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本日の全ての分の配達を終えて、野瀬は事務所に戻った。
こういう時に限って、なんだかんだと雑用が多く、事務所に戻ったのは、もう10時近かった。
すると、事務所のソファには松井が座っていた。
まっさんとなにやら喋っている。
「おう。野瀬坊、お疲れさん。真面目に働いてきたな」
まっさんは、野瀬の姿を見ては、軽く手を挙げた。
「お疲れ様ッス〜。とりあえずはね」
答えつつ、野瀬はチラッと松井を見た。
目が合い、松井も野瀬に言葉をかけた。
「お疲れ」
そう言いながら、松井は立ちあがった。
「ども」
野瀬は、松井を見ては、僅かにうつむいた。
妙な「照れ」が襲ってきて、野瀬はそうしたのだが、松井にはそうは取れなかった。
「・・・」
松井はそんな微妙な野瀬の態度に気づいて、僅かに顔を曇らせた。
「それじゃあ。今日はすみませんでした」
ペコッと松井は、まっさんに御辞儀をして事務所を出た。
野瀬も後からついてくる。

川辺リを歩く。この辺りは静かだ。
空には星が輝いている。
都会から離れているこの街では、恐ろしいくらい星が綺麗だ。
土手を、奇妙な沈黙のまま歩いている時だった。
「勘違いだったんだ」
先を歩いていた、松井がボソリと言った。
「え?」
野瀬は、聞き返す。
「昼間のことは、俺の勘違いだったんだ」
「勘違いって!?」
吃驚して野瀬は、先を歩く松井の右腕を引っ張った。
「勘違いってなに!?全部取り消しってこと?」
「い、痛いぞ、野瀬・・・」
松井は振り返った。
「勘違いってなんだよ!」
「どうしたんだ、そんなに真剣な顔をして」
松井はキョトンとしていた。
「あのキスも、告白も、全部勘違いってことなの?」
そう言われて、松井はハッとした。
「そういうことではなくて・・・」
「じゃあ、なんだよ」
「君が・・・。もうこの街を出ていってしまったかと思ったんだ。だから、俺は、慌てていて」
松井は言いながら、僅かに顔を赤くした。
「だから。あ、あんな行動に」
「ああ、そうなんだ。なら、勘違いしてくれて、ありがとう」
「え?」
「遥さん。俺、配達中、ずっと考えていたよ。貴方のこと。貴方のキスとか、告白とか。あんまり考え過ぎていてさー、配達先3箇所も間違えたんだー。
これ、まっさんに内緒ね」
野瀬は、掴んだままだった松井の腕を引っ張った。
ドサッと松井の体を胸の中に抱き込む。
「野瀬。ここは、その・・・。あまり人がいないとはいえ、往来なのだが」
「こんなこと、滅多にしないよ。約束する。でも、今だけは許してよ」
「・・・」
野瀬の唇が、松井の唇に重なる。一旦は、離れ、そして再び重なる。
「貴方が好きだ。好きだ。俺も、貴方と幸せになりたいんだ」
「俺も?」
「気にしないでください」
再び唇を重ね、そして。
松井は、野瀬の目の前に銀色の鍵を差し出した。
「もう1度。受けとってくれ」
「喜んで」
野瀬は、ニッコリ笑うと、松井の手から、鍵を受け取った。
松井の体には、ゾッとするくらいの安堵感と、喜びが、瞬時に駆け抜けていった。
「この鍵は深いよ」
「ん?」
「だって。もうこの鍵で、遥さんの全てを開けることが出来るから」
言われて、松井は、軽い立ちくらみを覚えた。
「・・・」
「え?なんで、無言?」
「スマン。ちょっと、どーいう反応していいかわからん」
松井は顔を赤くしたり、青くしたりしていた。
「ハハハ。遥さんらしーね。キれたかと思ったら、すぐに真面目になってサ。軽く流してよ。言ってる方も結構笑えるんだから」
野瀬はギュッと鍵を掌に握りしめた。
「ねえ。俺、先走ってない?本当に俺でいいんだよね。この鍵。そういう意味で、受けとっていいんだよね」
野瀬は念を押す。
「どちらかというと先走ったのは、俺だ。君でいい。その鍵で、君は俺の好きなところを開ければいい」
「おっ。言うねえ。またキれた!?」
クククと野瀬は笑った。
「はっきり言って、恥かしい」
プイッと松井は顔を反らした。
「言わなきゃいいじゃん」
「でも。君が不安そうだから」
そう言って、松井は野瀬を見上げた。
「ちゃんと言わなきゃ、君が不安そうだから・・・」
「そういう遥さんの顔も不安そうだよ」
目を合わせながら、野瀬はゆっくりと言った。
「そうだな。1日中、俺はずっと、不安だった」
反らさずに松井は、野瀬の目を見ていた。
「そうだね。俺より、貴方のがきっと、ずっと不安だったね」
野瀬は、フッと笑った。
「でもさ。信じていいよ。俺の側、きっと、すごく居心地いいと思う。男とか女とかさ、超えて。俺個人、信じてくれれば間違いないよ」
「自信満々だな」
「そうだよ。俺がこの世界で1番貴方を好きだからね」
人差し指で、野瀬は空を差した。
「あそこからは結花ちゃんが貴方を想ってる。ねえ、寂しくなんかないじゃん。もう、寂しくなるの、終わりにしようよ」
野瀬の指につられて、松井は空を見上げた。
「そんなことより、愛し合おうよ」
野瀬は空を見上げながら、ハッキリと言った。
「・・・」
松井は野瀬の横に並んだ。
「野瀬」
「はい?」
「そうしよう」
グイッと野瀬のTシャツを引っ張って、松井は背伸びをして、野瀬にキスをした。
その時。チリリンと、自転車のベルが鳴って、2人の背後を自転車が通り過ぎて行く。
松井がハッとして、体を離した。
野瀬は、松井から離れて、ニッと笑った。
「帰りましょう」
「そう、だな。じゃあ、帰ろうか」
2人は歩き出した。と、野瀬が声を上げた。
「やべ。俺、荷物、ホテルに置いたまま」
「え?」
キョトンとして松井は、傍らの野瀬を見上げた。


