連橋(レンバシ)・・・某都立高校1年
流充(ナガレミツル)・・・・・同上
小田島義政(オダジマヨシマサ)・・・暁学園高校1年
城田優(シロタユウ)・・・・・同上
緑川歩(ミドリカワアユミ)・・・同上
*****************14話**************
3号埠頭。B倉庫。立ち並ぶ巨大な倉庫。それがどこにあるのか・・・!
時間を短縮する為にも、素早くつきとめなきゃならねえ・・・と連橋は思ったがそれは余計な不安だった。
あちこちに車が停まっている場所がそれだ。派手好きな小田島は、いつも取巻きを連れて大行進だ。数でしか勝てねえ・・・。いや、数いても、小田島の手駒にはろくなヤツがいねえから意味がないぜと連橋は、倉庫の影に隠れながら密かに笑った。ただ、一人。あいつを除いてな。連橋は自分の右腕を擦った。もう傷はとっくに癒えた。右腕は正常に動く。体のどこも支障はない。アイツだけは油断ならねえ。そう思って連橋は、唇を噛んだ。どう動けばいいのか。考えている時間すら惜しいが、それでもいつものように、なにも考えずに飛び込んで行く気にはなれなかった。単なる殴り合いならば、それでいい。だが、また・・・。また小田島に犯られたら・・・。そう思うと、ピクッと体が反応する。連橋は、自分のその体を嫌悪した。なにも怖いモンなんて今までなかったのに・・・。
「誰だっ」
不意に背後からの男の声を聞いて、連橋はギクッと振り返った。
「てめえ、まさか、連」
男が最後まで言い終わらないうちに、連橋は男の持っていた木刀を奪っては、肘鉄で男のみぞおちを打ちつけた。男は、ギャッとうめいてアスファルトに転がった。ここらを巡回している小田島の手下に違いない。こんなやつらは、あちこちにいるに違いなかった。だとしたら・・・。コソコソ動いても、派手に動いても同じだ。連橋は木刀をギュッと力を込めて握ると、倉庫の影から飛び出した。車のライトが、B倉庫の入口を照らし出していた。
「連橋だっ」
「おい、来たぜ」
あちこちにざわめきが広がった。一瞬にして、ザアッと倉庫の入口に群がっていた男どもが、身を退いた。そのせいでまるで花道のように、連橋の前に、ポッカリと倉庫への道が現れた。行く手を邪魔するものは誰もいない。連橋は走った。すると、男達はハッとしたように、慌てて連橋の前に立ちはだかる。
「倒せっ」
「縛って、小田島さんの元へ連れていくんだっ」
「ぶちのめせっ」
小田島の舎弟達は口々に言っては、連橋目掛けて襲いかかってきた。連橋は、木刀を構えると、次々に行く手を阻むやつらを木刀で薙ぎ払った。鈍い音がして、悲鳴。倒れる男達に目もくれずに、連橋は木刀を振り上げては、倉庫までの道を駆けぬけた。小田島との勝負の夜。同じように、小田島目掛けて、敵陣を走った。襲いかかってくる雑魚どもを適当にあしらい、でもその数には閉口しつつ時間を取られて。だが。側には流がいた。打ち逃した相手を、流が背後で片付けた。振り返る必要が、俺にはなかった。そうだ。あの時には、流がいた。俺には、流が必要だ。走っていくために。走り抜けるために。俺には、アイツが絶対に必要なんだ。怖気づいている場合じゃねえっ!連橋は、倉庫の前に立ちはだかる最後の男の腹をバキッ、と木刀で殴りつけた。ゆっくりと、男が連橋の目の前から崩れ落ちていく。そして。連橋のすぐ前には、倉庫のドアがあった。
