連橋・・・某都立高校1年
流・・・・・同上
亜沙子・・・某都立高校3年
小田島義政(オダジマヨシマサ)・・・暁学園高校1年
城田優(シロタユウ)・・・・・同上
小田島信彦(オダジマノブヒコ)・・・義政の兄
大堀恒彦(オオホリツネヒコ)・・・信彦のボディガード
*****************11話**************
ベッドの上で雑誌を読んでいた城田は、電話の音にハッとした。手を伸ばして、受話器を取った。受話器の向こうで、誰かが叫んでいる。城田はバッと立ちあがった。
「性懲りもなく・・・。バカヤロウが」
まだ痛むあばらを押さえて、城田は部屋を飛び出した。
門を出ると、ちょうど向こうから走ってきた人影と出くわした。
人影は、城田を見ては、脚を止めた。が、すぐに足早にこちらに向かって来た。
「連をどこに隠した」
流だった。隣には亜沙子もいた。
「知らねえよ」
「知らない訳ないじゃないのっ。だったら、どうして連ちゃんが拉致されるのよ。小田島でしょう。あいつらは、明らかにチンピラだったわよ。あんたらのバックはヤクザでしょう。連ちゃんをどこへやったのよ」
亜沙子は、キッと城田を睨んだ。
「どうせ、ここに連れてきたんでしょ」
「落ち着け。ここには、絶対に連橋はいねえ。なにがあった」
城田は、亜沙子を見下ろして、冷静に言った。
「・・・私がちょっと目を離した隙に、駅前で連ちゃんはチンピラみたいな男達の車に乗せられていってしまったわ。あっという間の出来事で誰も気づかなかった。それに、あの時は連ちゃんもきっと放心状態だったわ」
「なんかあったのか?」
城田は聞いたが、亜沙子は黙った。
「んなことはどうでもいいんだよ!ここにいねえなら、連はどこにいるっ」
流が横から口を挟んだ。
「ちょっと待て。なあ、亜沙子ちゃんよ。そのチンピラみてえなやつらの特徴。なんか覚えてねえか?」
「ハッキリと覚えているわよ。一人、やたらと背のデカい男がいたわ。派手なシャツ着ていて、金髪じゃなかったけどそれに近いくらいの色素の薄い髪をした男。サングラスをかけていたわ。それになにより!あんたと、この前車に一緒に乗っていた男よ、アイツ」
城田は、目を見開いた。
「恒彦さんか。まずいな」
恒彦と連橋を繋ぐもの。それは、確かに義政以外は考えられない。亜沙子と流の推測はまったくもって正しい。なぜに、あの男が連橋に関わってきたのか。城田にはそれが疑問だった。
「それなら場所はわかった。わかったけど・・・。俺がおまえらをそこに連れて行く義理はねえと思うけどな」
その言葉を予測していたようで、流は、スッと懐からナイフを出した。
「冗談聞いてる暇ねえんだよ、城田」
キッと、流は城田を睨みつけた。城田は、流を見つめた。不思議な感覚だった。流と対峙しても、連橋と対峙するほどの緊張はない。だが。流は、どこか、自分を震撼させるものがある。この男と戦えば確実に勝てる。けれど・・・。何故だかわからない。どこから来る感情かわからないが、城田は流を怖い・・・と思った。こんなことは、連橋にすら抱かない。勝てる喧嘩を出来る自信があるのに、なぜ威嚇されてしまうのか。
「脅しじゃねえぜ、城田。はったりだと思ってるならば、後悔するぜ」
「連橋の為に人殺すのか?」
「殺人者の隣で平然ヅラしているおまえにゃ言われたくねえな」
「それは。くっ」
ドッ、と流は城田のあばら目掛けて、肘で突いた。
「てめえとおしゃべりしてる暇はねえっつってんだろ。知ってるならば、案内しやがれ。ぶっ殺すぞ、城田ァッ」
城田は、あばらを押さえてよろめいた。
