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Anything is possible-0-

小泉りお(コイズミリオ)
3―A組所属・生徒会長。超頭が良く美形だが、
熱血漢の体育会系。女の子大好き。故に妹を溺愛してる。

五条忍(ゴジョウシノブ)
2―A所属・眠るのが大好きな天然タラシ男。
普段はとってもクールです。両刀。好きな子は苛めるタイプ。

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昼休み。
小泉兄妹は、校舎の裏手にひっそりと、立派に育っている大木の下にいた。
「お願い!お兄ちゃん。頼むから!!」

「じょ、冗談じゃねえよ。なんだって俺がそんなこと」
「なに言ってんのよ。これは人助けよ。あの男に、何人の女が泣かされたと思ってんのよ。成敗よ、成敗」
「そ、そりゃ。話に聞けば、大層なひでー男だけど・・・」
「ここは一発ガツンとひどい目に合わすのが正解なんだから」
「だけど・・・。わからんのは、そっからなんだよッ。なんだって俺がソイツをひっかけなきゃならねーんだよ。言っておくが、俺は男なんか興味ねーぞ」
「お兄ちゃんはキライでも、あっちは好きなのよ。そうでなきゃ、ここまで可愛い女の子達を振りまくるのは、納得出来ないの。ヤツがホモだってことを証明したいのよ」
「女ってヤツは・・・。すぐそーゆーことを考える。そんじょそこらに、ホモなんて転がってるかよ。男子高じゃあるめーし」
「いいから、やってよ」
「他を当たれ。俺はいやだ。そんな美人局みてーなこと」
「他がいればとっくにやってるわよ。今のところ、なんの怪しげもなくアイツに接触出来るのはお兄ちゃんだけ。期待してないから、やってみてよ。可愛い茜の為に♪」
「とりあえずはやってみてよ・・・って。てめえな。簡単に言うけど」
ふうと、小泉りおは、溜め息をついた。妹の茜は、そんなりおを見て、キュッと眉を寄せた。
「パソコン」
ドキッ。りおは、思わず胸に手を当てた。
「壊したの、誰?あれ幾らしたと思ってんの?パパは、もうお金出してくれないよ。お兄ちゃんだって、修理費出ないでしょ。私、援交で金稼ぐわよ」
茜は、りおを睨みつけて、物騒なことを言った。
「ま、待て、茜。それだけは止めろ」
「だったら、やってよ。五条忍がホモだって証明してッ。普段から、俺に惚れねえヤツはいねえって豪語してんじゃん」
「それは女相手だッ。男なんて・・・。男なんて・・・。自信あるわきゃねーだろ」
「大丈夫よ。妹の欲目で見てもお兄ちゃんは充分可愛いわ。その自慢のツラでアイツに吠え面かかせて」
バンッと茜は、りおの背を豪快に叩いた。
「う、うむ・・・。まあ、そりゃ俺は可愛いが・・・」
「あ、昼休み、終わっちゃう!って感じでよろしく〜♪」
「あ、おい。待て、茜」
チャイムと共に、とっとと茜は裏庭を去って行ってしまう。
「ちっくしょー。なんだよ。なんだってこんなことに・・・」
りおは、ガンッと近くの木を蹴飛ばした。ヒラヒラと木の葉が数枚落ちてきた。
「ちょっと、悪戯しただけじゃないか。おまえがパソコンに夢中で遊んでくれないから・・・。すこーし水ぶっかけただけで・・・」
かりかりと木の幹を爪でひっかきながら、りおは呟いた。