この扉の向こうに流がいる。流を助けねばならない!連橋は、重い倉庫の扉に手をかけ、ギギギッと軋むドアを開けた。
同じ頃。倉庫の外で起こった騒ぎに、緑川と小田島は気づいていた。
「お姫サマの到着らしい」
緑川が言うと、小田島はニヤリと笑った。ここ最近見ることはなかった、嬉しそうな楽しそうな、小田島の笑みに、緑川は肩を竦めた。
「念の為に聞いておくとさ。小田島、おまえ連橋に惚れてるのか」
「バカ言うんじゃねえよ。俺はな。歯向かってくるアイツを犯すのが好きなだけだ。殺意全開にして俺のことを睨むくせにさ。最後には、泣くんだぜ。俺の腕の中でさ。その瞬間がたまらなく楽しいんだ。ゾクゾクするぜ」
「・・・救われねえ性格だな」
緑川は、コンッと爪先で、両手両足を縛られて転がっている流の体を突ついた。流はのろのろと目を開けた。痛みのせいで、流は時々意識を飛ばしているようだった。
「そろそろ来るぜ。感動の再会をするんだな」
と、緑川が言った瞬間に、倉庫のドアが完全に開いた。
「流っ!」
連橋の声が、倉庫中に響いた。そして、即座に、アスファルトに転がった流を見つけて、連橋は目を剥いた。血だらけで、縛られて転がされいる流の姿が連橋の目に焼きついた。
「流・・・」
「連っ」
その声を聞いて、流は再び目を閉じた。体が・・・動かねえんだよ、連。ごめんな・・・。
緑川は目を見開いていた。倉庫が開いた瞬間、金色の猫が飛び込んできたのだ、と思った。連橋のその姿を瞳の端に捕らえたと思ったと同時に、連橋が握っていた木刀が、緑川の腹を打っていた。打ちながら、抜けていく。剣道で言えば、抜き胴だ。緑川は、腹を押さえて、その場に膝をついた。そのまま連橋は、緑川の腹を抜いていった木刀で、隣にいた小田島に襲いかかっていた。誰もが、一瞬のうちに起こったことに、対応出来なかった。
「うわあああっ」
小田島の悲鳴があがった。緑川は、カッと振り返った。念の為にと、城田に持たされた木刀だったが、すぐに出番が来た。さすがに連橋とは何度もやりあっているだけの城田だった。連橋を把握しているらしい。緑川は、腹を打たれた痛みを堪えて、連橋を追った。小田島は、既に額から血を流していた。
「ちっ」
緑川は、連橋に打ちかかった。連橋はすぐに、標的を小田島から緑川に変えて、打ちあってきた。木刀がぶつかりあう音が腹に響いて、緑川はこめかみに冷たい汗が浮かんだ。コイツが戦う場面は、あの夜に間近で見ていた。見ていたが、所詮他人事だった。あの時、連橋と対峙していたのは、城田だった。城田だから、負ける訳がねえと思っていた。だから、なにも考えずにただ、見ていた。だが・・・。
すぐ目の前に連橋の顔がある。連橋は、緑川を見て、ニヤリと笑った。その笑みに、緑川は引き攣った。コイツは・・・。コイツの顔は、城田と二重る。俺の手におえる相手じゃねえっ!ゾオッと冷たい風が、緑川の背に走った。城田と同じ人種だ。こいつと城田は、なんて似てやがるんだ・・・!緑川はそう思いながら、連橋の重い木刀をなんとか受け流していた。攻撃出来、ねえっ!思った瞬間に、バチンッと音がして、連橋の木刀が、緑川の額に振り下ろされた。
「・・・」