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ホテル。
しかも、金持ちリツ少年がリザーブした部屋だから、田舎のホテルといえど、それなりに広くて綺麗だ。
「なんで、スィートルームなんて泊っているんだ?」
「いえ、その」
野瀬は、言葉に詰まった。
幸いなことに、松井は、ここが「リツ」の取った部屋だと気づいていないようだ。
そりゃ、そうだ。
帰った筈の男の部屋に、まさか野瀬が転がりこんでいたとは考えないだろう。
荷物を取ってきたら家に戻るからついてこなくていいというのに、
松井は律儀にホテルまでついてきた。
「なんとゆーか、実は俺は、結構金持ちで。遥さんにフられて、ヤケになって、ついつい、こーゆー暴挙に。気分を復活させる為に部屋だけでも豪勢にって感じ?」
く、苦しい・・・と思いつつ、野瀬は言った。しかし、事実でもある。野瀬は、金持ちのお坊ちゃまであるのだ。
「ふーん」
松井は、なんだか、適当な返事をよこした。
「さてと。えーと、荷物、荷物」
バババと散らかしたものをスーツケースに詰めている野瀬の背後に、松井がスッと立って、囁いた。
「こんな田舎町のホテルでもスィートに泊るほど、金を持っているのか。羨ましいことだな。ソウダ様」
松井は、テーブルに置いてあった朝食券のチケットを手にしてた。
ヤバイ。使わなかった、朝食券・・・。野瀬は、硬直してしまった。
「あのですね・・・」
クルッと松井を振り返って、野瀬は、真剣な顔で言い返す。
「彼は昨日、ちゃんと帰りましたから。勿論、恋人のところへ。ヤツ、単に恋人と喧嘩したから俺のところに慰めに来てもらったっつーか。ホントですよ。
迷惑なヤツだけど、ちゃっかり俺も便乗したっていうか。あ、違う。とにかくです。貴方にフラれたその日に、リツとどーこーなんてしませんからね。アイツとは
もう全然無関係なんです。遥さん。信じてくださいよ」
「・・・」
ジーッと松井は、野瀬を軽蔑したような目で見上げている。
「遥さん。その疑いの眼差し、止めてください」
野瀬は明かに動揺していた。
「・・・」
松井は相変わらず、軽蔑したような目で、そんな野瀬を見ている。
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ、あのねえ」
「わかってる」
「あ?」
「君を信じているから。大丈夫だ、冗談だよ」
「・・・」
野瀬は、へなっと床に座りこんだ。
松井は、ニコッと笑う。
「遥さんは、冗談やんねーでくださいよ。マジで怖い」
ハアと溜め息をつきつつ、野瀬は掌で顔を覆った。
「君はからかうと面白いな。支度、手伝うよ」
「遥さん」
野瀬は松井を手招いた。
「ん?」
松井は、野瀬の側に屈んで、野瀬を覗きこむ。
「突然ですが、貴方を抱きたくなりました。いいですか?」
「え」
急に抱き締められて、松井はギョッとした。
「抱いていいですか」
囁かれて、松井は僅かに首を動かして、部屋の隅にあるベッドをチラリと見た。
「ああ」
抱き締め返し、松井はうなづいた。