「さすがに、あの連橋と一緒にいるだけのヤツだな。肝っ玉据わってやがる。ここが敵陣だってことを忘れていやがるような無謀さだぜ」
言って、城田は一息吐いた。
「今、車持ってくる。おまえは乗れ。だが、亜沙子ちゃん。アンタは置いてくぜ」
「なんでよっ」
「わかるだろ。小田島が、連橋をどうしたいか。それにな。今回は俺の師匠が現場に出てる。間違っても連橋はかなわねえよ。今頃は、あの時の続きで、めちゃくちゃに強姦されているだろうさ、あんたの彼氏。その現場、見たい?」
「冗談じゃないわっ!見たい筈ないでしょう。だけど。私は、おとなしく待っていることなんて出来ないわよ。行くわ」
城田の言葉に、顔色を変えた亜沙子だったが、言い返した。
「流。おまえ、止めろよ」
呆れたように城田は、流に言った。
「俺は止めねえよ。亜沙ちゃんの好きにすればいい」
流は、城田を睨みながら、言った。
「おまえら。連橋の気持ちにもなってやれよ・・・」
やれやれと肩を竦めながら、城田は門の中に車を呼びに行った。
「流くん・・・。どうしよう」
城田が門の中に消えてしまうと、城田の前での勢いを消して、亜沙子は流を見上げた。
「俺は・・・。連から目を反らさねえ。連と約束したんだ。例え、どんなことになっていても。俺は連から目を反らさずにいるよ。そして、必ず救い出してやるっ」
「うん」
亜沙子はうなづいた。流は、剥き出しのナイフをギュッと握りしめた。
しばらくして、流と亜沙子の前に黒塗りの車が止まった。城田が助手席に乗っていた。
「あばらさえ折れてなければ、おまえの脅しにゃのらなかったぜ、流」
後部座席に乗り込もうとしている流に向かって、背を向けたまま城田は言った。
「だとしても、俺はてめえを半殺しにしてでも、案内させたさ」
言いながら、流はドサッと後部座席に腰かけた。亜沙子も隣に座った。
「その前におまえが死んでるっつーの」
クククと城田は笑った。
「すみません。××の別荘に行ってください」
城田は笑いながら、運転手に告げた。運転手はうなづいた。車が発進する。
「はあ、はあっ・・・」
限界までに押し広げられては突っ込まれた秘穴が、ドクドク脈打って、そこからトロトロと小田島が放った精液がシーツに伝い落ちていく。
「濡れ濡れ。女みてえ」
嬉しそうに言って、小田島は連橋の秘穴を舌で突ついては、こじあける。そこから、自分の放った精液が零れ落ちるのを見ては満足気に笑って、指を突っ込んでは、掻き出す。
「ひっ。うっ。あ、あ」
その感覚に、連橋は背中を震わせた。
「はい。もう一回いってみよう。ちゃんと義政のを美味しく咥えられるようにな」
グッと、大堀が連橋の髪を掴んでは、自分のペニスにその顔を近づけさせた。
「飴玉舐めるようにな。それから、さっき教えた通りに舌使え」
嫌がる連橋の唇に、無理矢理咥えさせて、大堀は連橋の金色の髪を撫でた。
「よしよし。そうそう。ちゃんと含めよ」
「ぐっ、うっ」
口腔内で膨れあがる大堀のペニスに、連橋は眉を顰めた。だが、右腕を大堀に握られているので、従わない訳にはいかない。太いペニスを口に含んでは、言われた通りに舐めあげる。
「エロい顔しやがって。なあ、義政。コイツ、人形みてえに可愛い顔してんなァ。お姫様に咥えられたとたんに、とっととイかねえように、ちゃんとその穴で辛抱出来るように練習しとけ」
「っせえ。黙って、ちゃんと調教しやがれよ。コイツ、俺のを咥えた途端、食いちぎりそうだからな」
「コイツなら、やりかねねえな。この右腕さえイッちまってなければな」
