BACK      TOP        NEXT

****3部11話***
マンションの最上階のフロア。ドアの前に立つと同時に、連橋は小田島の舎弟の一人に、後ろ手に手錠をかけられた。
「おまえは凶暴だからな」
ざまーみろ、とばかりに舎弟はそう言うと、連橋の背をドンッとどついた。
「さあ、入れよ。せいぜい可愛がってもらうんだな」
下卑た笑いに見送られ、連橋は玄関をあがった。我ながら、超情けねー格好だと思った。僅かな廊下を歩くと、ガラス扉にぶつかった。手錠をかけられている連橋は、そのドアを開けられない。
「開けろ。クソヤロウ!」
勿体ぶりやがって、とあからさまに連橋は舌打ちした。こっちが到着したことは気づいているだろうし、手錠をかけろと命令したのも小田島の筈だ。なのに、ヤツは出てこようともしない。
「出てこねえならば、それでいい。亜沙子と久人をとっとと返せ」
バンバンッと、連橋は足でガラスドアを蹴り上げた。
「やかましいヤツだな・・・」
声と共に、小田島がドアを開けた。
「開けてください、って言えよ・・・。って・・・、なんだ、てめ。そのツラ」
小田島は、ギョッとしたように、連橋の顔を見た。視線が、顎の髭に集中していた。
「俺のツラに文句があるんだったら、さっさと帰ってやる。だから、亜沙子と久人を」
言いかけた連橋の頬を、小田島がバシッと容赦なく殴った。
「っつ・・・」
「なんだよ、マジに、このツラ。洒落になんねー。チンポ萎える」
グイッ、と小田島は連橋の顎を持ち上げて、忌々しそうな顔をした。
「ずっと萎えてろよ。ざまあみろ」
ククッと連橋は口の端をつりあげて、笑った。さらに小田島から、もう片方の頬を叩かれた。
「いてえなっ!サンドバックじゃねえんだ。ボコボコ殴るンじゃねえっ」
連橋は言い返した。だが、小田島は、グイッと連橋の顎を引き寄せると、噛み付くようにキスをしてきた。
「!」
なんなんだよ・・・と思いながら、連橋は体を捻った。小田島の唇から、逃れる為に。だが、執拗に小田島は連橋の唇に吸い付いてくる。
「っ」
後退しようとして、連橋は足をもつれさせた。ガンッ、と体がガラス扉にぶつかって、バランスを崩した連橋は床に尻餅をついた。両手の自由を奪われるのは、思った以上にバランス感覚がもっていかれる・・・と連橋はあせった。倒れた連橋を、小田島はしばらくジッと見下ろしていた。
「立てよ。おまえの為に、湯張っておいたぜ。仲良く風呂に入ろうぜ」
下卑た小田島の笑み。連橋はムッとした。
「風呂なんか入らねえぞっ。犯すなら、とっとと犯せよ。俺は早く亜沙子と久人と一緒に帰りてーんだっ」
「あのな。時間はまだたっぷりあるんだ。幾ら俺でも、そんなにあせるつもりはねえんだよ。それにな。その髭、やっぱり俺的にダメだ。処理してもらうぜ」
「好きにしろ。だから、早く二人を返せ」
「好きにさせてもらうぜ。ああ。好きにする。連橋。俺達最後にセックスしたの何時だと思う?」
「知るかっ」
「気が遠くなるぐれーの昔だよ。あの時の気持ち良さ思い出す為に、ゆっくりとてめえを犯してやる。その為に、流には留置所いってもらったんだからな」
小田島の言葉に、連橋は弾かれたように反応した。
「呆れたもんだな。やっぱりそういうことかよ。てめえは、こんなことの為に、サンドヴィのやつらや自分の手下をサツに売ったのかよ。丸パクしやがって」
小田島は肩を竦めながら、
「そうだ。こんなこと、の為だけにだ。呆れるか?呆れろよ。俺も自分で呆れてる」
ハハハハと小田島は楽しそうに笑った。
「金は幾らでもかけるって言ったろ。おまえを泣かせる為ならば、幾ら使っても構わねえ」
「変態ヤロウ」
「どっちが。男に犯されて、気持ちよくヒーヒー泣ける、てめえのが変態だろ」