緑川の額も割れた。切れて、ボタボタと血が流れた。呆然として、緑川は自分で流した血が落ちた足元を見ていた。連橋の攻撃を、もう避けるつもりもなかった。観念して目を閉じた。だが、連橋からの攻撃はなかった。少し前、小田島の悲鳴を聞きつけて、倉庫の外にいた舎弟達が何人か乱入してきていた。だが、緑川と連橋の木刀の応酬に手出しが出来ずにただ、その時間が過ぎるのを待っていた彼等は、緑川の額を割った瞬間に、連橋の木刀がスイッと退いたのを見計らって、その体を羽交い締めにして押さえ込んだのだった。
羽交い締めにされて、息を荒げながら、それでも連橋は緑川を見ては、笑っていた。楽しそうな笑いだった。
「ざまあみろ」
一言そう言った。
連橋は、男達に体をアスファルトに押しつけられた。舎弟から差し出されたタオルで、額を拭いながら、小田島は叫んだ。
「すっ裸に剥けっ!」
命令通りに、男達は、アスファルトに押しつけられた連橋の体から学ランを剥ぎ取っていく。小田島は、自分の使ったタオルの、汚れていない方を緑川に向かって差し出した。緑川は、それを受け取り、血を拭った。
「てめえら。止めろッ・・・。連に手を出すな。・・・やるならば、俺をやれよっ!連には手を出すなっ。手を出す、な、やめろぉぉっ」
流の声が倉庫に響いた。絶叫だった。
「吠えてやがれ、負け犬」
小田島は、叫ぶ流の側にいき、ガツンッと思いっきりその体を蹴り上げてはこちらに戻ってきた。
「ざまあみろっ」
連橋は、裸に剥かれながらも、そう言って小田島と緑川を見ては、笑っていた。
「小田島・・・。連橋、俺にもヤらせろ」
緑川は、目を細めて、呟いた。
連橋の体には、数人の男がくっついていた。まるで、蟻が甘いお菓子に群がるようだった。剥き出しになったペニスに手をひっかけ扱くヤツ、勃ちあがった乳首を噛んでいるヤツ。尻の穴に指を突っ込んでいるヤツ。エロビデオでありがちな場面だが、現実でこうして見ると、やはりあまり美しい光景ではなかった。
「ん、あっあっ」
さっきまで喘ぎを必死に堪えていた連橋だったが、時間が経つにつれ、興奮してきた男達の手が自分の体を這う指が容赦なくなってきたのを感じたのか、声を漏らし出した。小田島に命令されて、最初は仕方なくヤッていたような舎弟達だったが、段々と真剣な顔つきになっていった。誰もが息を荒くして、連橋の体中を指で弄り、舐め回していた。
「ふふっ」
小田島は、そんな光景をすぐ側に立って見下ろしていたが、ヒョイッと、連橋の大きく開かされた脚の間に座りこみ、連橋の一番奥の小さな窄まりに指を差し込んだ。既に、自分のペニスから溢れ出た連橋の先走りの液が股を伝い、尻まで落ちてきていた。窄まりは、濡れていた。濡れて、赤く光っている。小田島の指がソコに入ると、連橋は、必死に腰を退いた。だが、小田島は連橋の足首を掴んで、それを許さない。深々と指を突き入れては、襞をグチュグチュと弄り回していた。
「ふっ。ん、んぅ」
連橋がうめいた。そのせいで、連橋に触れていた舎弟達が余計に煽られたようで、連橋の乳首に吸い付いてきた。右の乳首は舐められ、左の乳首は別の男に噛まれた。
「ううっ」
両手をアスファルトに押さえ込まれている連橋は、男達の手を振り払うことが出来ずに、乳首に走るおぞましい感触に堪えなければならなかった。
「1回イカせちまうか。これ、使ってみたかったんだよな、俺」
そう言って小田島は、さっき舎弟に持ってこさせたバイブを手にした。どぎついピンク色をした極太バイブだった。緑川は、眉を顰めた。
「女じゃあるめえし。入るかよ、んなもん」
