連橋(レンバシ)・・・区立第3中学校の3年生

流(ナガレ)・・・区立第3中学校の3年生

小田島義政(オダジマヨシマサ)・・・区立第1中学校の3年生

城田(シロタ)・・・区立第1中学校の3年生


------------2話--------------
昨夜の3中の勝利は、すぐに近隣に響き渡った。どんな理由にせよ、小田島が、地面に屈したことは事実だったのだから。その事実と引き換えに、この地区には、3中の山野が君臨することとなった。だが、これからも小さな戦争は、決してなくなることはない。トップに立ってそれで終わりではないのだ。

昨夜の功労者・連橋は、次の日学校に行かなかった。顔がボコボコだったこともあるが、煩わしい騒ぎに巻きこまれるのは、真っ平だったからだ。連橋は、アパートのすぐ近くにある土手にゴロリと横になり、空を眺めていた。今日もいい天気だった。連橋は、空を眺めるのが好きだった。それが、真昼の空でも真夜中の空でも。

小さな鳥が、チチチと鳴いては空を渡って行く。
「連ちゃん」
声がして、土手の緑を掻き分けて走ってくる足音がした。
「流くんが来たよ」
連橋のアパートの隣室に住む、2つ年上の高校生、亜沙子の声だ。
「サンキュ、亜沙ちゃん」
流は、僅かに頬を紅潮させて礼を言う。
「いいよ、別に。案内するぐらい。近くだもん。ねえ、流くんからも言ってやってよ。連ちゃんに。前歯治せって。せっかく綺麗な顔が、勿体無いじゃん」
クスクスと笑って、亜沙子が土手を駆け登って行く。
流は、ヒョイッと連橋を覗きこむ。
「口開いてみ」
「・・・」
連橋は、パカッと口を開けた。
「ぷっ」
流は笑い出した。
「んまに、マヌケヅラ」
「っせえよ。てめえだって、すげえじゃん」
「俺のは痣だけだ。おまえほどマヌケじゃねえよ」
流は、連橋の横に腰掛けた。
「おまえ。本当に歯医者行け。亜沙ちゃんに逃げられるゾ」
「歯が抜けたぐれーで、逃げる女ならば、いらねえよ」
「強がりいいやがって。・・・あんな美少女、滅多にいねえっての。贅沢者」
「欲しけりゃ、俺から奪ってけ。奪れればの話だけどな」
「やなヤツ」
流は肩を竦めた。
「山野からの伝言。ありがとな。今後ともよろしくってサ」
「今後なんてあるかよ」
連橋の即座の言葉に、流は目を見開いた。
「山野たぁ、1中勝負までって決めてあったんだよ。今更なにぬかしてやがんだ、あのボケ」
「・・・そーゆー約束だったんか。なるほどな。今のは俺の作りだ。山野からは、単なるありがとうの礼1つさ。ヤツはおまえに未練がねえんだな」
「それでいいんだ」
そう言って、連橋は目を閉じた。
「だが。俺は違うぜ、連。今まで、おまえとは何度も一緒にやったが、昨日ほど、ゾクゾクしたことはなかったぜ。俺は山野とは違う。単体でおまえに未練がある。なあ、聞かせろよ。俺に。おまえが1中にこだわる訳。小田島にこだわる訳を。おまえ、諦めていないだろ。小田島のことを」
「よせって」
「なんでだよ」
「なんでもだ」
「俺に話せよ。俺は聞きたい」