その言葉に、連橋は、血の気が引いていく気がした。だが。
「うるせえっ」
かろうじて反論した。
「まあ、いいさ。あとで証明してやる。立てよ。風呂場はあっちだ」
促されても、連橋はその場に腰を下ろしたまま、プイッと顔を背けた。
「亜沙子と久人は。亜沙子と久人はどこだっ」
小田島は、フンッと鼻を鳴らした。
「城田のマンションだ」
連橋は眉を寄せた。
「城田のマンションだと?」
「城田はな。あの女が好きなんだ。今回の計画を言ったら、アイツはすぐさまあの女の所有を主張してきやがった。手下どもに犯させるんだったら、俺がヤるってな。俺から言わせてみれば、どっちにヤられてもあの女は気の毒としか言えねえな。城田の絶倫さには、俺ンとこの店の女どもがしょちゅう泣かされてるからな」
「・・・ふざけんな・・・」
冗談じゃ済まされない事態だった。連橋は、城田に犯される亜沙子のことを考えて、ゾッとした。
「ふざけてねえぜ。もっとも、女は付録。本来の目的は、あのガキだがな。町田久人。なあ、連橋。あのガキ、町田の息子なんだってな」
ニヤニヤと小田島は笑っている。
「親子ともども、町田なんて薄汚ねーやつらを、俺に殺させないでくれよな」
「てめえ・・・。マジに、ぶっ殺してやる・・・」
連橋の、激しい怒りの瞳が、小田島を射抜いた。その視線に射抜かれ、小田島は一瞬目を見開いた。
「ぶっ殺す?その状態で、どうやって?強がりもいい加減にしろよな」
小田島は壁にかかっていた子機を持ち上げ、受話器を肩に挟んだ。
「俺だ。女とガキを出せ」
そう言って、小田島は受話器を連橋の耳に押し当てた。
「亜沙子、久人」
受話器に向かって、連橋は叫んだ。
『連ちゃん!連ちゃん、今どこっ』
確かに亜沙子の声だった。間違いはないと思っていたが、やはり二人は小田島の手に落ちていた。
『連ちゃん、連ちゃん。ごめんね。ごめんなさいっ』
「亜沙子。いいんだ。おまえは、なにも気にするな。俺は大丈夫だから。久人を頼む。久人のことだけは、守ってやってくれ。俺が必ず迎えに行くから」
『わかったわ。絶対にひーちゃんには指一本触れさせない。ごめんね、連ちゃん・・・』
亜沙子の泣き声。小田島が、受話器を持ち上げ、ブツリと通話を切った。
「・・・」
連橋はゴクリと唾を飲み込んだ。亜沙子と久人は城田のマンションにいる。城田ならば。もしかして、城田ならば・・・と連橋は、一縷の望みを城田に託した。城田は亜沙子に気がある。そして、かつて城田は、久人を殴らずに逃がした。城田が久人と亜沙子を手にしているならば、最悪の事態は免れるかもしれない。俺さえ。俺さえ、耐えれば。
「これでわかったろ。おとなしく俺の言う通りにしなきゃ、あの二人の無事は保証出来ねえぞ。城田は、俺の犬だからな。何度も言うように、アイツは俺の命令には背かない」
その自信に満ちた小田島の物言いに、連橋はフンッと鼻で笑った。なぜだか、とても笑えた。
「なにがおかしい」
すぐに小田島は目を剥いてきた。
「すげえ自信だな、と思って。アイツがてめえにどんな負い目があるか知らねーが、あんまり過剰に信頼してると、いつか裏切られるぜ。てめえなんかに忠告してやるのは、惜しいがよ。城田って男はな。油断ならねえクソヤロウだぜ」
すると、今度は小田島が笑う番だった。
「知らないなら口に出すな。城田は、俺の為ならば、人も殺せる男なんだ。アイツはな。そーゆーヤツなんだよ。だから、大堀のやつらでさえもアイツを怖がっているんだ。イッちまうと、手がつけらんねーんだよ」
連橋は、ピクリと反応した。増山が言っていた件のことだろうか、と思った。城田は真実人を殺したのか?戦いの場で、雑草を避けていくような男が?!
