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イリアスは無我夢中でカデナの唇に自分の唇を重ねた。角度を変え、カデナの舌を誘う。
ぎこちなくだが、カデナはイリアスに応えて舌を差し出す。絡み合う舌に、唾液がカデナの顎を伝い落ちていく。
イリアスはカデナの唇を吸いながら、僅かに目を開いてカデナを見つめた。すると、カデナの睫が震え、ふっ、とカデナも目を開いた。
いきなり開いた、カデナの翠の瞳と自分の瞳が合い、イリアスは頭のどこかの血管が切れた音を聞いた気がした。
バッ、とカデナの白い体を抱き上げると、イリアスは大股でベッドに戻った。自分の腕に、フワリとカデナの金糸のような髪の感触を感じた。
そんな感覚ですら、今のイリアスには、耐え難いほどの欲情を呼び起こす。
ドサリとカデナをベッドに下ろすと、イリアスは自分のガウンの腰紐に手をかけて全裸になる。
カデナは、やや乱暴にベッドに下ろされたことに、いつものイリアスではない感じを受けて、慌てて上半身を起こした。
「イリアス、おまえ、どうし」
髪を掻きあげながらカデナはそう言ったが、全てを言い終わらぬうちに、圧し掛かって来たイリアスに再び唇を塞がれた。
「んっ」
吃驚したカデナは、イリアスの腕を掴んだが、逆に握り返されてしまう。そしてそのまま、カデナはイリアスにシーツに沈められてしまう。
息苦しいまでのキスの応酬にカデナは目を回しかけた。こんなふうに激しいキスなど、カデナは初めてだった。ドンッと、カデナはイリアスの胸を、握られていない方の手で叩いた。
「くる、しい。イリアス」
「すみません。でも・・・。我慢出来ません。優しく出来ないかもしれません」
「なにをそんなにせっぱつまった顔をしているんだ」
カデナは、やっと解放された唇を喘がせながら、イリアスの頬を両手で挟んだ。
「俺は逃げないって言ったじゃないか」
「そういうことでは、ないんです。カデナ様。貴方は、ご経験がありませんか?押さえがきかなくなるほど、目の前の人を欲しいと思うようなことを。とにかく体を繋げたい、と。獣のようにただ性欲だけに
支配されることが・・・。私は今がその状態です」
「・・・」
イリアスの銀色の瞳が、瞬きをした。
「私はおかしいのでしょうか」
カデナの耳元に、イリアスは掠れた声で囁いた。
「俺に・・・、聞くな。俺にはわからない・・・」
耳元に囁かれたイリアスの声に、カデナは自分の体がゾクリと震えた気がした。震えを、イリアスに気づかれやしなかったか?と、カデナはイリアスを見上げた。
その不安気な瞳は、イリアスを煽るのに充分だった。イリアスはカデナの唇を塞ぎ、思う様味わうと、今度は首筋に舌で触れた。そして鎖骨の窪みを舌で舐めあげた。
くすぐったいのか、カデナの手が伸びてきてそれを阻もうとしたが、イリアスは片方の手でその手を持ち上げ、カデナの頭上でギュッと押さえつけた。
「我慢してください」
「気持ち悪いッ」
「そのうち良くなりますから」
「いやだ」
ブンッとカデナは首を振ったが、イリアスは無視した。イリアスの舌は、首筋を離れ、カデナの胸の赤い突起を探りあてる。躊躇ったが、そこに舌で触れた。
「!」
はっきりとカデナの体が竦みあがった。立てたカデナの膝が、イリアスの腰にぶつかった。何度も、何度も舌で乳首を転がし、やがてソコに歯を立てる。
そうしているうちに、カデナの乳首が勃ってきた。その反応に、イリアスはこういう状況であることも忘れて、なんだか不思議な気持ちで、カデナの乳首を凝視してしまう。
この人でも、感じればちゃんとこういうふうになるんだ・・・などと。
その体を抱く日を不埒なまでに夢に見ていたというのに、いざとなると、実感が沸かずにまるで珍しい玩具を見る子供のような目で、この美しい体を見つめてしまうのだ。
「なにをジロジロ見てるんだっ」
ガンッと、カデナの膝がイリアスの腰を蹴った。
「・・・前から思っていたんですが、貴方は足癖悪いですね」
「うるさいっ」
うっすらと目元を紅潮させて、カデナは叫んだ。
「なっ、なにがなんだかわからない。俺の体をおかしくするな」
と、カデナの方も相当混乱しているようだった。
「大丈夫ですよ。おかしくなるのは、もっと先ですし、それにきっと俺の方が早いです」
イリアスは、伸び上がってカデナの額にキスをした。額から、震える睫にキスを落し、再び乳首に手を伸ばした。
触れてもいないカデナの左の乳首はもうすっかり固くなってしまっていた。イリアスはそれでも手を抜かずに、左の乳首に愛撫を施す。
顔をずらしチラリとカデナを見ると、カデナは目を閉じて唇を噛み締めている。声を堪えているようだった。その顔が妙に可愛くて、そう思うことは、こういう状況では、全て下半身に直結する。