「なに我侭こいてる」
「連ッ」
流は、グイッと連橋の上に覆い被さった。
「やめろ。気持ち悪い」
「やだね」
そう言って流は、ますます連橋に顔を近づけた。連橋は、フイッと視線をずらす。
「昨日あそこまで、到達出来たのは半分ぐれえは俺の助力があったからだ、と俺は思ってる。おまえはどう思う?一人であそこまで行けたか?」
「足手まといになるヤツならば、加勢なんざ頼まねえ」
「わかってるならば、教えろよ」
すると、連橋はカッと目を見開いた。流の学ランの襟元を引っ張りあげ、グイッと右足を持ち上げると、その足を流の腹に押し当て、そのまま勢いよく蹴り上げた。
「どわっ」
流は悲鳴をあげて、そのまま体を宙に浮かせ、クルリと、寝転がった連橋の頭の上に飛ばされた。
連橋は、笑いながら起きあがった。流は、バフッと背の高い草の中に倒れこみながらも、ムクリと起きあがった。流の黒髪には、葉っぱがあちこちについていた。
「言いたくねえよ」
「聞きたいって言ってンだろ」
「くだらねえ理由さ」
「くだらない・・・!?」
胡座をかいて、連橋は身を乗り出し、流の黒髪についた葉っぱを摘む。
「聞きてえなら、耳貸しな」
「あとで返せよ」
「くだんねー」
2人は顔を見合わせ、ニヤッと笑う。流は、連橋の側に行き、その口元に耳を寄せた。
「あのな」
連橋は、流の耳元に囁いた。
「ああ」
笑うのを止めて、流は顔を引き締めた。流のその顔を見つめながら、連橋はカプッと流の耳朶を噛んだ。
「!!」
「バーカ。マジになって話す内容なんかじゃねえよ。ただ気に入らねえからだよ」
「おっ、おまえなッッ」
流は、咄嗟のことに、顔を赤くした。
「気持ちワリー。おまえ、顔真っ赤だぜ。なんだよ。よせよ。その気になっちまうんだろ」
連橋がニッと笑う。
「人が真剣だっつーに、てめえはっ」
ボカッと、流は連橋の頭を殴った。
「マジに話すような内容じゃねえって言ったろ」
「てめえ、ニヤニヤすんなっつーの。歯っかけの顔で笑われると無気味なんだよ」
動揺を隠すために、流はそんなことを思わず言っていた。
「悪かったな」
ムッとしたような顔になり、連橋は再び草の中に寝転がった。
「言いたくねえならば、聞かねえことにするよ。どうせ、おまえとつるんでいればそのうち知れるさ」
「なんだかんだ言って、おまえ亜沙子狙いだな」
「ああ。狙ってるさ。亜沙ちゃんは可愛いしな。おまえにゃ勿体ねえよ」
言いながら、流は連橋を再び覗きこんだ。連橋は空を見上げながら笑っていた。
流は、一緒になって、空を見上げた。
「空になにがある?」
流はボソリと言った。
「楽しいか?おまえはいつも空を眺めている」
「空は空だ。別になんもねえよ。とりとめのねえこと考えてる。今晩、どんな体位で亜沙子とヤろうか?とか。夕飯はなんだろうとか。まとまんねえな」
「変なヤツ」
流は肩を竦めた。
「お互い様だ」
沈黙が流れていく。連橋は目を閉じて、眠ってしまったようだ。流は、やがて、亜沙子が「夕飯よー」と連橋を呼びにくるまで、無言で連橋の隣に座っていた。