「人殺し。それ、マジなんかよ。誰かの噂話かと思っていたけどな」
「どこで聞いたか知らないが、マジだ。ヤツは俺の目の前で、人を殺した。俺が、殺せ、と命令した瞬間にな」
「・・・」
ありえない話じゃねえな・・・とすぐに連橋は思った。城田の豹変振りは、何度も目にしてきている。城田の、正気と狂気の切り替えスイッチは確かに存在しているのだ。
「だから。城田を甘く見てるンじゃねーぞ。てめえ自身が後悔する羽目になんぞ」
言いながら、小田島は連橋の腰を蹴飛ばした。
「早くしろよ。時間はたっぷりあるが、湯は冷める」
小田島が指差した方向に、連橋は仕方なくヨロリと歩き出した。亜沙子と久人が小田島の手にあるとわかった以上。下手なことは出来ない。この前みたく、我を失う訳にはいかない。連橋はそう思って、唇を噛んだ。
『我慢が足りないんだよ、連橋』
城田のあの時の、余計な一言が、連橋の頭に甦った。


大きな浴槽だった。浴槽からは、湯気が流れていた。連橋は、フワリと体を包んだ浴室の生暖かい空気に、ブルッと体を震わせた。入り口で立ち止まっていると、小田島に手錠を掴まれて引きずられて、そのまま、バシャンッと、服のまま浴槽に放り込まれた。特注品らしく、浴槽は連橋と小田島という二人の大男が入っても、それほどきつくはない。
「突っ込む前に、準備しねーとな」
小田島も服のまま、浴槽に入ってきた。手には、剃刀を持っていた。
「・・・」
キッと連橋は小田島を睨みつけた。
「動くなよ。動いたら、顔に傷がつくぞ。もっともてめえは嫁に行く訳じゃないから、傷ぐらいついたって構わねえだろうけどな。痛いのはイヤだろ?」
シュッと、掌に泡を乗せ、小田島は連橋の顔に手を伸ばした。小田島に触れられるは、イヤだった。連橋は、無意識に体を捻って小田島の手を避けていた。ズルッと、浴槽の底が滑り、連橋の体が、バシャンッと湯に沈んだ。楽しそうに小田島が笑った。
「なに一人で暴れてやがる」
ガッ、と小田島は連橋の金色の髪を掴んで、湯から引きずりあげた。
「ごほっ」
連橋は咽せた。とにかく手の不自由さが、決定的に行動を抑制している。頭からずぶ濡れになってしまった連橋を小田島は目を細めて見つめていた。ジャンパーの下の、白いTシャツから、連橋の乳首が透けて見える。それを見て、小田島はゴクリと喉を鳴らした。Tシャツの上から、小田島は連橋の乳首を掴んだ。
「!」
ビクッ、と連橋の体が竦んだ。
「相変わらずいい反応すんじゃん」
「触るな」
ブンッ、と連橋は首を振った。小田島は右手で剃刀を持ち連橋の顎の髭を落としていく。だが、左手は、連橋の右の乳首をグリグリと弄繰り回していた。
「うっ」
小田島の指の動きに、濡れてズッシリと重くなった連橋のジーンズの股間が、ギュッと熱くなった。
『ちきしょう・・・』
覚えのある感覚に、連橋は唇を噛んで身を捩った。
「あぶねっ」
小田島が、小さく叫んだ。
「動くなよ。感じるのは、わかるけどさ」
クククッと小田島の喉仏が上下する。意外と器用なようで、小田島は左手で悪戯をしながら、連橋の髭を綺麗に処理してしまった。満足したのか、小田島はツルリとした連橋の顎を撫でてから、思いっきり、連橋の顔にシャワーを叩き付けた。
「!」
うぷっ、と連橋は目を閉じた。