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野瀬は、バッグの中から、なにやら小さな容器を取り出した。
「この前ね。海外に行ったリツが、みやげにって」
「?」
松井はそれを見て、キョトンとしている。
「lube。潤滑剤だよ。これで遥さんも少しは楽にセックス出来るよ」
「・・・」
カッと松井の顔が赤くなる。
「露骨に言わないでくれ」
「唾液だとさ。渇いちゃうし。色々問題あるからね」
「だから!言わなくて、いい。そーゆことは」
「そうだね。とりあえず使ってみるべきだよね」
野瀬は、lubeを指にのせた。
「遥さん。女みたいに濡れてる」
「・・・っ」
さっきから、野瀬は言葉で、松井を責めている。
肝心の体は、松井の敏感な部分を長い指で堰き止めているし、空いたもう一つの手の指は、最奥をlubeで濡らすことに余念がない。
ソコを濡れた指で掻き分けられる度に、松井は目をきつく閉じて堪えた。
言い様のない感覚が、ジワジワと体の熱と共に浮上していく。
「あ、野瀬・・・」
「うん。もう少しの我慢」
クチュッと、淫らな音が響く。
「も、いいっ」
体が熱くて、たまらない。
「もう、いい?本当に?」
松井はコクコクとうなづいた。
「そか。じゃあ、いいか。実は俺も、遥さんのココ、見てるだけでイキそうだから、そろそろヤバイ」
「うっ」
なんだって、こう、ベラベラとそうやって露骨なことを言うのだろうか。
この男は・・・。
自分は、選択を間違えたのではないか?と、松井は動揺する。
毎回こんなことをされたのでは、体がどうこうという前に、心がどっかに飛んで行きそうだと松井は目を閉じながら思っていた。
「遥さん、遥さん。大丈夫?」
「大丈夫じゃない」
既に、疲れきってしまった松井である。
「まだ、思いっきり序盤戦ですよ」
そう言いながら、野瀬は、松井の体を起こした。
開ききっていた脚を、松井は即座に閉じた。
脚の付け根が、ひどく、熱い。
思わず、チラリと自分の下半身に目をやった松井だったが、その僅かな間に、野瀬の腕が伸びてきて、ドッと体が野瀬の胸の上に覆い被さってしまった。
「遥さん。上です」
「!」
体に当たる野瀬のモノを感じて、松井はギョッとした。
「上って・・・」
「この状況で、体位を説明しなければならんでしょーか」
クスッと野瀬は笑った。
「イヤだっ」
松井は首を振った。
「じゃあ、どういうのがイイですか?これがイヤならば、その口で言ってもらいましょーか。好きなように抱いてあげます」
野瀬は、松井を見上げては、きっぱりと言った。
「!」
好きなように抱いてやるだと?
どういうふうに抱かれたいかを自分で言わなければならないのか?
松井は考えただけでも、恥かしくなり、唇を噛み締めた。
「君は、なんて意地が悪いんだ」
「昼間は。言うとおりにするからって言ってくれたじゃないですか」
「昼間・・・。って、そうだが。別に体位を示して言ったんじゃないっ」
「ですから。言ってください。俺も言うとおりにしますから」
松井は、野瀬を見下ろして、キッと睨んだ。
軽く笑っている野瀬。
明かに。野瀬のが場数を踏んでいる。
妻しか知らない。
ましてや、男と寝たことのない自分なんか、とても勝てる相手ではない。
松井はそう思って、言いたい言葉を飲み込んだ。
「松井さん。色々考えていると、ココが乾いちゃいますよ。また、塗り直し。俺はいいですけどね」
そう言って野瀬は、手を伸ばし、松井の双丘の狭間に指を挿し入れた。
「っつ」
ビクンッと松井の背が反った。
「どうしますか?」
ヒクヒクと蠢くソコに、野瀬は長い指を出し入れしていた。
「あ、わかった。わかったから。このままでいいッ」
「遥さんは、覚悟を決めると潔いですよね」
「うるさいっ」
松井は野瀬の胸に腕を突っ張って、腰を動かした。
ソロリと、松井は野瀬の勃ったソレに、指を伸ばした。
熱い感覚に、身が竦む思いだったが、それでも松井は、そうやって野瀬のソレを軸にしながら、自分の腰を、その上に下ろした。
「うっ」
ピクッと野瀬の体の上に突っ張っている左手が揺れる。
「頑張って、遥さん」
「なにを呑気な」
「呑気じゃないって。早く来て欲しいんですって」
思わせぶりに、松井の腰に触れている指を、野瀬は動かして見せた。