「義政。いつまでシケた面してやがる。それに、いい加減学校出ねえと、留年るぞ」
自室に篭ったまま、ベッドの上で天井ばかり見ている小田島に、城田は声をかけた。
「うるせえ。黙って、そこ置いてけ」
城田は手にトレイを持っていた。小田島の分の食事である。あの日以来、小田島はキッチンで食事をするのを嫌がっていた。だから、城田がわざわざ部屋に運んでやるのである。
「兄貴は?」
「だから、最近帰ってきてねえっつってんだろ。だいたい、あの人は、ガキの喧嘩にゃ興味なんかねえから、大丈夫だよ」
城田はベッドサイドのテーブルにトレイを置いた。
「俺の気持ち、おまえになんかわかるかっ」
バンッ、と小田島は、トレイを手で薙ぎ払う。ガシャンッと派手な音がして、高価な皿が粉々に砕けた。城田は、小さく溜め息をついた。
「ちくしょう。連橋のヤロウ!今思い出しても腸煮えくり返るぜ」
「だったら、思い出すなよ」
「うるせえ、うるせえっ。てめえも出てけっ。むかつくツラ、俺の前に晒すンじゃねえよ」
「後片付けが」
「あとで誰かにやらせるっ!出てけ」
「了解」
僅かな破片を拾いあげては、城田は仕方なく小田島の部屋を出た。部屋を出た途端に、大堀恒彦に出くわす。
「恒彦さん」
「おまえのご主人サマは、大荒れか。大変だな、城田。それよか聞いたぜ。おとといの派手な乱闘。まあ、また見事に綺麗に負けたって」
遠慮のないデカイ声で、大堀は言った。どうやら、部屋の中にいる小田島に聞こえるように、わざとのようだった。
「それマズイって」
城田は、慌てて小田島の部屋を振り返った。
「うるせー!デカい声でむかつくこと言うんじゃねえッ。首の骨へしおるぞ、大堀ッ」
案の定、ガシャーンッと、小田島の部屋の中で、また騒々しい音がした。どうやら、更に破損物を増やしたようだ。小田島家のお手伝いさんは重労働である。
「あっち行って話そうぜ」
大堀は、城田の背を押した。パンッと足で襖を蹴っ飛ばし、大堀は縁側に腰かけた。目の前には、手入れされた見事な日本庭園が広がっていた。城田もその隣に座る。
「実はな。兄貴殿はご立腹だ。まあ、なんにせよ、常に1番であれ、という主義の方だろう。弟の敗退に、楽しい顔をしてる筈もねえよな」
言いながら、大堀は煙草に火を点けた。
「おまえがついていながら、どうして敗けさせた?」
サングラスの奥の大堀の瞳が物騒に光る。
「アイツの負けは、兄貴の負け。そして、おまえの負けは、俺の負け。おまえを教育した俺が悪いって、結局は全部俺のせいだ。これってどうよ」
「すみません・・・」
城田は頭を下げた。大堀は、名実と共に小田島家のトップに君臨する、小田島信彦に仕える身だった。その気苦労といえば、計り知れないであろうに、たかがガキの喧嘩1つにまで、尻拭いを要求されるのだ。それを考えれば、謝って済むことではない気もするが、とりあえず城田は謝る。大堀が本気で怒ってないことぐらいは、長いつきあいでわかる。幼い頃に、母ともども小田島家に拾われ、今日までこの家で育った城田には・・・。
「おまえの役目は、義政を守ることだ。アイツが望むことは全て叶えてやれって言った筈だぜ。出来ねえならば、とっとと言いな。おまえの代わりぐれえいっぱいいるんだからよ」
大堀は、バッと、城田の顔に煙草の煙を吹きかけた。
「あんまり俺を失望させんなよ。手塩にかけて育ててやったんだからよ」
「・・・すみません」
城田に弁解は許されない。ただ、ひたすら謝るしかない。
「わかりゃいいさ。ところで、緑川ン家の坊やが、喚いていたぜ。金髪の坊やのことをな」
「・・・!」
城田は、思わず大堀を見上げた。
「連橋。中々、すごいヤツだそうじゃねえか」
「・・・そうですね。命知らずだとは思います」
抑揚のない声で城田は答えた。城田の脳裏には、あの日の連橋の姿が、ゆっくりと過った。
「おまえに言われるたァ、相当だろよ。そのボーヤ」
フフフッと大堀は楽しそうに笑った。その笑い声に、城田はハッとした。
「とりあえずは誉めておいてやろう。義政の腹に穴開けることを防げたことはな」
ニヤッと大堀は笑うと、城田の頭に手を置いた。
「じゃあな。せいぜいご主人様のご機嫌を損ねねえようにしっかり励めよ」
「はい」
大堀は、火のついたままの煙草をポイッと庭に投げては、さっさと廊下を歩いていった。城田は、薄い煙を吐いている煙草を、足を伸ばして踏み付けた。足の裏が焦げる感覚に、ピクッと体が竦んだが、じっと堪えてやり過ごす。そして、吸殻をつまみあげた。それを手にし、城田は廊下を振り返った。大堀は既に姿を消していた。チッと小さく舌打ちして、城田は縁側から腰を上げた。