大堀は、うなづいた。握っていた連橋の右腕に軽く力を込めた。ヒクッと連橋の喉が鳴った。いつまでも、連橋のアナルをねちっこく舐め回していた小田島だったが、連橋の内股が細かく痙攣しているのに気づいて、両脚の間から手を差しいれて、連橋のペニスをギュッと握った。
「!」
連橋は、ビクッと体を震わせた。
「また勃たせてやがるぜ、コイツ」
「淫乱だっつったろ。ヤられれば、ヤられるほど、体が反応しちまうタイプだ。態度と裏腹に体は素直ってか。好きだぜ、そういう淫らなヤツ」
「俺も好きだぜ。ったく、コイツはヤりがいのあるヤツだよ」
クチュクチュと小田島は、連橋のペニスを握っては、撫で回した。
「んぐっ。ぐっう」
既に、自分の口腔内で、大堀のペニスはかなり膨れあがっていた。連橋は、きつく眉を寄せた。息が出来ないほど、苦しかった。
「連橋。ちょい、動くぜ」
そう言って、大堀のペニスが口腔内から退いていく。連橋は思いっきり咽せた。スッと、大堀が、連橋の体を裏返した。大堀のペニスを咥える為に、連橋は小田島に背を向けていたが、大堀のせいで、脚を大きく開いた形で、連橋は小田島と向かい合う。
「!」
連橋は、小田島から顔を反らした。だが、小田島は、そんな連橋の顔を引き寄せて、無理矢理その唇にキスをした。
「ん、あっ」
連橋は、首を振ってそのキスから逃れようとしたが、小田島はそんな連橋の圧力には負けずに、連橋の舌を吸い上げた。クチュッと、音が響いた。
「へいへい。そこまで。ほい、再開」
大堀は、小田島を連橋から突き放す。
「てめえっ、なんだよ。邪魔すんなっ」
小田島が怒鳴った。
「お姫様に、再び練習再開だよ。おまえはおとなしく突っ込んでろ」
大堀は連橋に跨ると、連橋の唇に再びペニスを押し当てた。ググッと、再度連橋の口の奥に、大堀のペニスがあてがわれた。
「ぐうっ」
咽せた連橋の声。そして、大堀は、連橋の両脚を掴むと、グッと開かせた。
「ほれ。ご開帳」
小田島は、目の前にバックリと開かれた連橋の、濡れて赤く光る秘穴を見ては、喉を鳴らした。
「あ、ああ」
上擦った声で、小田島はペニスをソコにあてがう。
「で。俺は、こっちって訳さ」
呟きながら、大堀は、連橋の震えているペニスをペロリと舐めた。
「!」
叫びたくても、叫べない。連橋は、前と後ろと、自分の口腔内に入り込んでいる大堀の凶器に、同時に攻められて、激しく体を痙攣させた。
「オイオイ。お口が休んでるぜ」
フッと、連橋のペニスに息を吹きかけながら、大堀はクスクスと笑った。
「噛んじゃおうかな・・・」
と言いながら、大堀は連橋のペニスに、歯を立てた。
「っ!いてっ、いてっ。すっげえ、くる。大堀、止めろって」
大堀が連橋のペニスに悪戯したせいで、連橋の秘穴の襞は収縮して、小田島を締めつけた。
「とか言いながら、その腰の動きはなんだよ。激しいっつーの。お姫様の可愛いチンポが揺れて、俺の口の中、大変なことになってるんですけど」
「うっせえ。我慢できっかよ、こんなイイのっ!」
「あーあ。顔見て、イキたかったな。なあなあ、コイツなんて名前」
呑気な大堀だった。
「知るかよ。うっ、うっ」
小田島は、うめいた。
「つれないな、義政。俺、名前呼んで、イキたかったのにな。うっ。あ、俺も、そろそろヤバそー」
大堀は、自ら腰を振った。
「可愛い顔、汚しちゃおっと。くっ、うっ」
フッ、と大堀は腰を持ち上げると、連橋の顔の上に射精した。
「ううっ」
その瞬間、連橋のペニスも射精して、大堀の腹を濡らした。
「あ、うっ」
遅れて小田島も、連橋の中に吐いた。
「ん、ん、ん」
連橋は半開きの口から、喘ぎを漏らした。体の外を内をドロドロに濡らされて、フッと意識が薄れていく。
「あー。まだおさまんねえ・・・」
