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■星空の魔法4

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海は残業の帰り、幾の店に寄り、二人は一緒に帰途についていた。
あと少しで、家に着く。
夜中の道を二人はのろのろと歩いていた。夜風が心地よかった。
幾は鍵がついているキーホルダーを指にひっかけて、クルクル回しながら、先を歩く。
海の脚の怪我はようやく治って、杖なしでも幾と一緒に歩いていくことが出来る。
「海ちゃん、大丈夫?」
幾は手を伸ばしたが、海はそれをやんわり拒否した。
「もう治ってるし。おまえ、俺のこと構いすぎ。大丈夫だから」
「頼られるの嬉しかった。海ちゃんって意外となんでも一人でやっちゃうからさ」
タタッと小走りになって、海が幾に追いついた。もう足は完璧のようだった。
「器用といいたまえ」
ぐっ、と海は胸を張った。
「え〜。器用とは言えないかな」
クスッと幾が笑うと、海は、ヒョイッと幾の顔を覗きこんできた。
「おまえ、なんかすごーく機嫌よいね、今。どしたの?」
「うーん。どうしてだろうね。わかんない」
明らかに疑問を継続している様子の海に、幾は説明した。
「あのね。今までも思ってたけど、この前から海ちゃんと家に帰るのがすごく嬉しいんだ。一緒でも当たり前だったんだけど、なんていうのかな。
その当たり前のことにもっと価値が加わって。嬉しいにときめきがくっついた感じかな」
すると納得したらしく海は僅かに顔を赤くして、
「幾。おまえ、乙女っ子」
とからかった。
「恋する少年って言ってよ」
「少年って。図々しくね?」
クスッと海は笑い、幾の背をバンッと叩いた。
「まあ、俺の足もやっと治ったし。ようやくおまえに迷惑かけずに済むと思うと俺も嬉しいよ。毎日おまえには車で送ってもらったり迎えにきてもらったり。こき使っていたもんな。
おまえが、時間自由になるのをいいことにさ」
ニコーッ、と海が幾を見上げて機嫌よく笑った。
「あ、うん。別に、そんなの」
そう言って、ハハハと笑って、幾はポリッと頬を指で掻いた。
「なんかお礼しないとな。あ。また俺、飯作ってやろっか」
「えっ」
幾の声が引き攣った。
「って、なによ。なんかイヤそうじゃん」
「い、いや。海ちゃんの飯ってキライじゃないけど、個性的すぎてさ」
「ふーんだ。個性的って言葉って、微妙な言葉だよなあ。ふんっ、ふんっ」
完璧むくれた海だが、これ以上機嫌を損なわれては困る理由が、今の幾にはあった。
「海ちゃん・・・」
「ん?」
「あのさ。えっと。め、飯も嬉しいけど、もしお礼とかそーゆーの気にしてるんなら、俺、今晩、海ちゃんが欲しいな」
「えっ」
海は即座に聞き返してきた。
あ〜。伝わってない?と思い、幾は一瞬戸惑った。だが、見る見る間に海の顔が赤くなっていくのを見て、ちゃんと伝わっていることに気づいた幾だった。
「俺が今一番欲しいものって、もらって嬉しいのって、海ちゃんだから」
「うん・・・」
海は小さく頷いた。
「ずっと、我慢してたんだ。海ちゃんの体が回復するまでと思って」
「・・・そっか」
言われた海もカアッと顔を赤くして照れたが、言った幾も頬を染めていた。
いい歳こいた男二人が、なんだって言うのか。
はたからみれば、不気味な光景には間違いなかった。
「や、あの。えっと。え〜と・・・。その・・・。あーあー・・・。うん。そんなんでよいなら」
大分戸惑いながら、それでも海はしっかりとうなづいた。
「・・・ありがと」
鍵穴に鍵を差し込み、幾がドアを引いた。
「・・・」
無言のまま幾の横を通り過ぎ、開いたドアを通過しようとした海の腕を、幾はガシッと掴んだ。