「おまえって、スマートじゃねえよな」
小田島は、呆れたように言った。
「これっきゃ気分転換思いつかなかったんだよ」
城田は、引きこもっていた小田島を、近所の神社の祭りに誘った。祭りは想像以上の人出だった。
「ガキじゃあるめえし。風船やワタアメで俺が喜ぶと思ったのかよ」
「うるせえな。いちいちいいだろ。女相手じゃねえんだから、気を使わなかったんだよ。夜だし、皆祭り気分で、おまえのことなんざ気にしてるヤツはいねえよ。とにかくおまえを部屋から連れ出したかったんだ。いいじゃねえか」
「仕方なく来てやったんだ。おまえ、どうせ大堀に嫌味言われたンだろ。あのクソヤローは、なにかっちゅーと、俺じゃなくっておまえに文句垂れる」
「当たり前だろ。俺と大堀さんは、おまえに指図出来る立場じゃねえんだから」
「アイツは兄貴の犬だ。兄貴にだけ尻尾振ってりゃいいんだよ」
ケッと言っては、小田島はグルリと辺りを見回す。
「どっかにいい女いねえかな」
小田島の言葉に、城田はうなづいた。
「どうかな。ガキばっかだぜ」
そんな言葉を返しながら、真冬にやる祭りっていうのも悪くはねえな・・・と城田は思った。夏独特のどこか高揚した気分はないが、あちこちの屋台から立ち昇ってくる湯気が暖かそうだ。お好み焼き。たこ焼き。ラーメン。訪れる人々も、勿論浴衣姿ではなく、モコモコした厚着だったが、寄り添いあって露店をひやかしていく。城田の目には、一組の家族が映った。小さい子の手をひいて、父と母が歩いていく。人ごみの中をはしゃぐ子供をたしなめながら、夫婦寄り沿って歩いていく。どうってことのない光景だった。平凡な家族だ。だが・・・。自分と義政の幼い頃の思い出に、あのような光景は間違いなくなかった。そんなことを思いながら、城田は歩いていた。
「あ、ごめんね」
ドンッとひしめく人ごみの中で、城田に女がぶつかった。女はすぐに謝った。
「あ、わりぃ」
城田も思わず謝った。そして、何気なく女を見た。長い髪の、ザックリとしたセーターを着てパーカーを羽織っているジーンズ姿の女。どこといって変わった服装ではない。だが、思わず目を奪われるような華やかな顔をした女だった。地味な服装と対照的に派手な顔。
「・・・」
チラリと隣の小田島を見ると、やはり目が、女の後姿を追いかけていた。
「いい女、発見って顔してるぜ」
からかうように城田は言った。
「年上だろうな。いい女だぜ」
「ああ。綺麗だった」
「追いかけてみようぜ」
「ヤメロ。どうせあんな女、彼氏持ちだ」
「こんなシケた祭りで、他になに楽しむって言うんだよ。行くぜ」
「おい・・・」
とは言うものの、止めても無駄だと思い、城田は仕方なく小田島の後を追いかけた。人ごみを掻き分け、なんとか、女の後を追う。女は、自分が追いかけられていることなど知らないように、ヒョイヒョイと歩いていく。小走りって感じだった。そして、女は人ごみをぬけると、手を挙げた。露店が並ぶ参道から僅かに離れるだけで、だいぶ人が減る。歴史ある大木が並ぶ脇道に向かって、女は走っていく。町内会やらの提灯の灯りでほのかに明るいそこに、待ち人がいるようだった。
「待ち人が見つかったようだぜ。全力疾走してる」
「男か?」
平均よりずば抜けて背の高い城田には、女の行く先が小田島より先に見える。
「ああ。男・・・」
そして。女が到達した待ち人に目をやり、城田はさすがに驚いた。
そこに立っていたのは、連橋だったからだ。見間違いようのない姿だった。つい先日、やりあった相手だし、やはり金髪は目立つのだった。
「義政」
城田は小田島の腕を、思わず引っ張った。
「なんだよ」
「もう行こうぜ。男がいる女なんて、追いかけたって面白くもねえだろ」
「やだね。どんな男かツラ拝んでやる」
なにをムキになっているのか・・・と、城田は思う。小田島は、女は好きだが、特定の女を作らない。女を作って落ち着いてくれれば・・・と思うこともしばしばあったが、よりによって連橋の女に興味をもたれては、厄介だぜ・・・と城田は心の中で舌打ちする。だが小田島は、城田の腕を振り払っては、とっとと参道を抜けた。
「・・・」
城田は、掌で左目を覆っては、溜め息をついた。さすがに、小田島も女の相手に気づいたようである。小田島は、ジロリと城田を見上げては睨みあげた。
「なんでアイツがいるんだ」
「そういえば、ここ、3中地区のやつらが来れねえ距離じゃなかった」
俺の選択ミスだった・・と、城田はぼやいた。
城田と小田島が立っている場所は、連橋達が立つ場所から、あまり距離を隔てていなかった。だが、2人の世界に突入している恋人同士にはよくあることで、無遠慮な視線に気づくことはなく、連橋は例の女となにか喋っていた。女は楽しそうだ。そして、手に持っていたタコヤキを、連橋に差し出す。楽しげな女と裏腹に、連橋は無表情だったけれども、楊枝を手にしては、ぱくりと一口食べた。すると、あっという間に連橋は、全部平らげてしまった。『容赦ねえヤツ』と城田は思った。お約束通り、女は怒り出したようだった。ボカボカと連橋を殴っている。