小田島は、舌打ちした。
「若い証拠だな。でもよお。そろそろ交替しようぜ。もうこのお嬢チャン、限界そうだから、おまえのもちゃんとおとなしく咥えてくれるさ」
「マジかよ」
「まあまあ。俺のを突っ込めば、それだけで朦朧とさせちまうから。安心おし」
「ちっ。ったく」
小田島は、おとなしく連橋の両脚の間から体を退けた。連橋の内股には、とろとろと熱い液体が流れ落ちている。大堀は、指で秘穴を引っ張って確かめた。
「あ」
連橋が小さくうめいた。
「うんうん。これだけ濡れてれば、問題ねえだろ。第一、コイツもう痛くねえだろうからさ。んじゃ、義政。口行け」
大堀は濡れた髪を両手で後ろに撫でつけながら、連橋の両脚を抱えあげた。ぴくっ、と連橋の脚が震え、抵抗を示す。
「まだ抵抗してやがる。大したもんだぜ」
「なに言ってやがる。とっととヤれ。危なくて、俺が口に入れられねえだろ」
「わかった、わかった・・・。ん?」
大堀は、バッと背後を振り返った。
「!?」
小田島もハッとした。
「どうした」
「足音だ。誰か来る」
「まさか。聞こえねえぞ」
「いや、来る」
大堀は目を細めた。
「誰が来るって言うんだ・・・。あ」
足音。小田島の耳にも、今頃やっと聞こえた。
「何人かいるな」
バッと連橋の脚を振り払い、大堀は立ちあがった。
足音が止まる。そして、襖が開いた。
「やっぱり、おまえか。城田」
大堀は、すっ裸のまま、城田を出迎えた。
「これは驚いた。恒彦さんも、ご参加中でしたか。連橋もさぞや可愛がってもらっていたんでしょうね。羨ましいですね」
城田は、眉1つ動かさずに、目の前に立ちはだかる大堀を見上げて、言った。
「今、いいところだ。出直せ」
「そうもいかねえんだよ」
「なんだと?」
「連れがいるんでね」
「・・・」
大堀は、城田を見た。
「誰だ?」
「連橋の男の恋人と女の恋人」
「!」
バアンッと、襖が蹴り倒された。大堀は、ハッとして構えた。
「連っ!」
「連ちゃんっ」
城田のあとを追ってきていた流と亜沙子が部屋に乱入してきた。
「!」
畳に転がっている連橋を見て、二人は一瞬凍りついた。わかっていたことだ。こういう光景であることも。だが・・・。流は瞬時に我に返った。
「てっ、てめえっ」
流は、部屋の中央で立ち尽くす小田島を見て、飛びかかっていった。
「このやろう。てめえ、このやろうっ!」
「連ちゃん」
慌てて連橋の方へと走ろうとした亜沙子を城田が羽交い締めにした。
「アンタは動くな」
「なにすんのよっ。離して。離してよっ」
「みすみす、敵を陣地に入れたか、城田。てめえ、不甲斐ねえな」
大堀は、冷やかに言った。
「勘弁してくださいよ、大堀さん。俺、あばらをやら・・・!」
バッと、大堀は、城田の腕から亜沙子を引き剥がして自分の胸に抱きかかえた。そして、城田の胸を軽々と蹴り上げた。
「ぐっ」
容赦なく大堀は、城田のあばら目掛けて、蹴りをいれた。城田は声もなく、廊下に倒れた。倒れた城田を大堀が踏みつけては蹴り続けた。
「やめっ。やめなさいよ、アンタっ」
城田の腕から大堀の腕に移動した亜沙子は、大堀の腕の中でもがいた。
「コイツは怪我してんのよっ。なにやってんのよ」
バタバタと亜沙子は暴れて、大堀の腕に噛みついた。
「いっ」
怯んだ大堀の腕から逃れて、亜沙子は、慌てて城田の前にかがみこんだ。城田は荒い息をしながら、亜沙子を押しのけた。
「ひっこんでやがれ。だから・・・ついてくんじゃねえっつて・・・言ったろうが、バカ女っ」
「女を殴れるならばやってみなさいっ」
城田の言葉を無視して、亜沙子は大堀を見上げて睨みつけた。