「試してみなきゃわかんねえじゃんか。連橋だって、この半年。誰ともヤッてなかったとは言えねえだろ。尻で咥える味覚えて、流とヤリまくっていたかもしんねえしな」
「・・・」
緑川は、タバコを咥えながら、小田島の手元を見ていた。グッと、連橋のアナルにバイブをあてがう。
「う、あっ」
連橋が悲鳴をあげた。幾らソコを舎弟達に指で散々開かされていたとはいえ、連橋の中は濡れない。切れちまうだろ・・・と、緑川は舌打ちした。
「どけっ」
緑川は、小田島を押しのけた。舎弟達に、顎で「退け」と合図する。彼等は、不満な顔をしては股間を押さえて立ちあがった。
「小田島。舐めるぐれえいいだろ」
「ああ」
緑川は、連橋のひくつくアナルに、舌を押し込んだ。
「うっ、ぐっ」
「・・・」
舌で、何度もソコを舐めた。指で入口を抉じ開けて、奥まで舌を伸ばす。
「あ、や、やめろっ」
連橋がうめいた。緑川は顔をあげた。連橋の顔を覗きこむ。連橋の顔は、苦しげだった。だが、その苦しい顔は、見ていて決して不快なものではない。まだ涙は浮かんでいないが、瞳が、興奮のせいか潤んでいた。緑川は喉を鳴らした。
『確かに、コイツのこの顔は、色っぽいぜ。おまえの言うとおりだ。城田』
自分の股間が騒ぐのを感じて、緑川は息をついた。再び、連橋の奥に舌を差し込み、ねっとりと舐め回す。ついでに、繁みを指でかきわけ、連橋のペニスも擦ってやる。すると、舌を差し込んでいる奥が、ざわざわと動いた。感じているらしい。
「なんだか、おまえらがつるんでヤッてると、レズ同士のセックス見てるみてえだな」
小田島が白けることを言ったので、緑川は顔をあげた。
「いいぜ。突っ込みな」
もう連橋のソコは、緑川の唾液を借りて、完全に蕩けていた。パクパクと開いて、穴を埋めるものを欲していた。
「よし」
小田島は、連橋のアナルを左右に引っ張ると、グッとバイブを挿入した。
「う、ああっ。っ、痛えっ。いてえっ。いたっ・・・。ああっ」
連橋が叫んだ。確かに痛いだろう・・・。緑川は唇を噛んだ。自分の身に起こったら・・・と想像するだけで尻の穴が縮こまる。あまりに痛いのか、連橋のペニスが萎えていった。
「痛いのか?でも、おまえのココは、ほら。飲み込んでいくぜ」
小田島はグイグイと連橋のアナルにバイブを押し込んでいった。ジュプジュプと濡れた音を立てながら、小田島の言うとおり連橋のアナルはバイブを飲み込んでいく。
「は、うっ。ううっ」
ズルリ、と小田島の手が、連橋のアナルに根元までバイブを突っ込んだ。
「あ、あ、あっ!」
連橋が腰を振った。逃げる為に、腰を動かしたのだろうが、それが妙に誘いこむような色っぽい腰の動きに感じて、緑川は自分の股間が完全に勃起したのを感じた。それは小田島も同じようだったらしく、堪え性のない小田島は、今根元まで埋めたはずのバイブをあっさり引き抜き、いつのまにか準備万端の自分のペニスを連橋のアナルに突っ込んでいった。メキメキと音がしそうな乱暴さだった。
「ひっ。くぅっ。あーっ!」
とうとう連橋の目から涙が零れた。
「見ろよ、流」
その声に、緑川はハッとした。
「ぶっ倒れてねえで、目を開けてみろよ。おまえのお姫サマが、にっくき敵に、穴責められて泣いているぜ」
何時の間にか、城田がすぐ側に立っていて、床に転がっていた筈の流を、引き摺ってきていた。流は顔を背けようとしたが、城田に顎を固定されてしまった。それでも抵抗して、目を閉じようとした流を、城田が殴った。
