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はあ。
陽は溜め息をついた。
窓辺の縁に腰を下ろし、陽は遥か遠くに見える森の緑を先ほどからボーッと眺めていた。
「ほっぺが痛え・・・」
呻いて、陽は自分の両頬に手をやった。

昨日、北条の居ない真昼間に桃色屋敷から脱出を試みた。だが、脱出はあっさりと看破され、さっさと連れ戻された。まったくの騒ぎにすらならなかったへたれた逃亡劇?だったというのに、夜、部屋にやって来た北条は、事実を知っていた。ルゼは「サーシャ様には内緒にしておきますから」と言ってくれたのに。「なんでだよっ!」と聞き返したら、それはリスローのせいだった。どうやら、リスローは昼間この屋敷にやってきたらしい。なんでも俺のその後の容態を見に来たらしいが、実際は怪しい。主なき屋敷に、どうせルゼを口説きにやってきたに違いない。あの暇人医者め!と陽は心の中でリスローに対して呪いの言葉をぶちぶちと呟いた。屋敷にやってきたはいいが、屋敷では小さな騒ぎが起こっていて、誰も自分を相手してくれなかったのだろう。そこらにいるやつらに、騒ぎを訊いて発覚したのが「陽逃亡未遂事件」だったのだ。
「おまえは。これほど手厚くもてなしてやっているのに、なんで逃げる」
と、北条はぶりぶり怒った。そして。怒りながらも、また当然のようにSEX・・・だった。

ベッドの端に座った北条の開いた両脚の間に体を固定され、ペニスへの愛撫を口で施せと強要。
つまり、フェラーリ(苦笑)
陽が散々イヤだと喚いた結果が、両頬の腫れた原因だった。容赦なく引っ叩かれて、渋々北条のペニスを口に含んだ。あのアホは、二回も俺の口の中でイキやがったくせに、それじゃまだ足りずに、俺に突っ込んだ。陽は思い出しても、腸が煮えくりかえった。

「舐めながら、興奮するなんてイヤらしいヤツだ、おまえ」
「んぐっ」
一度目の放出を終えた北条は、陽の脇に手を差込み、陽を立たせた。自分はベッドに座りながら、目の前にある陽の腰を掴むと、さっさと履いていたジーンズだけをきっちりと脱がすと、再びフェラを強要した。北条は、陽にペニスを舐めさせておきながら、陽の背中にキスの雨を降らし、挙句に剥きだしの尻に指を這わせては、何度も狭間に指を擦りいれてきた。そんなことをされるから、陽のペニスからも、先走りの液が先端からタラリと零れていった。
「っ、やっ」
何度も北条のペニスを吐き出し、陽は首を振ったが、北条に顎を固定されてしまい、続行を促される。北条がなにもしなければ、ひたすらペニスに集中出来たというのに、そうやって余計ないたずらを仕掛けるから、陽は苦戦した。先に自分がイッてしまったが、やっと北条のをイカせることが出来て、あまりに長い時間ペニスを咥えていたので口の中が麻痺しているのを陽が気持ち悪がっている隙をついて北条は陽をベッドに押し倒した。
「やめろよ。もう二回もイッたくせに」
「口とおまえの中でイクのは違う。回数にいれるな」
と、まるっきり精力絶倫な反応で、陽にはもうどうしようもない。「ちったあ、溜める時間があるのが普通だろうがよ!」と、陽は言い返した。「地球人の体とは微妙に違う」と北条はのたまった。
結局、いつものパターンだ。脚を開かされて、濡れに濡れた北条のでっかいペニスが、陽の敏感な穴に遠慮なく差し込まれた。
「ああっ」
陽は、んくっと喉を反らした。
「そら。この前教えてやったろ。腰使え」
「や、やだ・・・」
「しようがないヤツだな」
それはてめえだよッ!と言いたくても、もう喘ぎしか出ない。
「んあ。うっ、うっ、あうっ」
乱暴な北条の腰使いに、陽の下半身が跳ねた。
「やめろ。んな、腰・・・。使うな・・・って。いやだっ」