あんなに簡単に壊れちまうなんて。元々根性のねえパソコンを買ったおまえが悪いンじゃねーか!!」
クスンと、りおは、拗ねた。
溺愛する妹・茜が、最近パソコンに夢中になって、構ってくれなくなってしまったので、ちょっと悪戯しただけだったのに・・・。
「ったく。誰だよ。そのとんでもねータラシ男はッ!五条忍?そんなヤツ、知らねえよーーー」
ぐおおおと頭を掻き、りおはその場に座りこんだ。
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ガラッと2年A組の扉が開いた。
「呼び出ーしッ。五条忍。五条忍。いるか〜?」
すると、休憩時間中の2―Aの教室がざわめいた。
「生徒会長だ」
「りお先輩だ」
「きゃー♪」
りおは、そんな教室のざわめきを横目で見つつ、返答を待った。
「いませーん」
と呑気な答えが返ってくる。
「いねえだと?じゃあ戻ってくるまで待ってる」
人見知りしないりおは、下級生のクラスにずかずかと入り込む。
「小泉先輩、こちらへどうぞ。五条の席が空いてます」
「わりぃな」
ヘヘッと笑いつつ、りおは案内された席に座った。
教壇の真ん前の席だった。
途端に、ドッと、りおの周りに人だかりが出来る。
「先輩。今度の試合応援に行きます」
「あんがとよ」
「りお先輩、明日家庭科の実習があるんです。出来あがったら、持っていっていいですか?シュークリームなんです」
「おう。サンキュー。待ってるぜ。俺、3―Aだから」
「知ってますよ〜。やたー。嬉しい!」
「ずるい、真澄ったら」
「早いモン勝ちだよ〜」
群がる女の子の群れに、満足しつつ、りおは時計を見た。途端にチャイムが鳴る。予鈴だ。
「次は数学なんです〜」
「って。どこ行っちまったんだよ。五条は。戻ってこねえじゃん」
「五条くん。いっつもフラフラしてんですよ。どっかでお昼寝してるんじゃないですかね?」
「んで?昼休みじゃねえだろうが。僅か10分程度の休憩だろ」
「寝るのが、すごく好きみたいだから。そういえば5時間目もいなかったかしら・・・」
「???」
りおは首を傾げた。と、本鈴が鳴った。
「始まっちまうだろうが」
りおは慌てて立ち上がった。
「あー。先輩、もう行っちゃうんですか?」
「授業が始まるじゃねえかよ」
「いいじゃないですか〜。授業受けていったらどーです?」
「なにアホなこと言ってんだよッ」
などと、わやわやと女の子達と会話をしてると、数学教師の遠藤が教室に入ってきた。
「あ、やべッ」
教壇に立った遠藤は、ヒョイと目の前の、りおを見た。
「小泉。なんでおまえがここに居る?」
「す、すみません〜。ちょいとヤボ用で」
「おまえのクラスは1階下だろう。五条はどうした?」
「実は俺も探しに来たんですけど」
と、ガラッと、後ろのドアが開いた。
「小泉先輩〜。五条登場〜。戻ってきました」
「おお」
りおは、後ろのドアを振り返った。
そこには、背の高い男が立っていた。
「センセ。俺の席に知らない人がいる・・・」
ドアに寄りかかって、五条忍なる男は、けだる気に言った。
「誰かって。五条。おまえ、生徒会長を知らんのか?」
遠藤が僅かに呆れた顔をしていた。
「生徒会長?さあて。興味がねえので、知りません」
と言って、五条はりおを見た。