「威勢のいいねーちゃんだな。美人だ。俺は女は殴らねえぜ。女はな。殴るより、犯したほうが楽しい。なあ、見ろよ。俺のこのチンポ。おまえさんの彼氏の連橋の穴に突っ込み損ねた。責任取れよ、ねーちゃん」
「なんですって」
ガッと、大堀は亜沙子を押し倒した。無理矢理亜沙子のブラウスを引き裂いた。
「きゃあ。な、なにすんのよ。止めて、止めてえっ」
「恒彦さん、洒落になんねーよ。止めろっ」
「っせえ。城田。てめえはそこで黙って、見てやがれっ」
ドカッと、長い脚で大堀は城田を蹴飛ばした。
「うっ」
もろにあばらをやられて、城田は再び廊下に倒れた。
一方の流は、取り出したナイフを小田島に弾かれたものの、素手で小田島に殴りかかっていた。自分でも、こんなに人を殴れるのか・・・と思ったぐらいだった。木刀同士の戦いではない。自らの拳が血で濡れるほど、小田島を殴り続けていた。
「ひ、ひぃぃい」
小田島は、顔を血だらけにしながら、部屋を転がり回っていた。流は、小田島の腹の上に乗りあげて、ひたすら無言で小田島を殴り続けていた。
この怒り。こみ上げる怒りを、制御出来ない。このまま、小田島をぶっ殺してしまえ!頭の中で、誰かがそう叫んでいる。殺してやる。殺してやる。こんなヤツ。連じゃなくても、俺が。俺が殺してやるっ!
「ちくしょう。てめえなんか、てめえなんか。ぶっ殺してやるっ!」
こみ上げてくる怒りと、そして涙。胸が痛い。苦しい。どうにかなりそうだ、俺は!流は心の中で吠えた。
「流。もう・・・いい。それ以上、やるな。それは・・・俺の役目だ。おまえは・・・。おまえは手を汚すな。汚すんじゃねえよ・・・」
背後に聞こえた、その声。ハッと流は振り返った。連橋が起きあがってきていた。
「ソイツは俺の獲物だ。俺に譲れ・・・。いつか必ず、殺してやる。だが、その前に、アイツだ」
連橋は、ヨロリと体を動かし、流の落したナイフを拾いあげた。
「連・・・」
左手でそのナイフを拾いあげ、連橋は、それを口に咥えた。変形した右腕を、左手を添えて、そろそろと動かした。なんとか右腕が動くことを確認して、連橋は口元のナイフを右腕でしっかりと握った。
「アイツを殺す」
連橋はキッと、大堀の背を睨んだ。廊下で、亜沙子を組み敷く大堀の背を、連橋は冷やかに睨みつけた。頼む。動いてくれ、俺の右腕。そう願いながら、連橋は右腕でナイフをビュッと、放り投げた。
ズルズルと廊下をはいながら、城田は犯されようとしている亜沙子の体を、ガバッと自分の体で庇った。
「どけ、城田ァッ」
城田は亜沙子の体を自分の体の下に庇いながらも、大堀を振り返った。
「!」
そして、その目に映る、こちらに向かってスゴイ勢いで、飛んでくるもの。
「あぶねえ、恒彦さんっ!」
咄嗟に城田は叫んでいた。
「!」
大堀は城田の叫びに、ハッとして、身を屈ませた。城田は亜沙子の頭を抱えて、やはり廊下に伏せた。
ドスッと、と壁にナイフが突き当たってめりこんだ。まるで、ダーツのようだった。
大堀は、振り返った。向こうに連橋が立っていた。全身を濡らして、無様な格好だった。
「・・・へえ。まだそんな気力があったのか・・・」
感心したように言ったが、大堀の喉がゴクリと鳴ったのに、城田は気づいていた。
「勘弁しろよ。ガキの争いで殺されちゃたまらんぜ」
そう言って、大堀は立ちあがった。
「だったら、アンタは手を退け」
城田は言った。
「言われなくても、今は退く。交換条件だ。義政をこっちに返せ。弟のそんな顔を兄上が見たら卒倒されちまう。俺が信彦に殺される」
だが、流は首を振った。小田島の腹に乗っかったまま、こちらを睨んでいた。