中の襞が擦れて破れちまう・・・と陽は本気で怖くなった。それぐらい北条の腰使いは容赦がない。もう「恥ずかしいっ!」と顔を掌で覆えばいいような状況ではないほど、大股開きで陽は北条に犯されていた。
「んん。ん、んぅ」
「可愛いぞ、陽・・・。喘ぐおまえは本当に可愛い」
耳元で、熱に浮かされたような北条の声が聞こえた。
「は、は、はぅ。ん」
一度目を深い正上位で終え、それでもまだ満足しなかった北条は、今度はバックで陽の体を弄んだ。
「あ。うう。もう、もうっ。いやだ〜!」
激しく尻の穴を出入りする北条のペニスに、陽は自分の腰が浮いて締めつけてしまう反応がたまらなくイヤだった。だが、どれだけ叫んだところで、ここはこういう所だ。誰かが助けに来てくれる筈もない。北条は両手で陽のペニスを扱きあげながら、自らのペニスで陽のアナルを攻めた。
「出るって。あ、う、んんっ」
巧みな北条の愛撫に、陽は射精する。瞬間、陽の内壁が、北条のペニスをキュルッと締めつけた。
「く。たまんねえな」
北条は呟き、すぐさま、陽の中で射精した。
「ああっ」
ドッと、中に放出された北条の精液を感じ、陽はたまらず声をあげた。
体の中。口とアナル。計4回も北条の精液を注入された陽は、今度こそ気を失ってしまった。


そして。翌朝起きると。ほっぺたには、でっかい氷枕らしきものが乗っていたという訳だ。かなり赤く腫れていたので、さすがに気にしたらしい北条の仕業のようだった。
「こんなことするぐれえならば、最初から殴るなっ!」
バシーッと陽は氷まくらを床に叩きつけた。
「頭来た。俺はハンストするっ!」
と、陽は、朝飯を運んできたルゼに、断固として言った。
「ハンスト?」
「メシいらない。食わなければ、どうせそのうち痩せこけていく。痩せたミイラみてえな体になりゃあのバカも諦めるだろうし、なにより俺は死ぬ。へへんだ。ざまあみろ」
「そ、そんな。陽様・・・。いけませんっ!」
ルゼは吃驚して、目を見開いた。手に持っていた朝食のお盆が震えていた。
「心配すんな。きっちり死んでやっから。そうすりゃルゼもお役ごめんだぜ」
陽はあっけらかんとしていた。
「なにを言うんです。いやです。私、陽様が死んでしまうなんて。せっかく仲良くなれましたのに・・・。絶対に嫌です」
「る、ルゼ・・・」
ウルッと陽の目が潤んだ。なんという可愛いことを言ってくれるのだろう・・・と思って。これで、馬面ではなく、あのルゼの顔だったら、悩殺ぼよーんだ。
「お願いです。食べてください」
ズイッとルゼは、陽の目の前にお盆を突きつけた。
「い、いや。それよか・・・。顔、戻してくれる?俺、出来れば飯よりもルゼを食いたい」
「よ、陽様・・・」
馬面が赤面。か、可愛いっつーより、こええよ・・・(汗)だが、さすがに意味は通じたらしい。
「それは出来ません!」
どきっぱり。
「あ、そう」
けっ。やっぱりな。そうだと思ったよと、陽は速攻拗ねた。
「じゃあ、メシいらない」
「陽様〜」
困ってるルゼを見るのは少々胸が痛んだが、この際自分の身だって大事だ。
「ごめんな、ルゼ」
そう言って、陽は朝飯を断った。そして、昼も。嫌味ったらしく、この上なく美味しそうなステーキもどきをルゼは昼飯に持ってきたが、陽はそれを見るなり部屋を飛び出した。

で。この屋敷の一番最上階にある物見の塔にやってきていたのだ。ここならば、誰も来ない。というか、近寄らない。なんでも、この最上階フロアには、前にこの屋敷の持ち主だった男の、愛人の幽霊が出るらしい。確かにどこか陰気くさい雰囲気が漂っていたが、単なる手入れの悪さだろ・・・と陽はすっかり気にしていなかった。陽はこのフロアで寛ぐのがお気に入りだった。