りおは、五条を眺めた。
遠くから見ても、その整った顔がよくわかったくらいだった。
『なるほど。女が好きそーな、綺麗な面した男だ』
180cmは超えてる長身に、小さな顔。切れ長のアーモンドのような形をした瞳が印象的だった。
『言われてみればいかにもホモくせえかも・・・』
と、言うのが、りおにとっての五条の第1印象だった。
「どいてくれませんか?」
何時の間にか間近に来られて、りおは、ハッとした。
「五条忍だな」
「いかにも、そうですが」
「スカウトしに来た。生徒会役員になれ」
「へ?」
「役員が一人病気でダウンして、欠員になった。優秀な人材が欲しいから、スカウトしに来た。光栄だと思え。放課後、生徒会室。来なかったら、殺す。じゃあな」
りおと入れ替わりに、五条はドサッと自分の椅子に腰かけた。
「それが人に、もの頼む態度っすか?」
背中にその言葉を受けとめて、りおは、振り返る。
「なんだと?」
「やだね。誰が行くもんか。サヨナラ、生徒会長」
「てめえッ。それが先輩に対する態度か」
「だったらお互い様だろーが」
りおが、一歩踏み出したところに、ガアンッと黒板消しが飛んで来て、りおの頭にヒットした。
「小泉。退場」
遠藤が、顔を引き攣らせて教壇に立っている。
「数学の授業を始めさせてくれッ」
「・・・。わかった。ならば、こっちにも考えがある。邪魔したな。2―Aの諸君」
すると、ノンビリ屋の集団の2―A生徒達は、「いいえ〜。またゆっくりとお越しくださ〜い」とまったりとした返答をよこした。
りおは、パアンッとドアを閉めて出ていった。
「相変わらず、血の気の多いやっちゃ」
遠藤は苦笑しつつ、教科書を開いた。
授業が始まった。
「なあなあ。今の誰?」
五条は隣の席の女の子に話しかけた。
「熱血漢生徒会長の小泉りお先輩。頭良し、顔良し、運動良しの3拍子揃った剣道部部長よ〜。とっても有名な人なのよ」
まるで自分のカレシかのように、自慢気に説明してくれる女の子。
あんなに可愛い顔してるけど、すっごく喧嘩強いしィ。普段は、強面の方々に囲まれて近づけもしない人なんだから。五条くん、知らなかったの?」
「知らね。ふーん・・・。ありがとな」
と言ったきり、五条はパタッと机の上に顔を伏せた。
「コラコラ、五条。居眠りするならば、もっと密かにやれ〜」
もう一つの黒板消しが、今度は五条の頭にヒットした。