「そんな」
グッと、野瀬の先端が自分の中に入りこんでくるのを感じて、松井は全身から一気に熱が出て行くのを感じた。
野瀬が、両腕で松井の腰をガシッと支えた。
「遥さん。濡れてるから、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」
「そ、そういう問題じゃないんだ・・・」
進めない。体が凍りついて、動かない。
自分のソコは、確かに蠢いて、野瀬を欲しているのかもしれない。
けれど、けれど。
松井は、野瀬を見下ろした。無言で、目で訴える。
その必死な目は「これ以上は動けない」と言っている。
「そりゃ、そうでしょうね。無理を言ってるのは、最初からわかっていたんです。ごめんね、遥さん」
野瀬は、体を起こし、松井の耳元にそう囁いてから、グイッと腰を引き寄せた。
「!」
ズルッと体が浮いてそして、松井の熱いソコが、更に熱い野瀬のソレを飲み込んだ。
「あ、あっ」
背を弓なりにして倒れそうになる松井を、野瀬は支えて、更に深く、腰を進めた。
「ん、んっ」
野瀬は、松井の後ろ髪を掴んで、自動的に上向いたその顔に、キスをした。
「っ」
思う様、松井の唇を奪い、そして、息を奪う。
窒息しそうな勢いに、松井の体がヒクリと揺れる。
野瀬は松井の顔に手を添えながら、再び、体を倒した。
「好きです。ゴメン。すごく純粋に、不純に好きです。遥さん」
「は、うっ」
唇が解放されて、松井は息を荒げながら、野瀬の胸に顔を埋めた。
激しいキスに、すっかり気を奪われていた松井は、自分のソコに、いつのまにか野瀬が、深く、深く入り込んだことに気づかなかった。
だが、徐々にその感覚は、松井の体を、襲ってきた。
「あ・・・」
「痛くないでしょ。遥さん」
「す、少し」
「そりゃ少しはね。だって、俺のが無理矢理入り込んでるからさ」
「うっ」
野瀬は軽く腰を揺らしたので、松井はうめいた。
野瀬の指は、目の前にある松井の、小さな、だがしっかりと尖っている松井の乳首に触れた。
「遥さんのウィークポイント。でもこーゆー場合は、イイところって言うんだよね」
つまみあげ、指の腹で、ソレを押す。
「い、イヤだ」
「イヤだも、イイって言うんだよね」
事実、ソコを弄ぶと、松井の奥がグニャリと反応するのを、勿論、野瀬は体で味わっている。
「野瀬ッ」
「愛してるよ、遥さん。気持ちよすぎ」
突き上げた腰に、松井は反応した。
「あ、う。ああっ」
「ごめんね。痛い思いさせちゃって。でも、すぐにもっとイイ気持ちにさせてあげるから」
「くっ」
ボロッと松井の目から涙が落ちた。無意識の涙だ。
松井の乳首から指を外し、野瀬はその腰をしっかりと支えた。
空いた手で、松井の勃ちあがったソコの根元を掴む。
「う」
松井は、ギュッと目を閉じた。
「!!」
本格的に野瀬が、腰を突き上げた。
「あ、あ、あ」
閉じた目とは裏腹に、松井の唇からは、声が漏れた。
「んんっ。あ」
ギシギシと揺れるベッドの音に、淫らな擦れ合う音が響く。
「野瀬、野瀬、野瀬・・・」
ズルリ、ズルリと自分のソコが野瀬を受け入れて、鳴いている。
恥かしさと、そして、言い知れぬ感覚に松井は泣いた。
「あ、イヤ、だ」
体中、どこか麻痺しているような中、野瀬が突き上げたその部分は、松井を驚かせた。
「な、なに?」
「遥さんのイイところだよ。きっと、ココが」
「え?」
「もう一回試してみようか」
「いっ。あ、あ、あ」
野瀬は、松井のソコを思いきり突き上げた。
ビクビクッと松井は、体を震わせた。
「う、あ、なに?や、やめろ。そこっ。んんっ」
一気に血液が逆流しそうな、そんな感じだった。
「見っけ。遥さんのイイところ」
嬉しそうに笑っては、野瀬は松井の額にキスをする。
その僅かな動きにですら、松井は反応した。
「んん、う」
ブルブルと、松井の体が震えた。
野瀬を挟み込んでいる松井の奥が、濡れて、そして、熱くて、蠢いている。
「遥さ、ん。きつい。すげえ、本当にココがいいんだ」
そう言って野瀬は、飽きることなく、攻める。
ジュクッと、乱れた音が、響く。
「ん、ん。あああっ」
指を絡めていた松井のソコが、ビクンと動くのを感じて、野瀬は手を放した。
松井のソコが、熱情を放つ。
「ん」
野瀬も、僅かに遅れて松井の中に、熱を解いた。