「あのフロアがお気に入りだとは。つくづく無神経なヤツだ」と、超無神経な北条に言われてムッとしたが、それはそれでよかった。どうしてか、北条もまったくこのフロアには、関ってこない。ここに陽がいると知っていても、北条は自ら来ないのだ。使いをよこす。
「いっそここで寝泊りしてやろうか」と陽は本気で考えた。このままの状況が続くならば、いつか絶対にそうしてやる!と陽は心新たに誓った。
「にしても、腹減ったァ」
ぐーきゅるると腹の虫がさっきからうるさい。
「あの森に行けば、食える木の実とかいっぱい転がっているかも・・・」
窓から見える、森。つくづく飛べない自分が呪わしい陽だった。
「腹減ったよおお」
うわあんと陽は、立てた自分の膝に顔を埋めて嘆いた。そこへ、ルゼがやってきた。
「よ、陽様」
おどおどとしたルゼ。よほどこのフロアが嫌なのだろう。
「ルゼ・・・」
「まだご機嫌は直りませんか?私の部屋に、お菓子を用意しております。お願いですから、なにか食べてください」
「いやだ」
「陽様」
ルゼは俯き、手に抱えていた花瓶をコトッと陽の脇に置いた。
「なに、これ」
「こちらは殺風景すぎますから。せめてこの花が陽様のお心を和ませることが出来れば・・・と」
そういいながら、ジワリと馬面に涙が浮かんだ。ルゼは、本気で陽を心配しているのだ。
「そ、そんなことしても無駄だ。俺は今日からここに住むっ」
ズキズキと胸が痛むのを感じつつも、陽も頑固なのである。
「それだけはおやめください」
「あのバカにもそう伝えてくれ」
「・・・」
「君の気持ち。嬉しいけど・・・。俺にはこういうふうに北条に反抗することしか出来ない。だって俺は。北条の愛人なんてする気毛頭ないんだからなっ」
フンッと陽は鼻息荒く言った。
「・・・でも。昨日は、かなり激しく愛しあっていらっしゃったご様子で・・・」
「昨日!?な、なんで」
ギョッとして、陽はルゼを見た。
「隣の部屋のマークが言ってましたわ。陽様のお声がよく聞こえたらしく。羨ましいなって、彼言ってましたわ」
「ぐ、ぐわあ〜っ」
ま、丸聞こえじゃねえかよっ!と陽は、一気に顔を赤くした。
「ち、違うの。あれはっ。あれは違うんだよ。そうじゃねえの。も、もういいっ。ルゼ、行けよ。このフロア、気持ち悪いんだろ。さっさと行けよ」
「は、はい。では、陽様。すみませんが、失礼します。お心、変わられることを階下から祈ってます」
「変わんねえよ。動かざるごと岩の如しだかんなっ」
「は?」
「北条にもよーく伝えておいてくれ」
ルゼはうなづき、去っていった。
「ちくそー。と、隣の部屋に聞こえちまっていたとは・・・。安っぽい作りしてやがるぜ、この屋敷。うあ、はずかしー。ぎゃー、はずかしーっつーの!」
再び陽は膝に顔を埋めて、喚いたのだった。


とうとう日も暮れた。昼間より更にいい匂いをした料理を、世話係の男が持ってきたが、陽が断固として断ると、引き上げていった。物見の塔のあるこのフロアに夜が訪れた。
「確かに、夜は結構すげえ迫力かも」
窓の外には、街の明かりや屋敷の明かりが見えるというのに、このフロアにはいっさい照明となるランプがない。取り払われていた。もう使用しない・・・という態度が見え見えだった。
なので、真っ暗なのだ。陽は、月明かりだけを頼りに動いた。窓の縁から降りて、床に座りこんだ。
「ゲームしてえ。テレビ見てえ。音楽聴きてえよ」
ぼやきながら、ゴロリと床に横たわる。たぶん、ルゼにこの騒ぎを訊いてる筈なのに、北条がここに来る様子はまったくなかった。
「北条のヤロウ。マジに来ねえつもりだな。謝りの言葉一つもありゃ可愛げあるっつーに。ちくしょう。ああ、そうかよ。だったら俺も居座ってやるからなっ」
一人叫び、陽は目を閉じた。眠る、ために。


夢??