「流。小田島をこっちによこせ。この人は、嘘は言わねえ。もう退くさ」
城田が、流を嗜めるように叫んだ。
「城田。後始末終えたら、義政連れて、俺の部屋来い」
「はい」
「だがな。俺は気に入ったぜ、連橋のこと。もう1度、ちゃんと犯してえな」
ニヤリと大堀は言った。
「クズヤロウっ!」
亜沙子は泣きながら、大堀に向かって唾を吐いた。大堀は、フッと亜沙子を見下ろした。そして、屈んでは、亜沙子の顎を人差し指で持ち上げた。
「よければ、ねーちゃん、アンタも一緒にな。俺は綺麗な子は男も女も好きだからな」
「死ね」
「気が強いヤツも大好きさ」
楽しそうに笑って、大堀はすっ裸のまま、廊下を去って行った。それと同時に、連橋が部屋の中央で倒れた。城田はあばらを押さえながら立ちあがって、連橋の側に歩いて行った。
「手ひどくやられたな。当分尻の穴が疼いて大変だろうさ。可哀相にな」
城田はニヤリと笑っては、天井を見上げて倒れている連橋を覗きこんで、言った。
「っせえ、・・・クソ犬。またしても俺の邪魔をしやがったな・・・」
「殺すのは、義政だけにしとけや。あんなクズ殺したって、なんのトクにもなんねえぜ」
城田はフンッと鼻を鳴らすと、今度は流に向かって歩いていく。
「義政を返せ」
「城田、てめえっ」
流は、城田に向かって殴りかかった。
バシッ!流の拳は、城田の左頬にめり込んだ。
「どいつもこいつも。俺がなにしたって言うんだよ」
頬と、あばらを押さえながら、城田は畳に血の唾を吐いては、呟いた。
「とっとと連橋を連れて帰ってくれ。車は使えるようにしておいたから。義政、ほら、立て」
城田は、倒れていた小田島に向かって手を伸ばした。
「クソヤロー・・・。流、てめえ、このヤロウ。覚えておきやがれっ」
顔中腫らして、小田島はうめいた。よろよろと城田の腕に倒れこむ。
「てめえこそ。その汚ねえツラ二度と俺と連の前に現すんじゃねえっ!」
流はそんな小田島の背を蹴った。小田島はカッと目を見開いた。城田が慌てて小田島を支える。
「城田。今すぐ流のクソを殺せ」
「やだね。俺はおまえを恒彦さんのところへ連れていくのが仕事だ」
「俺が命令してんだぜっ。ぶっ倒せ、あんなカス!」
「いづれちゃんとやってやる。今は、待て。さあ、行くぜ」
城田はグイッと、小田島の腕を取ると、大股で連橋の横を通りすぎ、亜沙子の横を通り過ぎた。
「裏口を使えよ。この部屋出て、右に歩けば裏口だ」
亜沙子にそう言って、城田は小田島を連れて出て行った。
連橋は、天井を見上げていた。ゆっくりと目を閉じる。
久人を迎えに行かなきゃ・・・。心の中で、繰り返し、連橋は呟いていた。
体はもうピクリとも動かない。
繰り返し、繰り返し、連橋は心の中で呟く。
久人、久人、久人、久人。
久人に会いに行かなきゃ・・・。
濡れた顔を、連橋は左手で覆う。
亜沙子と流が自分を呼んでいる。
「ああ。聞こえている。けど、悪い。体が動かないんだ。起こしてくれ・・・」
体が、もう、どろどろで動かないんだよ・・・。情けねえけど、立てねえんだよ。今は立てねえ。けれど・・・。必ず、立ってみせるから。今は、今だけは。手を。手を貸してくれ・・・。そう言ったのだが、それは言葉になったかどうか、自分でもわからない連橋だった。
12話に続く
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景気よく3P続けました。
余談ですが、大堀は美形なんですよ(笑)美形の35歳デス。
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