まだ肩を荒げて突っ伏す松井を、野瀬は抱き起こした。
「遥さん」
耳元で囁いて、そして再びキスをする。
「んっ・・・」
松井がキスに反応しているのを知りながら、野瀬はその体を下敷きにした。
グイッと右脚を掴む。
「野瀬!?」
「足りない」
「待て」
「待てない」
次いで左脚も持ち、野瀬は、松井の膝がシーツにつくくらいまでに持ち上げた。
強引に開かれされた松井の双丘の狭間は、まだ先ほどの名残で、潤っている。
野瀬が、指でソコを広げると、白濁した液体が、ツツッ・・と伝って落ちて行く。
「っ」
松井はその感覚に、ビクッと体を震わせた。
グッと野瀬の、熱を持ったソレが、再び侵入を開始した。
「あ、あ」
松井は、目を閉じて、ソレを受け入れた。
腕を伸ばして、野瀬の体温を求める。
それに気づいて野瀬は、ゆっくりと松井を抱き締めた。

人と抱き合う暖かさを、久し振りに心から味わい、松井は無意識ではない、涙を零した。
愛し。愛し返されることの充足も。
寂しかったのは、野瀬だ。きっと、ずっと野瀬だったのだろう。
そう思い、松井は、ギュッと野瀬を抱き締め返した。
「君が、好きだ・・・」
「・・・ありがとう。遥さん」
止まっていた自分の時間が動き出す。
これからは、野瀬の時間と重なりながら。
重なりながら・・・。


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目を開けると、先に野瀬が起きていた。
松井はぼんやりと野瀬を見た。

「おはよう。遥さん」
「おはよう」
「一緒に目を覚ますの、2度目だね」
嬉しそうに野瀬は笑った。
ガバッと松井は体を起こすと、野瀬に抱きついた。
「っと。どうしたの?遥さん」
「夢かと思った。昨日、目を覚ました時。君がいなかったから」
「なんか。遥さんって・・・。ナチュラルに甘え上手っすよね〜。すっげえ、その度にドキドキするんですけど、俺」
野瀬はテレッと頭を掻いた。
「あ、す、すまない」
カッと顔を赤くし、松井は慌てて野瀬から体を離した。
「謝るこっちゃねーっすよ。嬉しいんだもん」
軽いキスを、野瀬は仕掛ける。
松井はそれを受ける。
「君を追い出した昨日の夜。色々考えて」
「うん」
「寂しいという感情の前に。君が居ないという事実がとても怖かった。妻に出て行かれたあの日よりも。すごく、すごく怖かったんだ」
「・・・」
「なんてことをしてしまったんだろうと考え続けた。とうとう心の中で幻聴まで聞こえるようになってしまった」
「幻聴?」
「結花。早く追いかけなきゃ、野瀬くんは行っちゃうよって、彼女は言うんだ」
松井は苦笑している。
「結花ちゃんが?」
「あの娘の声だと思った。でも。きっと、それは自分の声だ。キッカケをくれたのがあの娘だと思っていたから、自分はそれに縋っている部分があったんだと思う。
でも、あれはきっと、違う。俺の声なんだ。俺が、君を追いたくて。だから、そうした」
「そうして、くれたよね」
野瀬はうなづいた。
「今まで傷つけて、すまなかった。もう1度、聞いていいか?」
「うん。なに?」
「家に。戻ってきてくれるか?」
2人は、視線を合わす。
そして、野瀬は微笑ながら、何度もうなづいた。
「うん」
「良かった」
松井は、野瀬の胸に顔を埋めた。
「帰ろうね。2人で一緒に、あの家に」
再び松井を抱き締め、野瀬は心を込めて、松井の耳元に囁いた。

END

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