「連橋。俺はな。てめえのツラと体が好きなんだよ。今度こんな薄汚い髭生やしてみろ。てめえに、ホルモン注射してやっからな。ホンモノの女にしてやる」
「・・・キチガイ」
連橋は濡れた前髪を掻きあげながら、小田島を睨みあげた。
「さてと。お遊びはオシマイだ。久し振りに、掘らせてもらうぜ」
言うなり、小田島は連橋のTシャツを両手で捲りあげた。
「やめっ」
動こうとして、連橋の背中の手錠が擦りあって、ジャラッと揺れた。
「うるせえよ。まずは一発だ」
小田島は、連橋の胸元に舌を寄せた。さっき散々弄られた右の乳首はもうすっかり勃ちあがっていて、左は今、小田島の舌に舐られていた。
「うっ。う・・・」
うめき、連橋は自分の下半身が気になって仕方なかった。痛いくらいに張り詰めている。
『なんで、俺は。こんなふうになってしまうんだ。イヤなのに。イヤ、なのに・・・』
そのうち気づいた小田島が、連橋の快感を指摘してくるだろう。それがたまらなかった。小田島の、乳首への執拗な愛撫に、連橋は目を伏せて耐えた。ゾクゾクと、その部分から熱が生まれ、やがては一番感じる部分に直結していくのだ。声を唇を噛んでやりすごし、堪えていた連橋に、小田島が囁いた。
「風呂場は声が響くから、イヤなのか?随分さっきから我慢してんじゃねえか」
ガッ、と股間をつかまれて、連橋は堪えきれずに
「あっ」
と声をあげた。
「知ってるんだぜ。さっきから、ココ。勃ってることな」
やはり言われて、連橋は、悔しいことに顔を赤くした。悔しい、悔しい。こんなヤツに触れられて、勃起するなんて・・・!
「辛いだろ。とりあえずは、出してやるよ」
小田島は、体をずらし、連橋の両脚の間に自分の体をねじ込んだ。そして、連橋のウェストを掴むと、水に濡れて重くなったジーンズを、引き降ろした。
「や、やめろっ」
連橋は狼狽した。そうされることはわかっていても、制止の言葉を言わずにはいられない。
「やめるわけ、ねーじゃん」
軽い口調で小田島は言うと、下着ごと連橋のジーンズを取り去った。小田島の目の前で、下半身を開いている自分に耐え切れずに、連橋は脚を閉じようともがいた。だが小田島は、連橋の両の足首を掴んで、ゆっくりと開かせた。
「抵抗すんなよ・・・。んなもんしたら、あの二人がどうなるかわかってんだろ。言っておくがな。今回、俺が一発でも殴られたら、あの二人には、同じことしろって言ってあるんだ。わかるな。俺がてめえに二発殴られたら、あの女もガキも二発。おまえが俺を殺したら、あの二人も殺すってヤツだ」
小田島は、連橋の唇を狙っている。顔をギリギリに連橋に近づけながら、言った。連橋は、小田島から顔を背けながら、
「それを早く言えよ・・・。あやうく、てめえのことを蹴り飛ばすところだったぜ・・・」
と低い声で言い返した。小田島は、自分も上半身のシャツを脱ぎながら、苦笑した。
「相変わらず強気なヤツだよ。チンコ勃起させて、俺の前に尻の穴おっぴろげてる状態でよ」
フフンと笑うと、小田島は連橋の唇にキスをした。
「髭。綺麗になくなったぜ。これで、萎えずに済んで、おまえを犯せるぜ」
「そりゃ残念。それに、髭。伸ばすの結構大変だったのによ」
「無駄な苦労してんだな」
小田島は手を伸ばして、ボディソープを手にした。ポンプ式のそれを、ヒョイッと連橋に見せた。