「!?」
海はハッと振り返った。振り返りざまに、幾は海の唇に自分の唇を重ねた。
「幾ッ」
力が強くて、振りほどけない。
「んうっ」
ずるずると海はその場にへたりこんだ。幾もそれを追いかけて、玄関のところで腰を屈めた。
海の逃げる舌を幾が追いかけてくる。
「逃げないで、海ちゃん」
耳元に幾が囁くと、海はピクッと体を震わせた。
「舌出して・・・」
幾がせがむと、海は観念したのか、眉を寄せながら、おずおずと幾に舌を差し出す。
間髪いれずに幾の舌が海の舌を絡めとる。
舌を絡ませあいながら、幾と海の視線がしっかりと交差した。
「んあっ」
飲みこめなかった唾液が海の口の端を伝っていった。
「・・・ここ、玄関・・・」
うつむいたまま言う海の髪を、幾は撫でた。
「知ってる。でも、このままこの雰囲気でいっとかないと、海ちゃん逃げちゃいそうだから」
幾の言葉に、海はびくん、とした。図星だったのだろう。
海が息を整えている間に、幾はTシャツを脱ぎ捨てた。
「海ちゃん、脱げる?」
「ああ」
そう言ったものの、海の視線が、幾の剥き出しの腹筋辺りに突き刺さっていた。
脱ぎかけた手が止まってしまった海を見て、幾は苦笑した。
「手、止まってるよ」
そっ、と幾は海の耳元で囁いた。
「みっ、耳、止めろ」
「海ちゃん、耳弱いの?」
「強いヤツなんていねえだろ。くすぐって、あっ」
はむっ、と幾が海の耳たぶを優しく噛んだ。
「んんっ」
小さく呻いて、海の手がピタリと止まった。
幾の大きな掌が、止まってしまった海の手を柔らかく払い、Tシャツに手をかける。
「幾っ」
スルッ、と魔法のように幾の手が海のTシャツを、その体から剥ぎ取ってしまった。
つ、っとまるで自然に幾の長い指が海の乳首に触れた。
「ん」
自分の声に自分で驚いたようで、海はカアッと顔を赤くした。
「海ちゃん。彼女にも触ってもらってたでしょ」
「・・・女と男の指じゃ、違っ」
カリッ、と乳首を指で引掻かれて、海は「っ」と声を堪えた。
ぶるりと震える海が可愛くて、幾は身を乗り出し、海の乳首に舌で触れた。
「んあっ」
指とはまた違う感覚に、海は、はあっ、と息を吐いた。
左の乳首を舌で転がされ、右の乳首を指でこねくり回され、海は喉を喘がせていた。
「海ちゃん。移動するよ。さすがにここは色々とね」
ぐったりする海の体を幾は持ち上げた。
「一度やってみたかったんだ。海ちゃんをお姫様抱っこ」
「おまえ、重いだろ」
「重いよ。でも、落とさないから。気合で運ぶよ」
にこっと幾は笑った。
ふわんっ、と海を、リビングのソファに下ろして幾はふーっと長い息をもらした。
「海ちゃん、ごめん。二階まで行く気力ない。もう、海ちゃんが欲しくて、たまらない」
「えっ、幾!?」
ソファに横たわる海の体の上に、幾は覆いかぶさった。
「一分一秒でも早く、海ちゃんが欲しい。海ちゃんに挿れて、早く俺のものにしたい」
「・・・」
海が泣きそうな顔になった。多分怯えの表情。それが余計に幾の心に火を点ける。
「がっついて、ごめん。でも、もう我慢出来ない」
そう言って幾は、海のジーンズを下着ごと取り払うと、膝を左右に割り開いた。
「!」
中央の萎えた海のペニスを指で触れてから、幾は躊躇わずに、それを口に含んだ。
「幾っ。ちょっ、おまえ、そんなん汚いから、やめっ」
ガッ、と海は上半身を起こし、幾の前髪を掴んだが、幾は首を振った。
「んっ」
幾の口の中にある海のペニスも幾と同じように揺れて、海はヒッと肩をすぼめた。
「舐めさせて。ねえ、お願い」
前髪を掴んだ海の手を優しく退けながら、幾は海を見上げてそう言った。
「やめっ。恥かし・・・つーの」