「逃げるなよ、流。これが現実だ。おまえの親友は、おまえの不甲斐なさのせいで、ああして泣いてるんだぜ。おまえのせいで。おまえのためにコイツはここに来たんじゃねえか。こうなることがわかっていてな!」
流は城田の言葉を耳にしながら、目の前で見せられた連橋と小田島のセックスに、目を見開いた。強姦行為の後の連橋はなんどか見ていたが、こうして目の前で見たのは初めてだった。男同士の行為を間近で見るのも初めてだというのに、それが親友である連橋なのだ。流は、目を反らそうとしたが、出来なかった。金縛りにあってしまったかのようだった。腰を揺らす小田島は、流を見ながら笑っていた。小田島の腰に合わせて、ぐったりとしている連橋の体も小刻みに揺れていた。連橋のペニスが、小田島の腹に擦られて勃起しながら、濡れて溢れていた。見せつけるかのように、小田島は連橋の体を抱き上げ、自分の膝に抱え上げると、流の目の前で連橋の両脚を開いて見せた。グチュリ、グチュリという音を響かせて、小田島は連橋の中を突いた。連橋のアナルが、根元まで小田島のペニスを飲み込んでは、ヒクヒクと蠢いているところまで流の瞳には映ってしまう。
「見るなよ、流っ。見ねえでくれ、よっ・・・!頼・・・むから、目を閉じてくれっ!」
連橋が叫んだ。自分の顔を隠してしまいたいのに、両手は小田島に握られていて、動かすことが出来なかった。
連橋のその声に、流は、ハッとした。流は弱々しく首を振った。
「約束・・・したじゃねえか、連。大丈夫だ・・・。大丈夫だから・・・」
「なにが大丈夫なんだ?強がり言ってんじゃねえぞ、流。てめえ、勃ってるじゃねえか。親友相手に、勃たせてんじゃねえよ・・・」
城田は流の股間を掴んでは、嘲笑った。流は、キッと、城田を振り返った。
「羨ましいか?城田。連はなあ。俺の為に・・・ここまで来たんだ。こうなることわかって・・・。ここまで、来て・・・くれたんだ。俺達はダチだ。てめえ、羨ましいんだろ、城田よおっ。おまえの場合は、ご主人サマだからな。ご主人サマは、おまえを決して助けない。自分を犠牲にしてまで、家来なんざ助けねえだろうからな。可哀相なヤツだ。だけど、ざまあみやがれ、だっ!」
ペッと、流は城田に血の唾を吐いた。城田は目を見開いていた。掴んでいた流の髪から、城田の指がゆっくりと離れた。そして、城田は立ちあがった。
「城田・・・」
緑川が城田を見上げた。城田は舌打ちすると立ちあがって、小田島達に背を向けて歩き出した。緑川は城田を追いかけた。
「なにボケたこと言ってやがる、流。てめえ、よく見ておけ。俺と連橋、ヤッてんだよ。ほら、見ろよ。よく見やがれっ」
笑いながら小田島は、連橋の太股に手をかけ、更に両脚を大きく開かせて、連橋の腰を揺すった。
「あっ。っあっ!」
連橋は目を閉じて、唇を噛んだ。もうなにも考えられなかった。頭が霞む。少し前まではこんなふうにはならなかった。挿入されても、とにかく体の奥が痛かった。痛いだけだった。なのに、今は。今は・・・。あの刺青の男に、指で穴を執拗に犯された時から、どこか違和感を感じてはいた。体が変化してる・・・。変化してきている。連橋はそう思いながら、必死で意識を飛ばさないように堪えた。意識を失ってしまったら、流の目の前で、自分がどうなってしまうか、わからないっ!