ああ。誰かが廊下を歩いている。ゆっくり、ゆっくり。足音が聞こえる。
カツン、カツンって。北条か!?
「ん?」
おかしいな。廊下は真っ暗だぞ。照らす明かりが見えない。明かりがなければ、あんなふうに毅然とあの廊下は歩けない筈だ。足元すら見えないんだから。陽は起き上がって、周囲を見渡した。
確かに聞こえる、足音。こちらに向かっている。カツン、カツンと。
「出やがったか、幽霊めっ」
フンッと陽は鼻を鳴らした。勝手に出やがれ。んでもって俺を憑り殺せばいい。幽霊なんてちっとも怖くねえよ。今、自分の置かれている立場よりも怖いもんなんてなに一つねえさ。やけっぱちで陽は再び横になった。かつん、かつんと定期正しく足音。近づいてくる。
カツン、カツン・・・。グーキュルルル。カツン、カツン。グーキュルル。
ああ。俺の腹の虫のがうるせえよ。なんか、この腹の虫。恐怖がすっ飛ぶんですけど。我ながら情けねえ。うるせえな。ったくよ・・・。グーグーやかましいっつーの。そんなことを思いながら、そのまま、陽はコトンとまた眠りに落ちた。


降り注ぐ朝の光に、陽は目を覚ました。
「んあっ」
ガバッとおきると、清冽な朝の光が、周囲を照らし出していた。
「あ、俺・・・。幽霊・・・。大丈夫だったのか?」
あまりのふてぶてしい態度に、幽霊も呆れて去っていったのか、陽の体にはなんの異変もなかった。
「毛布」
いつのまにか、体には毛布がかけられていた。たぶんルゼだろう。夜中に、怖いのを堪えて来てくれたんだろう。ってことは、あの足音はもしかして、ルゼだったのか???
「ああ、ルゼ。すまないっ」
毛布をガバッと抱きしめて、陽は呟いた。
「つーか・・・。腹減った。あ、もう限界・・・」
陽は腹をさすって、嘆いた。
「・・・」
その時。陽の目には、ルゼが置いていった花瓶が映った。花瓶。花・・・。この花、食えるのだろうか。キラーン!陽は目を輝かせて、花瓶の中から花を一本抜き取った。
「くっ。地球にいた頃、まさか飢えて花を食う羽目になる生活など、誰が想像したものか」
などと言いながら、陽は「いただきまーす」と躊躇いもせずにパクリと花を食べた。
「んにゃ!?う、うめえっ」
甘く、ほんわりとした味だった。花びらが結構な厚みがあるので、食べがいがあった。
「なんじゃ、これ。美味いぞ」
バババッと、陽は花瓶から花を何本も引っこ抜き、花を頬張った。
「食えるじゃん。食えるじゃん」
ホクホクと陽は顔を綻ばせ、花を食っていく。そんな陽を窓の外から眺めていた鳥達が、いきなり塔の窓辺へと乱入してきた。バササッと翼をはためかせ、突進してくる。
「あう。だ、だめ。それ、俺の食料だ。返せっ」
鳥達は、花瓶の花を嘴で一斉に突付きだしていた。
「こ、こら。てめえら。やめろーっ」
人を恐れぬ鳥達は、花瓶に生けてある花だけではあきたらず、陽の手にあった花を嘴でヒョイと摘んでいった。
「うおおお。い、今食べようとしたんだ。てめえ、このやろうー」
さっさと花をくわえて飛び立っていこうとしている鳥の、長い尾を陽はハシッと掴んだ。
食べ物に対する執念は、人間生来のものではあるが、それにしても陽の迫力ったらなかった。
「返せ、戻せ。俺の食料っ」
陽は鳥の尾を掴みながら、んぎぎーっと手前に引っ張った。だが、鳥の抵抗も凄まじい。逆に引っ張られて、陽は物見の塔の窓枠に立った。鳥は、空中に飛び立とうともがいている。