「なんで。フェラなんて、しょっちゅうやってもらっていたでしょ。同時にたくさんの女とつきあっていた癖に」
「バッカ。女は、口でやるの・・・キライなヤツ多い・・・んだよ」
「へえ、そうなんだ。じゃあ、海ちゃんもあんまり経験ないんだ、口でやるの」
意外だよ、と幾が呟くと、海は悔しそうに眉を寄せた。
「るさいっ・・・」
「ふふっ」
幾が竿をベロリと舐めあげ、ペロリと亀頭を舌で突いた。
まるで美味しいアイスを舐めるかのように、幾の舌が海のペニスをくるくると舐めあげていく。
袋をきゅんっと揉まれて、海がひくついた。
「ひっ。ああっ。んん、あーっ、も、イくっ・・・」
艶めかしい声を上げ、幾の目の前で海がイッた。ピュッと白濁の液が腹に飛ぶ。
「はあ、はあ、はあ・・・」
目の前で海が喘いでいるのを見て、幾は股間がキリリと疼いたのを感じた。
想像通りに、海のイく時の顔は、凄まじいまでに綺麗だった。
眉を寄せ、やや苦しそうに、でも、目は快感をにじませ、開いた口からは色っぽいというよりはむしろあどけない感じで赤い舌が覗く。
元々、充分に好みの綺麗な顔なのだ。股間が刺激されない筈はない。幾は自分の体の素直さに苦笑すらしてしまう。
「見る・・・なよ」
じっと見られていることに気づいたのか、海が自分の顔を掌で覆った。
「いやだよ。海ちゃんとセックスするの初めてなんだよ。なにもかも新鮮だもの。全部、見させてもらうよ」
「恥かしい」
「そんなに恥かしいの?」
海はコクコクとうなづいた。
「当たり前だろ」
「じゃあ、俺のも舐めて」
「えっ」
「これでおアイコでしょ」
幾がジーンズのジッパーを下ろす。
「待て、幾」
「待たないよ」
待てる筈がないことを海だってわかる筈だ。
「あっ」
海は、目の前に現れた幾のペニスから、慌てて目を逸らした。そのしぐさも新鮮で可愛い。
いい歳こいて、まるで処女みたいな反応だ。
でも、確かに、この歳になると、学生の頃と違い、他の男のペニスなど見る機会などほとんどない。
そういう反応もありか、と幾は冷静に分析していた。
「海ちゃん、触って」
にっこりと微笑んでそう言うと、海がカーッと顔を赤くした。
「もうっ、じゅっ、十分じゃねえかよ。これ以上デカくしてどーすんだよ」
「まだデカくなるよ」
ふふふ、と笑うと、海は肩を竦めた。サイドの髪を耳にかけると、海は覚悟を決めたようにペニスに指を伸ばし、ひとしきり撫でたあと、幾のペニスを頬張った。
「んむっ」
一瞬吐き出されるかと思ったが、海はそのまま口に含んだ。
必死の顔を見下ろして、可愛すぎて死ぬ、と幾は思った。
本当に海が好きだった。
こんなことをしているのが、どこからかが確実に夢なのではないかと思い、うっかり萎えてしまいそうになる。
「海ちゃん、好き」
左手で海の腰を撫で、右手を深く伸ばし、海の最奥の窄まりに触れた。
「ぐっ」
ペニスを愛撫していた海の体が急に強張った。
「大丈夫だよ。いきなり挿れないから。ただ、確かめただけなんだ」
入口に指で触れると、けなげにそこは、小さく収縮している。
海が、咥えながらも、興奮していることがよくわかった。それには幾もホッとした。
入口を指でくるくると撫でると、海がガホッとペニスを口から吐き出した。
「さ、触るなっ」
「でも、触らないと痛いよ」
ひょいっ、と幾は、海の体の向きを変え、うつ伏せでシーツに押し付けた。
「い、幾、まだ、おまえの、途中で」
「いいんだ。俺は、せっかく海ちゃんが目の前にいるのに、外でなんかイカないよ。中でイクよ」
幾は、海の双丘に手をかけ、グッと引っ張った。
海の最奥がぐにゅりと開いて暴かれる。
「や、やだって。幾、俺、無理。ねえ、汚いし、やだって。やめてくれっ」
必死にこちらを振り返って、海が懇願してくる。