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ガラリ。
カバンを持って、ドアを開けると、そこには強面の男達が数人、たむろしていた。
「ひ、ひぇええ〜」
2―Aのクラスメート達は、恐怖に慄いた。
「なんだか、怖い人達がいっぱいいる〜」
6時間目が終わり、皆、様々に帰り支度をしている時のことだった。
「五条はどこだ」
「あ、まだ、教室に」
と言いながら、カバンを抱え、そそくさと走って逃げる面々。
「五条くん。寝てる場合じゃないよ〜。なんだか、教室の外、すごいことになってるみたい・・・」
五条の隣の席の、井上真由美は、ソロリと廊下を見ながら言った。
「え?何時の間に、数学終わったんだ?」
五条は、やっと机から顔をあげては、目を擦った。
「もうとっくに終わってるよ。遠藤先生、泣いてたよ・・・」
「なにが大変だって?」
「廊下にね。怖い人達がいっぱい立ってるの」
「なんで?」
「そりゃあ。さっきの小泉先輩のせいじゃないの?五条くんをきっと拉致しようとしてるのよ」
「なんだよ、それ。うぜーの」
五条は、リュックに教科書を詰め込み、立ちあがった。
「え、ちょっと待ってよ。今出ていったら、ヤバイんじゃないの?」
「どーしてだよ」
「だから。強面の人達がいっぱいいるから」
「心配してくれてんの?井上サン」
五条はニヤッと笑う。
「そ、そんなんじゃ・・・」
井上は、間近で五条に微笑まれ、ポッと顔を赤くした。
「悪いことしてねーのに、なんでコソコソしなきゃならんのよ」
リュックを肩に背負い、五条は歩き出した。
「気をつけてね」
「どーもありがとう」
躊躇いもせずに、五条は、前のドアから出て行く。
と、ドドッと音がした。
「貴様。五条忍か?」
「そうだけど」
そんな五条の声が聞こえ、井上はパタパタと教室を走っていった。
「五条くん、やっぱり、危ないよ・・・」
言いかけて、井上は、唖然とした。
既に、戦いは始まっていた。
「あ、あ・・・」
あっという間に、一人、二人と、倒れて行く。
「ごくろーさん。小泉先輩に伝えてください。俺が欲しけりゃ、てめえで取りに来いってね」
屍、累々・・・。
五条は、パッと振り返る。井上と目を合わせて、ニコッと笑う。
「ご心配おかけしました〜」
と言って、颯爽と廊下を歩いていってしまう。
「うーん。漫画のヒーローを地でやっちゃうところが、五条くんの五条くんらしきところなのよね〜。こうなると、かえって嫌味よね・・」
井上は、ムムムと呟き、顎を撫でては苦笑する。
「素直には惚れられないタイプだわ〜。でも、カッコイイけど」
ポポッと顔を赤くしては、井上は、去って行く五条の背を見つめていた。
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「情けないッ」
ダアンッと机に足を投げ出して、りおは怒っていた。
今日の放課後の生徒会室には、不穏な空気が流れていた。
「てめえら。それでも全国大会に出る猛者か」
「か、完全にみくびっておりました〜」
「五条め。優男のくせに〜」
おーいおーいと、五条にこてんぱにやられた猛者どもは、りおの足元で泣いていた。
「おまけに。捨て台詞がすげーの、なんのって」
「捨て台詞たぁ、なんだよ」
「俺が欲しけりゃ、てめーで取りに来いって、会長に伝えろと」
「なんだと!?」
カッチーン!
りおは、椅子を蹴飛ばして、立ちあがった。
「剣道部、全国大会の覇者であるこの俺に、てめえで取りに来いだと?」
「は、はい〜」
「偏差値超高の、顔良し、体良し、性格良しの、この俺に、てめえで出向けだと?アイツぁ、一体なにもんだッ」
「そういう生徒会長も、ナニモンだって感じですが」
ボソリと、りおの横で、副生徒会長の川田が言った。
「ご自分で、勝手にスカウトしに行ったんですからね〜。こっちは頼んでいる立場であって」
「っせえ。黙ってろ。川田!後輩は先輩に従う。これ常識だッ」
「はああ。根っからの体育会系人間・・・」
「なんだと!?」
川田は、ビククと首を竦めた。
「すみません。しかし、データーによると、この五条も偏差値は超高ですよ。会長とタメはるんじゃないでしょーか?」
パラパラと、データノートを捲りながら、川田は続ける。
「ほおほお。これはいい人材だ。運動もかなり出来るみたいだし。性格はどうも怪しいですが、とにかくモテまくってますな」
「腹立つデーターグイグイ突っ込んでくんな。どうでもいいわっ」
「過去に振られた女は、20数人です
「女・・・。おい、川田。その調査には、男は入ってねえか?振られたヤツに男はいねえか」
「いる筈ないでしょーが」」
川田はキョトンとしている。
「そ、そうか。そうだよな・・・」
やっぱり俺が調査せんとならんか・・・。しかし、ここまで手ごわそうなヤツとは・・・と思い、りおは、舌打ちする。
「まあ、いい。別に急ぐこっちゃねー」
「なに言ってんですか。勝手に役員クビにしておいて。人出は確実に足りませんがな。そろそろ体育祭ですし。急いでください」
「そーか。体育祭があったっけ」
ムムムと、りおは、腕組みをする。
「仕方ねえ。まともに頼みに行くか」
「とっととしてくださいよ〜。なに考えてんだか知りませんけど〜」
川田は、ジト〜ッとりおを、睨んだ。
「わかってる。さっさと五条を拉致して、生徒会でこき使ったる」
「へえへえ。頼んますよ」
むう。なんだか、変なことになった。と、りおは思った。
しかし。俺の可愛い手下どもをこうも軽々とコテンパにされ、おまけにあの可愛い茜を振るなんざ、どうしたって、許す訳にゃいかねえッ。
見てろ。いづれにしても、吠え面かかせてやる。
この俺が本気になりゃ、あんなガキ、どうとでもなるッ!
五条忍。待ってやがれッ!
りおは、フッと笑い、そのうち腰に手を当てて、豪快に笑い出す。
「・・・」
背後で、川田が肩を竦めては、溜め息をついていた。


怒涛の如く続く・・・

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