「こしゃくなっ」
と、陽は、鳥の尾をギュウッと掴んで、更に、更に手元に引っ張った。その瞬間。ズルッと、窓枠から脚を踏み外した。
「え、うそ」
ひゅるるる〜。鳥を片手にしたまま、陽は空中を↓にストーンと落ちていた。
「ぎゃあああ。死ぬっ。死ぬっ。死ねる〜!!」
陽は空中で喚いた。
「わー。死ぬ前にルゼとやりたかった。ちきしょー!!」
などと空中を落ちているのに、結構冷静な陽だった。
「陽。このバカッ」
と、頭の上から声が降ってくる。
「!?」
見上げると、北条が空中を飛んでいた。
「ええ?あ、そうか。コイツ空飛べるのか」
と思っていたのも束の間、北条の体は陽の体に追いついた。
バサッと耳元に羽音が響いた。陽は空中の、空よりやや地上に近い辺りで北条に抱きとめられていた。フワフワと体が宙に浮いている。
「一体なにを意地になっているのかと様子を見にくれば。おまえは飛び降り自殺の真っ最中だった。このバカっ」
「す、好きでダイブしたんじゃねえよ。ついうっかりと」
「そうなのか?おまえは、ついうっかりと空中を飛んだりするのか?羽根もないのに。いずれにしても、飛び降りは止めた方がいい。地面に叩きつけられて、脳漿飛び散るぞ。美しくない死に方だ」
「なに言ってんだよ。降ろせっ」
バタバタと陽は北条の腕で暴れた。
「ああ。降ろすとも。地上に降りたら、さっそくお仕置きしてやるからな。驚かせやがって」
「お仕置き!?」
ギョッと陽は目を剥いた。フワッと北条は羽根を操り、トンッとほとんど衝撃なく大地に降り立った。桃色屋敷裏庭。よく手入れさた木々や花々のの並ぶ・・・。人気のない場所。人気はないが、部屋によっては、バルコニーから丸見えの場所なのだ。サーッと陽の顔色が青ざめた。
「うわあああっ。い、いやだ。おまえの魂胆は見え見えだっ」
逃げ出そうとする陽を、むんずっと北条は捕まえた。
「なにを今更当たり前なことを」
ドンッと、北条は陽の体を、とある一本の大木の幹に押しつけた。
「俺は、本当に吃驚した。間に合わなかったらどうしようかと・・・。もし間に合わずにおまえが地面に叩きつけられて死んでしまったらどうしようか・・・と」
言葉どおり、北条の顔色は真っ青だった。
「どっ、どーするもこーするも。死ねばオシマイなんだよ」
近づいてくる北条の凶悪ですらある美貌に、陽は眉をつりあげた。
「なんだよ。余計なことしやがって・・・。そりゃ予定外だったけど、ここで死んでれば、俺だって楽になれたかもしんねえのに・・・」
「楽ってなんだ?おまえは十分楽してるだろう。毎日、毎日。食っては寝、食っては寝。仕事もしないで、ただひたすら俺に脚を開いていればいいだけの生活だ。至福ではないか」
「どこが。それが地獄だって言ってんだよ。毎晩、毎晩、部屋に来ては俺のこと犯しやがって。そんな生活のどこが楽だ。お、俺だって・・・。俺だってたまには、ゆっくり休みたい。眠りたい!」
「犯しているんじゃない。おまえのことを、愛してるんだ。愛して、いるんだ。陽」
「んな筈あるかよっ。いっつも無理矢理!」
「なぜわからない。おまえのことを、こんなに愛してるのに・・・」