その時だった。
女の拳から、顔を庇いながら、連橋が、ふっと笑った。
城田は目を見開いた。距離を隔ててないから、連橋の顔はよく見えた。
楽しそうに、楽しそうに、心から楽しそうに、連橋は笑っていた。

城田はチラリと小田島を見た。小田島は、くいいるようにその光景を見ていた。

そして、連橋は笑いながら、女の肩に手を回すと、そのまま女にキスをした。人目はあるが、そんなこと気にしていないかのように、まるで自然に女にキスをした。

デバガメというには、あまりに堂々と見ていた二人だったが、さすがに城田はなんだかこっぱずかしくなった。
「義政。行こうぜ」
しかし、小田島の横顔は強張っていた。
「!?」
城田は、嫌な予感に襲われた。小田島が次に言う言葉がわかる気がした。さすがに、「冗談じゃねえよ!」と言い返したい気分だった。小田島は、顔の強張りをじょじょに解いていき、そして、いつもの凶悪な笑みを浮かべて城田を振り返った。大抵は、ろくでもないことを思いついた時に見せる顔だ。
「城田」
「やだね。趣味じゃねえよ」
「まだ、なんも言ってねえぜ」
「言いたいことはわかる」
「所詮同じ穴の狢ってことだな、俺達」
「・・・いいかげんにしろ、義政」
「うるせえ。俺はな。連橋のクソにゃ、煮え湯飲まされてンだよ。アイツが汚ねえ手使って、俺を地べたに這わせたんだ。同じことしてなにが悪いってンだ」
「・・・」
城田は、思わず小田島から目を反らした。
「あの女、犯せ。その隙に、俺は連橋を殺る」
言うと思ったぜ・・・。城田は前髪を掻きあげて、ジッと小田島を見た。小田島は、城田を睨んでいる。やがて、城田はうなづいた。
「わかった」
逆らえる筈はない。
父親に捨てられたあの日から、俺と母は小田島の家に飼われた。
逆らえる筈はない。それが例え、どんなに虫唾が走るような、命令であっても・・・。
城田は、なにかを諦め・そしてふっきり、金色の髪をした男の方へと、ゆっくり足を踏み出した。

続く。

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