「これからたくさん犯すのに、しょっぱなからてめえの穴を傷つけるつもりはねえからな。優しいだろ。ちゃんと潤滑剤を使ってやるぜ」
「そりゃどーも」
見せつけられたポンプ式のそれを見て、連橋は目を細めた。
「いつまで余裕こいてやがるのか見物だよ」
小田島は、ボディソープをズッと、湯に静めた。そして、半分湯に浸かっている連橋の、小さな穴目掛けて、それを押し当てた。ビクッと連橋の体が竦んだ。無機質なノズルの先端が、連橋の敏感なその部分に押し当てられた。
「!」
「ぬるぬるになれよ」
グッと小田島がノズルを押し込んだ。
「うっ。あっ」
連橋の小さな穴に、ノズルの先端が僅かに入り込み、液体を吐き出した。小田島の指が、ポンプを押し込む。その度に、ボディソープの液体が連橋の体内に流れこんだ。
「ひっ」
体の中に入り込む液体の異質もそうだが、なにより細いノズルの先端が、連橋には不快だった。襞をチロチロと左右に揺れる。小田島がポンプを押し込む度に、本体が揺れるからだ。
「う、ああっ」
キュッと連橋の眉が苦しそうに歪んだ。それを見て、小田島は楽しそうに笑った。ある程度の量を連橋の穴に流し込んだ小田島は、ポイッとそれをタイルに投げ捨てた。
「ん・・・」
入り口付近でひっかかっていた小さな異物が抜ける時ですら、連橋は喉からせりあがってしまったあえぎを堪えられなかった。
『前より、ひどくなっている・・・』そう思った。男に毎晩抱かれていた訳じゃない。一番最後に男と体を交わしたのは、あの茶髪のヤクザとだ。回数をこなしている訳じゃない。それなのに、自分の体は確実に男からの愛撫に反応していっている。その事実に連橋は愕然とした。
「そんなに良かったか?放心しやがって。ったく、あんなに細いモンでも感じるなんて、よく出来た体だよな」
「うっ。や、やめろ」
今度は指。小田島の指が、連橋の穴に、つぷっ・・・と侵入してきた。
「ああ。やっぱりスムーズだ。城田のアドバイス通りだったな」
小田島の呟きに、連橋はピクリと反応した。城田・・・。ふと、何故か城田の顔がぼんやりと目の前に浮かんできた。
「!」
その瞬間、体に電流が走ったように連橋の体が熱くなって、跳ねた。バシャッと湯が飛び散る。
「?」
小田島が、顔をあげて、連橋を覗きこんだ。
「イイとこか?」
「ち、ちがっ。うっ」
小田島は、連橋の反応に、自分が連橋のイイ場所を突付いたのだと思い、嬉しそうにニヤニヤし出す。違うといいながら、確かに小田島が太い指で突付くソコからは、他のところを擦られるのとは違う感覚だと連橋は思った。体が熱くなったのは、小田島の指が、そこを探ったからだ・・・と連橋は思った。
「あ、あ、あ」
断続的に声がもれた。
「すげえよ。泡、泡」
小田島が、ねっとりと連橋の穴の襞を指で擦りまわすと、先に注入されていたソープが、刺激されて、白い泡となる。連橋の小さな穴からは、白い泡がこぷっと溢れてきていた。開かされた脚の、両の爪先がブルブルと震えるのが、連橋は自分でもわかった。グチュグチュと小田島は連橋の小さな穴を擦り続けていた。
「やめろっ。もう、いいっ」