一瞬、北条はいつものクールな顔を崩し、ふっと泣きそうな顔になった。え?と陽が目を凝らしたその僅かな隙に、北条の唇が陽の唇に重なった。
「んっ」
北条の舌が、陽の歯列を割って忍び込んでくる。もう、何度。こんなキスを繰り返したことだろう。この桃色屋敷に来てから・・・と陽は思った。息すら苦しくなるような、激しくて強引で。今日はいつもより3倍はなんだか強引・・・。
「くる、し。ほうじょう」
ドンッと陽は、膝で北条の足を蹴った。
「おまえが死んでいれば、もうこんなキスも出来なかった。心から俺は自分に翼があったことに感謝しているんだ」
「やかましいっ。どけ」
「どく訳ないだろう。昨日は、仕事で屋敷に戻れなかった。今朝はそのせいで休みだ。朝からおまえを抱こうと思っていたら、おまえは朝っぱらからこの騒ぎだ。昨日に引き続いて、今日まで」
「不慮の事故なんだよ、今回のはっ」
「うるさい。俺をここまで心配させた責任。この体でとってもらうぞ」
と、北条は陽の腰に手をかけ、ジーンズを膝まで下ろしてしまう。
「げっ」
むき出しになった下半身に、陽は一瞬硬直してしまった。そんな陽を見つめながら、北条は陽のペニスに指を絡めた。
「うっ」
ドンッと、北条は自分の体を陽の体に重ねて、手だけを陽のペニスに絡めて、執拗に動かした。
「やめろ、北条・・」
のしかかってくる北条の胸に頭を埋め、陽は首を振った。
「手、離せ」
「やだね」
「あっ」
ズボッと、北条は陽の口に、空いた手の指を突っ込んだ。
「ちゃんと舐めろ。でないと、おまえの可愛い穴が壊れるぞ」
「っ」
悔しいが、この状況ではどう考えたって、一発はヤられる。だったら、痛い目に遭うのはごめんだ、と陽は観念して、北条の長い指を舐めた。舌を絡め、一生懸命に舐めた。
「上出来だ」
満足そうに北条は微笑むと、スルッと濡れた指で、陽の後穴を撫でた。
「ひっ」
ビクッと陽の上半身が竦んだ。
「力を抜け。もう痛くねえだろ」
「ち、ちきしょうっ」
陽は、北条の腕に縋りつきながら、つまさきを浮かせた。
ジュクッと、北条の指が、陽の柔らかい体内に侵入した。
「んあっ」
最初こそしずしずと陽の体内を移動していた北条の指だったが、あっと言う間に、乱暴な動きになった。
「ん、あ。あ」
一本だった指が2本、3本と増え、陽の中を擦りあげていく。その衝撃が、陽のペニスをますます勃たせていった。
「前はもう爆発寸前だ」
くすっと北条は笑いながら、陽の耳元に囁いた。
「あ。あ。あ」
ビュッと陽のペニスから、白濁した液が散った。
「ううっ」
ブルリと震えた陽の体を抱きしめながら、北条はズッと後穴から指を引き抜いた。
「熱いぞ。おまえの中」
北条は、陽の体の中に挿れていた2本の指を、陽の目の前に突きつけた。ゆっくりと指を開くと、ツッ・・・と2本の指を繋ぐようにか細い糸が引いた。陽は、カアッと顔を赤くして、北条から目を背けた。北条は、自分のズボンの前をくつろげると、陽の顎を引き寄せた。
「!」
そのまま顔を木の幹に押し付けられて、陽は呻いた。北条は、背後から陽を抱きしめて、Tシャツの上から乳首をまさぐった。
「う。あ」
グリグリとまさぐられて、陽は眉を寄せた。剥きだしの尻が震え、ペニスからは、名残の白濁した液が滑り落ち、足元の草を濡らした。北条は、陽の双丘の柔肌をグッと両手で押し開き、そそり立つペニスを挿入した。