城田は倉庫を出て、舎弟達を押しのけ、車の影の誰もいない波うち際のアスファルトに胡座をかいて座った。
「ちょい、ヌくからこっち見るな」
「俺もだ」
緑川は、そう答えた。マヌケな感じだった。いや、間違いなくマヌケだ。二人は背を向けて、自分を慰めた。
「っ、ふうっ」
緑川が息を吐いた。城田は横顔で笑いながら、
「なあ。連橋の顔。いいだろ」
身を乗り出し、暗い海の中に手を突っ込んだ。ジャバッと、小さな波が城田の手を洗い流した。
「中々イイ感じにヤバいな」
緑川も城田を真似て手を流した。
「おまえが来てたの、気づかないぐらい興奮してたぜ」
「大堀さんの言うとおり、アレは結構ヤバイ生き物だな」
城田はポケットに突っ込んでおいたタバコを取り出して、口にくわえた。
「流となにがあった?流はなんであんなことをおまえに言ったんだ」
緑川は城田に聞いた。
「あんまり堂々と癇に障ること言いやがったから、ちょい仕掛けてみたんだが・・・。どうやら俺が負けちまったみてえだな。流には、喧嘩にゃ勝ったけど、俺が負けた」
ハハハ、と城田は力なく笑った。暗い海をジッと見つめながら。
「なんのことだ」
「負けた勝負なんざいちいち説明なんかしてやるか。みっともねえ」
苦笑しながら城田は、緑川の額に指を伸ばした。
「怪我させたな。大堀さんの雷覚悟だ」
「おまえ、来るのおせえよ」
緑川がぼやいた。
「見たくなかったからだ」
「なにが」
「連橋が犯されている場面をな」
そう言って、城田はタバコをアスファルトに擦りつけた。
「どうしてだよ」
「どうしてかな?わかんねえけどよ」
そして、城田はフッ・・・と海を見た。そして俯いた。
「でけえのが来る・・・」
城田はうつむきながら、呟いた。耳に手を当てていた。
「なんのことだ」
「なんかデケえのが来る・・・。聞こえねえか?緑川」
バッと、城田は立ちあがった。
「・・・!」
緑川は、埠頭の入口を振り返った。
「車。バイク。排気音。すげえ、大勢だ。一体なんだ?誰が来やがる」
城田は目を細めた。視力がいい城田は、埠頭に乗り込んできた車の、車体にデカデカと描かれた文字と絵を見ては思わず目を疑った。城田は弾かれたように踵を返して、倉庫に駆け戻った。訳がわからないが、緑川もその後を追って走った。
「義政。ゲームセットだ!連橋捨てろっ!ジレンのヤツらが来た。志摩だ。志摩怜治が来やがったっ」
城田の声に、小田島は、抱いていた連橋の体を突き放した。
「志摩が?なんで、志摩が・・・!?」
小田島は立ちあがった。
「ヤバイぜ、小田島。ジレンの志摩っつったら、3中出身だ。もしかして、連橋達を助けに来たのかもしれねえぜ」
緑川は、慌てて服を着ている小田島に向かって、叫んだ。
「そうだ。たぶん、そうだ。義政、早くしろっ」
城田はうなづき、小田島を急かした。
「なんで志摩が出てくるんだよ。あいつらと連橋達がつるんでいたなんて、俺は知らねえぜ」
「今ンなこと言ってる場合じゃねえよっ」
一気に倉庫の中が慌しくなった。
「逃げろ。とにかくさっさと逃げろ」
城田が、舎弟達に向かって怒鳴った。舎弟達は慌てて車にエンジンをかけて、逃げの体制に入る。
ジレンは、地元では有名な暴走族だ。かなりの数の人数を引き連れて、好き勝手に湾岸を流している。頭の志摩怜治は、喧嘩負け知らずの有名人で、高校3年生だった。学年が違うせいで、小田島達は直接志摩と揉めたことはなかったのだが、勿論仲良しである筈もない。接触することがあれば、乱闘は避けられないような仲だった。
「逃がさないぜ、小田島クン。俺の可愛い後輩達を、よくも苛めてくれたな」
倉庫を出たところで、小田島達はジレンの連中にグルリと囲まれていた。その中でも、一際背の高い黒い服を着た男が、よく響く声でそう言った。志摩怜治。小田島達より2歳年上のその男は、茶色の髪を風になびかせて、小田島と同じように舎弟達にズラリと囲まれては、木刀を担いで悠々と立っていた。口元にはうっすらと笑みを浮かべていた。
城田は、小田島を背に庇い、志摩怜治をジッと見つめていた。
15話に続く
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大林×連橋はまたにします。ごめちゃ〜い(汗)
ああ、連橋の喘ぎ声のレパートリーが尽きてきた。よよよ(泣)
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