」
「想像してたんかよ、変態やろー」
なつきの言葉に、野田はポカンと口を開けた。
「・・・。色っぽさに見事に欠ける子だね。イイのは顔だけかい?ガッカリさせないでくれよ」
少し呆れたように野田は苦笑した。
「イヤだ。イヤだ!そんなモン入れるなァ」
なつきは顔を上げて、野田の自慢のモノを見た。
男のそんなモンにお目にかかれる機会はほとんどなかったが、それでも、野田の一物は平均よりもかなり大きいのはわかった。
「可愛く鳴いてくれよ」
野田は言いながら、グッと自分のモノをなつきのソコに擦りつけた。
「あ、やだ。梶本。梶本、梶本」
名を呼んだ瞬間、ドッとなつきの目から涙が溢れた。

幾ら呼んでも、梶本がここに来ないことを知っている。
それでも。呼ばずにはいられなかった。
電話が来ないならば、素直に自分から、かければ良かった。
なつきは今になって死ぬ程後悔した。意地を張って、かけなかった。おまえの声を聞きたくても我慢してしまった。
なんでこんなに素直になれない?それも知っている。おまえの心が、俺にないからだ・・・。
それでも。求めずにはいられなかった。おまえの声を、姿を。その結果が、これなんて。

「あ、あ、あっ!」
野田のモノが、メリメリとソコに侵入してきた。
「力を抜いて。なつきちゃん」
「う。ん、ん」
「なつきちゃん、力を抜きなさい。僕をカジくんと思えばいい」
「!」
その言葉になつきは閉じていた目を開いた。
フワリと熱い涙が自分の頬を流れていったことに気づく。
「誰が。てめえなんかを・・・梶本と思うか」
「なに綺麗ごと言ってんだい。カジくんが好きならば、いつかはセックスするんだろうが
梶本とセックス!?
「君の心はいらないよ。体だけ欲しい。僕は、君の体だけ欲しいんだ」
体、心、体、心、体、心・・・!
なつきは野田の言葉に、愕然としていた。
「ああ。思った通り、可愛い子だ。中がピクピクしてるよ。熱い。イヤイヤ言っても、体はスキなんだよね・・・」
野田はなつきの腹に両手を押し当て、腰をグンッと突き上げた。
「あ、あ、あ。イテッ。んん」
既に頭上の手錠は、うるさいくらいだった。ガチャガチャと鳴りっぱしだった。
「手首が千切れるよ」
手を伸ばし、野田はなつきの右手首を掴んだ。
「おとなしく。本性出して、僕をもっと奥まで誘いなよ」
野田はグイグイと腰を押しつけた。
「う。あ、あ」
なつきは首を振った。その度に、ポロポロと涙が落ちる。
「もっと奥まで・・・。誘えよ、なつき」
凶悪な笑みを浮かべて、野田はなつきの乳首にキスをしながら、左脚を肩に担ぎあげた。
「んんッ」
ズルリと野田のモノを奥まで受けとめて、なつきは喉を反らした。
「あ、は・・・。うう」
「気持ちイイ。反応早いよ。イイよ。なつきちゃん」
息を荒くしながら、野田が歓喜の声を上げた。
なつきは、そのまま目を閉じた。永遠に目を開けたくない・・・。そう思いながら。
野田はしつこく、執拗なまでに、なつきの体を責めた。
手錠を外され、後ろから貫かれたりもしたが、なつきにとって最悪だったのは、鏡の前で、野田の膝に抱え上げられた時だった。
「なつきちゃん。見てごらん。ほら、君のココに、僕のが入っていく」
うっとりとしたような野田の言葉を、背中で聞いていたなつきは、さすがにその瞬間だけは堪えられなかった。
鏡に映る自分。確かにズルズルと野田をソコに迎えいれている。
しかも・・・。体を震わせながら。待ち望んでいるかのように。
「イヤだ。ああ、もうイヤだ」
なつきは首を振った。涙は枯れない。瞳から溢れてくる。
「今更なにを。散々僕を受け入れておいて。ほら、もっと良く見るんだ」
「いやだ、いやだ」
「なつきちゃん」
なつきは渾身の力を振絞って、野田の体から逃れ、鏡に向かって手を伸ばす。
「なつきちゃん。なにを」
なつきは、拳を鏡に叩きつけた。
「!」
ガッシャーン!鏡が割れた。
「手。なつきちゃん、手が」
野田が動揺して、なつきの体を離した。なつきは体を前に折って、拳を押さえていた。拳からは血が流れている。
「大丈夫か?おい」
「離れ・・・ろ。俺から、離れろッ」
なつきは、痛む拳を固く握りながら、野田を振り仰いで、きつく睨んだ。
「おまえなんか、おまえなんか。ダイッキライだ」
言った瞬間、またなつきの瞳からドッと涙が溢れた。
「なつきちゃん・・・。君は・・・」
野田は、そんななつきを見ては、唇を噛んだ。
と、静かな部屋に、突然インターフォンが鳴った。
連続して、それは鳴り続けた。
野田は無視していたが、なつきが叫んだ。
「出ろよ。俺に構わずに出やがれ。俺の近くにいるんじゃねえ」
気が立っているなつきに触れることもかなわず、野田は仕方なく立ち上がると、手早くジーンズと上着を羽織っては、寝室を出ていった。
大した警戒もなく野田はドアを開けた。
すると、そこには梶本が立っていた。
「!」
野田は、さすがに顔色を失くす。
「カジくん・・・」
玄関に立ち尽くす梶本の姿は、あちこち顔を腫らして、傷だらけだった。
しかし、そんな顔で、梶本はニッと笑った。
「ご無沙汰してます。野田さん」
言いながらも梶本は、野田の姿を見て、一縷の望みも断たれたことを知った。
明かに、急いで衣服を身につけてきたようないでたちの野田だったからだ。
「どうしたんだ、一体・・・」
「どうしたもこうしたもねーっすよ」
言い終わるなり、梶本は、野田を殴りつけた。

続く

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