「あ。あ、ううっ。あ」
陽の口から、悲鳴が零れた。立ったまま、後ろから挿入されて、陽の頭は一瞬真っ白になった。
「すげえ、熱い」
陽の肩に顎を乗せ、北条が意地悪く囁く。
「んん。うっ。んくっ」
北条は、陽の腰を両手でがっしりと掴んで、陽の体内にペニスを打ちつけてきた。
「あっ。痛っ。痛えよっ」
力を失った陽のペニスは、幹のゴツゴツした表面に、北条が動く度に揺れて、擦られた。
「痛い筈ないだろ。気持ちよさそうに、おまえの中は俺に吸い付いてきている」
「ち、違う。尻・・・じゃなくって」
首を振った陽に、北条は気づいた。
「ペニスが痛いか?」
「い、痛い。このままじゃ使いもんにならなくなるっ」
陽はうなづいた。
「使い物にならなくなるのは別に構わないが・・・。まあ、仕方ないな」
のんびりと北条はそう言い、ググッと陽の腰を引き寄せた。
「や、あうっ」
ペニスを挿入したまま、北条は陽の腰を回転させた。
「あ。やめっ。擦れるっ」
腰が回転する勢いで、陽の中は激しく北条のペニスに擦られた。
「い、やだあっ。あああっ」
萎えていた筈の陽のペニスは、即座に勢いを取り戻し、北条と向かい合った瞬間に、射精していた。
ぐったりしてしまった陽を正面から抱きしめ、北条は小刻みに腰を揺らした。
「二度もイキやがって。俺はまだ一度もイッてねえぞ」
「う。んんっ」
小さく揺れる、いつもとは違う焦れた動きに、陽は鼻から抜けるような甘い声を洩らした。
「や。北条。なんか、その動き・・・。気持ち悪い」
「たまにはいいだろ。ゆっくり、も」
ズルリと北条は陽の後穴からペニスを引きずり出すかのように退いては、再びゆっくりとペニスを挿入していく。
「あ。あ。や、やめろ。それ、いや・・・だ」
じれったさに陽は北条の腕に縋りついた。ポロッと陽の目から涙が零れた。
「おまえ。結構こういうのも好きなのか。中がすげえ痙攣している」
「す、好きな筈ねえだろ。こんなの、嫌だっ」
キュウキュウと締め付けてくる陽の後穴の反応に、北条は満足した。
「一つ発見したな。おまえを虐めるのは、今度はこの手を使おう。けど、今は」
北条は、今度こそ本当にペニスを陽の後穴から抜いて、陽の膝に絡まっていたジーンズを取り去った。
「やっぱり激しく動きたい」
ドサッと陽を緑の草の上に押し倒し、北条は、陽の足を肩に抱え上げた。
「あっ。北条。てめえ、ここどこだと思ってる。お天道様の真下だぞ。朝っぱらから、こんな。こんな。嫌だ。誰かに見られるっ」
陽は抵抗したが、開いた足は北条に固定されてしまって、どうしようもなかった。
「いやだよ。北条・・・。部屋でなら・・・。部屋でなら、相手するから・・・」
グスッと陽は、涙声になった。北条はそんな陽を見下ろし、苦笑した。
「ここはこういう屋敷だ。俺が、いつどこで、どんなSEXをしてようと気にするやつはいない。だから、おまえにも慣れてもらわないとな」
そう言って北条は、濡れそぼった陽の後穴に再度侵入していった。
「ひっ。あ。いやだ〜っ!この変態っ!」
引き攣った陽の声が、青空に響いた。


「良かったですよ。陽様がお戻りになってくれて」
ルゼは、微笑んでいた。
「本当に陽様はお顔に似合わずに頑固で。私、陽様はもうあそこに住み着いてしまわれるかと思ってましたのよ。お戻りになられて本当に嬉しいです。良かった・・・」