そんな必死の海の顔ですら、愛しくてたまらない。幾は、胸の鼓動がドクドクと脈打つのを感じた。
「やめてくれ、幾」
ポロリと海の瞳から涙が零れた時、幾は頭の片隅でカチッとどこかスイッチの入った音を聞いた気がした。
じゅる、と舌を伸ばし、海の奥に侵入した。
「ああっ」
羞恥で海の体がピンッと張りつめた。僅かな後、ブルブルと小さな痙攣がその体に起こる。
強すぎる羞恥のせいか、海の皮膚が赤く染まっていく。
「ん、ん、ん」
入口を舌で舐め回すと、海の爪先が震える。本格的に感じいってるのが見てとれる。
幾は、スッと海のそこから唇を離した。
舌から唾液が糸をひいて、海の最奥と唾液で繋がっているように見えて、壮絶にいやらしかった。
そのまま海の背中にトンッと掌を押し付け、体を起こす。
海の体を傷つける訳にはいかない。幾は、潤滑剤を取りに玄関に足早に戻った。
放りだされたリュックの中にそれはある。
手早く取りだし、居間のソファに戻ると、海はまだ突っ伏したまま、肩で息をしていた。
強烈すぎる感覚に、体と心がついていけず、動けずにいるのだ。
今もかなり戸惑った精神状態でいるだろう。海のそんな背中を摩りながら、幾はそれでも、容赦なく海の最奥に潤滑剤を塗りこんだ。
「やっ、うううっ」
ビクンッと面白いように海の体が跳ねた。
「あ、あっ」
入口から中までぬるぬるの指を突っ込んで、幾は海の体に火を点けてゆく。
「幾、もう、いやだ。幾っ。あっ、ん」
いやいやと首を振った海だったが、同時に体も揺れて、海の奥に埋め込んだ幾の指が跳ねた。
その動きにすら感じたようで、海が小さな悲鳴をあげた。
「海ちゃん。もう、ってさ。まだ、準備してる段階なんだよ。海ちゃんが俺のものになるのは、これからだよ」
「俺は、おまえのモンだから。もう絶対的におまえのモンなんだから、もう今日はこれで許して・・・」
海の言葉に、幾の心がきゅーんと音を立てた。
これ以外の場面ならば、幾は海が頼むことはどんなことでも叶えてあげたいと思っている。だが、今この場面では・・・。
引きさがることは絶対に出来ない。
幾は心を鬼にして、ぬるぬるの指を引き抜き、自分のペニスに手を添え、海の入口に押し付けた。
「あっ」
これから味わうことになる衝撃を想像してか、ぽろぽろと海の瞳から涙が零れた。
「わかってるよ、海ちゃん。海ちゃんが俺のものだって。でも、ココでも感じたいんだ。海ちゃんがどこまでも俺のモノだって。
だから、海ちゃんも感じてよ。ココで俺を、感じて」
ズッと擦れる音が聞こえるかのように、幾は海の尻に腰をぶつけた。
「んんん、あっ」
もがくように海の指がシーツを掴んだ。
「あ、あ、幾ぅ」
切ない声を海が漏らした。
「海ちゃん。好きだ、好きだよ。もうずっと好きだったんだ」
海の腰を両手で支えて、幾は海の体を切り裂くように腰を勧めた。
潤滑剤が、ぶちゅぶちゅと淫らな音をたてた。
「ん、う。あ、幾。俺も・・・」
シーツに突っ伏しながら、それでも海が応えてくれる。
突く角度を変えながら、幾は海の中を擦りあげた。
「ん、ん、ううっ」
体を強く揺さぶられながら、海は目を瞑って、声を必死に殺していた。
ズクッ、と幾のペニスがある一点を突くと、「あうっ」と、海がカッと目を見開いた。
「そこ、ダメだ」
海が朦朧としながら言った。
「ん?ああ、そうなんだ」
幾は片手で自分の前髪を掻きあげながら、海が拒否ったところを緩く突いた。
「ひっ。ダメって。ああ、んっ」
「海ちゃん。気持ちのいいトコは、ダメ、じゃなくて、イイだよ」
抉るように突き、海のイイところを擦りあげ、ギリギリまで引き抜く。
幾のペニスはそんな動きを繰り返していた。
「あ、あ、あ」
海の切ない声が部屋に響き、その声を耳で受け幾は、一瞬ギクリと動きを止めてしまう。