小田島の指に刺激されて、連橋はペニスの爆発が近づいていることを知った。小田島は、ペニスにさっきから触れていない。ひたすら、狙いどころの、連橋の穴を攻めているのだ。1回も触れられずに射精するなんて、とんでもないことのような気がした。冗談じゃない、と思った。尻の穴をごちゃごちゃ弄られて、それで射精するなんて冗談じゃないと思った。かと言って、小田島に触ってくれ、などと言える筈もないし、言うつもりもない。
「手錠を取れ。手錠を取りやがれっ」
連橋は喚いた。両手を賢明に動かすのに、手錠は勿論外れることはなく、ガチャガチャと震えるだけだった。
「腕が痛い。手錠を外せよ、小田島っ!」
「義政って言ったら、外してやるよ」
「!」
「外して。お願い、義政。って、可愛くおねだり出来たら、外してやるよ」
まるで猫の子を撫でるように、小田島は連橋の喉を指でフワッと撫でた。
「冗談じゃねえっ」
瞬時に連橋は諦めた。そんなことは、死んでも言いたくない。もがく連橋の体が、小田島にぶつかる。
「ちきしょうっ」
手首がチリチリと痛み出した。
「くそっ」
連橋は、夢中でもがき続ける。と、腰を捻った一瞬、自分の胸板と小田島の胸板が、ドンッとぶつかった。
「おっ勃った乳首、押し付けるなよ。興奮しやがって」
剥き出しの小田島の胸に、布越しでも明らかに勃った連橋の乳首が触れたのだ。カッ、と連橋は、小田島の言葉に一瞬顔を赤くした。その顔を見て、小田島の表情がキッと鋭くなった。小田島は連橋の髪を掴むと、浴槽からザバッと身を起こした。
「痛えっ。髪を掴むな!」
「やかましい」
ドッと、湯が零れて、生暖かいタイルの上に、連橋は体を仰向けで押し倒された。ついでとばかりに、小田島は連橋のTシャツを首すれすれまで捲りあげて、赤く充血している乳首を露出させた。ピンッ、と小田島は、連橋の乳首を指で弾いた。
「っ」
連橋のペニスがそれに反応して、緩く震えた。
「乳首。感じるんだな」
満足そうに言って、小田島は連橋の足首を掴んだ。その勢いは、連橋の尻が浮くぐらいだった。泡と、濡れた液体がつるつると落ちてきている連橋のアナルに、小田島は、とっくにそそり立ったペニスを押し付けた。ヒッ、と連橋の体が硬直する。
「力抜け。慌てなくても、ちゃんと押し込んでやるからよ」
ググッ、と指とは比較にならない大きさのモノが捻りこまれて、連橋は仰け反った。
「いてっ。痛っ!い。あああっ」
「痛い筈ねえだろ。あんだけ緩めてやったんだから」
ズブリ、と小田島が入ってくる瞬間は、確かに痛かった。けれど、それはそのうち、自分では到底納得出来ない熱さに摩り替わってくる。今日は、その瞬間が早かった。熱さと、そして、快感。
「ん。んんっ」
背中とタイルの間で擦れる手首の方がよほど痛かった。この痛みがあって、連橋は良かったと思った。でないと、体が感じるのは、小田島がペニスを突き入れてくる時に感じる快感だけになってしまう。
『感じちまう。いやだ。いやだ。いやだ』
ズンッ、と小田島はペニスを連橋の中にズッポリと押し込んだ。
「く。ん、あ」
ヒュッと連橋の喉が鳴った。
「ああ。やっぱり。やっぱり、おまえが一番だ。女の緩々マンコより、おまえのがきつくて、熱くて一番気持ちイイ」
うっとりと小田島は、快感に掠れた声で、連橋の耳元に囁いた。
「ど変態め・・・」
連橋の声も掠れていた。小田島が連橋の脚を更に持ち上げた。連橋の膝がタイルに押し付けられた。限界の開脚に、連橋の羞恥はピークに達した。憎む男に、ここまで全てを曝け出して犯されるなんて・・・。