「・・・って、本人、聞いてねえぞ、ルゼ」
北条は呆れたように、呟いた。
「あら」
ルゼは、陽を見つめて、クスッと笑った。

陽はベッドの上で、目の前に山と置かれた食料を貪り食っていたからである。次から次へと、凄まじい勢いだった。今は、んぐんぐと、地球で言うところのバナナに似た果実を食っていた。
「食いたりねえっ。北条、ステーキもう一枚焼いてきてもらってくれ」
「既に注文してある」
北条は、シラッとした顔で答えた。
「なかなか気が利くじゃねえか。じゃあ、あとは水。水持ってきてくれ」
「なんで俺が」
と言いながらも、北条はベッド脇に置いてある椅子から立ち上がった。
「サーシャ様。わたくしが」
ルゼがハッとし、北条に声をかけた。
「いや、いい。私が持ってくる」
北条は、部屋の入り口近くに放置されていたワゴンから、水を持ってきた。
「ほら」
「さんきゅ」
ガボガボと水を飲んでは、再び陽は食い始めた。
「それにしても、スゴイ勢いだ。たかが一日断食したぐらいで」
ボソッと呟いた北条の言葉を耳にした陽は、キッと北条を睨んだ。
「たかが?そりゃたったの一日だよ。けどな。腹減って死にそうだった俺に、朝っぱらからくだらねえ運動させたの誰だっ!一度ならまだしも。てめえは・・・」
「俺が悪いのか?おまえがあんまり可愛い顔をするから、何度でもやりたくなっちまうんだろうが」
北条の言葉に、陽は顔を赤くした。慌ててルゼを見ると、ルゼはクスクスと笑っていた。
「や、やかましい。俺の顔が可愛いのは、元々だ。なにも今更言われることじゃねえよ」
「それはそうなんだがな」
「くそっ。抜かずの3連発には、さすがの俺も呆れたぜ。言っとくけどな。尻から出血したんだ。当分はやんねえからなっ」
「つーか、出来ねえだろ。残念だがな」
あまりの激しいSEXに、とうとう陽が出血した。北条は、慌てて医師に陽の体を診させたら、しばらくは「SEX厳禁!」という痛い忠告を受けてしまったのだった。
「ざまあみろ。ああ、尻痛いぜ。尻痛いっ」
プンプン怒りながらも、陽は相変わらず食い続けていた。そのうち、屋敷のコック達がしずしずとワゴンを押して、ステーキを初めとして、新たな料理を運んできた。
「やった♪」
それを見て、陽の目が輝いた。そんな陽を見て、北条は微笑んだ。さらにそんな北条を見て、ルゼが微笑む。
「サーシャ様。陽様のこと、本当に愛していらっしゃるんですね・・・」
ルゼに耳元で囁かれ、北条は照れたように小さく笑った。
「本人には伝わっていないがな」
「いつかきっと、陽様にもおわかりになる日が来ますよ」
「だといいが」
「二人でなに話してんだよ。俺の悪口か?」
陽は、ナイフ片手に、ギロッと北条をベッドの上から睨んでいた。
「なんでもない。おまえは食うことだけに専念してろ」
口の端をつりあげ、北条は笑いながら言った。
「食い意地の張ったやつだからな。食ってれば機嫌がよい」
北条はコソッとルゼに囁き返す。
「それは否定出来ませんわね。なんたって陽様は、お花まで食べてしまわれたんですもの」
ルゼと北条は顔を見合わせ、苦笑した。

続く★

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