今こうして、海と繋がっていることが、まだどこか信じられなかった。
両想いなんて、本当に奇跡だろ、と幾は思う。
好きになった人が自分を好きになってくれる。
たくさんの中の好きではなく、ただ一人の好き、で応えてくれる。
そんな奇跡、本当に自分の身の上に起こるとは、長い間幾には考えられなかった。
なぜなら兄が好きだったから。
ずっとずっと淋しかった。ずっとずっと辛かった。
だが、同じ強さで想いあえることが出来たあの日から。
ずっとずっと淋しくてずっとずっと辛かった心は、なにをしていても満たされて、なにもかもが幸せだった。
振り返ってみても、決して平穏な過去ではなかった。今でも胸が痛む。
両親を失った、あの途方もない喪失感。
だが、それも、海をこの腕に得たことで、未来が生き生きと輝きだす。
「俺のものだ」
幾は海の背にキスをおとす。
自分の体のすべてを使って、この目の前の体を愛する。
別々の体でいることが厭わしいほどに。一つに融けることが当たり前のように。
「んうっ」
幾は、海の中から、ズルリとペニスを引き抜いた。
海の体を引き起こし、自分の方に向けて、足を左右に大きく開いた。
さっきまで幾を受け入れていたソコは、赤く捲れあがって、ひくついていた。
「幾・・・」
不安気に名前を呼ぶ海に、幾は微笑みかけた。
「んあっ」
そうして正常位で再び体を繋げた。
汗に額に張り付いた海の前髪に触れて、幾が額にキスをした。
「愛してる、海ちゃん。海。俺のものだよ」
体の奥深くに幾を受け入れて、海はうなづいた。
「愛してる。おまえも、俺のものだ、幾」
互いに権利を主張し合い、義務を果たす為に、交り合う。
突かれる度に、海の黒い瞳から零れる涙を舌ですくってやりながら、幾は海の体を強く抱きしめた。
ああ、ここは俺と海ちゃんの家。
これから、ここで、海ちゃんと愛しあう。
ずっと、ずっと。
そう想うと、居間に差し込んでくる月明かりですら愛しく思い、幾はありったけの心を込めて、海の唇に自分の唇を重ねて、その耳元に囁いた。
「海ちゃん。俺イキそう。でも、もっと海ちゃんが欲しい。ねえ、朝までヤッていい?」
もう既に朦朧としている海だったが、コクンと頷いた。
多分、なにを言われたかわかっていないんだろう。
笑って、幾は海の首筋にキスをした。
海の体の、あちこちを、自分の印でいっぱいにしてしまおうと思った。
「っ、イキそ」
痺れるように、一点から注がれる快感に、幾は体を震わせた。
「んっ、んっ。あ、ああっ」
幾の体の震えですら、今の海には快感として突き刺さるようで、海が切なく喘いだ。
「んーっ」
体の奥に叩きつけられた幾の熱情の証に、海の尻がブルリと震えた。
ふるふると震えながら、海は幾に抱きついた。
「大丈夫。まだ抜かないよ。海ちゃんと繋がっていたいから」
海の喉に幾は唇を寄せた。
「淋しがりやの海ちゃん。ずっと一緒にいるからね。だから、海ちゃんは安心して前に向って進んで。でも、時々は振り返って。俺がいるから。いつも、いるから」
腕の中の海が、こくん、と素直にうなづいた。


俺に輝きをくれようと東京へ送り出してくれた海ちゃんに、今度は俺が恩返しする番だよ。
俺に出来ることならば、なんでもしてあげるから。
一緒にいるよ。
ずっと、ずっとね・・・。
手を伸ばしたら、すぐに手を握り返せる距離に。
いさせてほしいんだ。
ああ、どうか。どうか。この夢のような幸せが。
ずっと、ずっと続きますように。
幾は、リビングの天窓から見える星空を見上げて、煌めく星々に、そっと祈った。

END

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