「くっ。ちきしょう」
連橋は、小田島を尻の中に咥えこんだまま、とうとう一度もペニスに触れられることなく、射精した。
「うっ」
連橋の脚を肩に担ぎ上げていた小田島の肩がヒクッと揺れた。
「こっちもちきしょうだ。締め付け過ぎ・・・」
「んんん」
射精の快感に、連橋は喘いだ。喘ぎながら、涙が零れた。もう悔しすぎて、泣くしか出来ない。
ポロポロと泣く連橋を見て、小田島の理性の糸がぶっつり切れた。
「泣けよ。もっと泣け!」
小田島は、腰を前後に激しく動かして、連橋を攻めた。
「あ、あ、あ」
そこから生まれる、狂いそうになる熱い快感に、連橋は憚らることなく声をあげた。堪えても、堪えても、もうだめなのだ。
「ヤダ。ああ」
前後に左右に、中を突きまくられて、連橋は苦しくて首を振った。かつてない程、小田島の動きは激しかった。その度に、連橋の襞は、忠実に小田島のペニスをきゅうきゅうと締め付けた。
「うっ」
小田島の、精液が連橋の中に勢いよく注ぎこまれた時。連橋は、体の中で小さな爆発を起こした。今まで感じたこともない目も眩むような気持ちのイイ感覚だった。
「ああああっ」
男とのセックスで、本気でイッた。気を失う寸前に、連橋は、自分の体が堕落しきったことを知った。

気を失っても、なにも変わることはない。少しの時間稼ぎが出来ただけだ。目覚めて、連橋は知る。
何時の間にかベッドに運ばれていた連橋は、濡れたジャンパーも、Tシャツも剥ぎ取られていて、全裸だった。手錠は外されていなかった。手首からは、出血していた。すぐ横にはやはり、全裸の小田島がいて、目が合うと、小田島は再び挑んできた。獣かよ・・・と連橋は一言小田島に浴びせた。だが、小田島はそれには答えずに、黙々と連橋の濡れた穴を突いている。
「ん。んんっ。あ・・・」
今度は背後位で貫かれた。先ほどの余韻が残っているので、貫かれる部分は、じゅくじゅくと淫らな音を立てた。挿れられて擦られると、また連橋のペニスも勃起した。小田島のこと言えない。俺も・・・。俺もコイツと同じだ。尽きることのないかのような自分の性欲に、連橋は狼狽した。俺もコイツと同じ。抱かれて、獣になっちまうんだ・・・。溢れる涙は、小田島を刺激するだけとわかっていても、連橋には押さえることが出来なかった。

流。流。俺は変わっていく。こんな俺でも、おまえはまだ友達でいてくれるか?俺は淫乱だ。男に抱かれて感じちまう淫乱で変態だ。こんな俺でも。おまえはまだ傍にいてくれるのか・・・?

「!」
一際深く抉られて、連橋は悲鳴を上げた。
「あ、あ、あああっ」
体の中がブルブルと震えて、小田島をきつく締め上げていくのがわかる。
「イイぜ。ホントにおまえはサイコーだ・・・。これからが楽しみだぜ、連橋」
背中に乗り上げ、小田島は荒い息の中で、言った。

ベッドルームの窓からは、何時の間にか光が差し込んできていた。朝が来ている。体の奥に吐き出される、小田島の精液をドクドクと感じながら、連橋は窓をぼんやりと見つめた。
あと何回。コイツの精液を注ぎ込まれれば、俺の悪夢は終わるのか・・・。
終わりなど、来ないような気がして、連橋は目を伏せた。連動して、涙が頬を伝った。

BACK      TOP        NEXT

連橋の悪夢はまだまだ続く!