自分の下半身が、ビクッと固くなるのを感じてイリアスは息を飲みこんだ。引き締まったカデナの下腹部を撫でながら、イリアスはカデナの柔らかな肌の感触を味わっていた。
思わず歯を立てたくなってしまう滑らかな腹だったが、我慢する。そして、意外にも濃いカデナの恥毛に指を絡めた。掻き分け、その奥に、既に震え出していたモノを見つけて掌で包み込む。
さっき、乳首で感じたことと同じようなことを考えてしまって、イリアスはハッとする。
ここまで来てしまえば、大して変わりはしない気がするが、それでもこの部分をまたジロジロと眺めていたら、今度こそ殴り飛ばされて、ベッドを飛び出していってしまうカデナが容易に想像出来て、
イリアスはカデナのモノに爪を立てた。
「っつ」
さすがに、最も敏感な部分に触れられ、堪えきれなかったのかカデナが初めて、声らしきものをあげた。
「どうかしましたか?初めてでもないでしょう。自分以外に触れられるのは」
少し、意地悪くイリアスは言った。こういう時でしか、強気に出れない自分を情けなくは思ったが・・・。
「触られる相手が、男と女じゃ大違いだっ」
もっともなカデナの言い分だった。だが、他国と違い、この国は同性とのセックスがオープンだ。そんな中で、同性とのセックスが初めてというのは、たぶんとても貴重だ。
やる気があれば、それこそ手当たり次第に経験出来る立場と、そして美貌と体を持つカデナなのだから・・・。けれど、だからこそ・・・。
イリアスは、今まで生きてきて初めて知った。自分の中に、無垢な体に触れることを喜んでしまう、倒錯した気持ちが在ったことを。変態かもしれない・・・。
なんとなくそう思ってしまってゾッとしたが、残念ながらその自覚を持ってしても体は萎えてはくれなかった。心の中でカデナに謝りながら、イリアスは行為を進めた。
カデナらしい大きさのソレに指を絡め、イリアスは口に含んだ。舌を使い、時には歯を立て、カデナの欲望を煽る。
「や、めっ。ファ・・・。イリアスッ」
カデナはとうとうイリアスの黒髪に手を突っ込み、己の下半身から、イリアスの頭を引き剥がそうと必死になった。
「いやだっ」
カデナは首を振った。もう忘れるかけるほど、遠い昔に、やはりこういうふうにミレンダとセックスをしたことをカデナは思い出していた。
だが、これほどに恥かしく、そして、怖くはなかった。羞恥と恐怖がカデナを同時に襲っていた。
蠢くイリアスの舌は、的確にカデナの快感を引き出そうとしていた。カデナの開いた両脚の間に顔を埋め、イリアスはもくもくと奉仕する。
勿論、同性とのセックスの経験があるイリアスには、フェラチオなどは別段異常な行為ではない。
カデナの爪先がピク、ピクと揺れた。イリアスは、不意にカデナの股間から顔を上げた。
「っ、はっ・・・。あっ」
カデナはうつむきながら、肩で息をしていた。その美貌は、金色の髪で隠れてしまって見えなかった。
イリアスは、体を起こし、カデナの金色の髪を指で払う。そして、カデナの顔を覗きこんだ。カデナが、キッとイリアスを睨んだ。
頬を紅潮させながら怒るカデナは、そんな時でも股間に来るほどの美しさだった。
「やめろって言ったのに。き、聞こえなかったのか」
「聞こえてはいましたが、やめるつもりはありませんでしたので続けてました。これからも続けます」
「な、に?あっ」
イリアスは、カデナの股間で既にはちきれんばかりであったペニスに手をかけ、両手で包みこんだ。ユルユルと撫でて、そして時に引っ掻きながら、ペニスを弄ぶ。
先端から溢れてくる白い液体を指先で、中に押し込むように軽く叩く。
「うっ。ううっ。あっ、あ、あ」
ゾクゾクと、射精感がカデナを襲った。イリアスの掌にある自分のペニスが、もう自分のものではないような感覚ですらあった。痺れている。擦られて、痛い程だ。
「やめろ。もう、いやだっ。我慢、出来ないッツ」
「いいですよ。このまま」
「いやだって言ってるのにっ」
「いいんです」
ジュプッ、とイリアスがカデナの濡れそぼったペニスを擦りあげた。
「ああっ!」
カデナが、声をあげる。達する瞬間、カデナの開いた唇の奥にある赤い舌を、イリアスは目に焼き付けた。
眉を潜め、のけぞりながら、カデナはイリアスの掌の中に欲望を解き放った。ドサッとカデナは背中からシーツに沈んだ。
イリアスは、そのままカデナの体に乗り上げた。吐いた快感にひたる暇すらなく、自分の体が受けたイリアスの体の重さに、カデナはイリアスを見上げた。
「イリアスッ」
カデナはイリアスの名を呼んだ。だが、イリアスはカデナの呼びかけに応えずに、カデナの両脚を持ち上げ、その最奥を指で開いていた。
固く閉じたソコを、イリアスは濡れた指で突ついた。
「ん、んんっ」
カデナの全身に、衝撃が走った。
「な、なにをするつもりだっ」
ショックから瞬時に立ちあがり、カデナは持てる全ての力をこめて、上半身を起こした。
「なにって・・・。あ、あの。言わせるつもりですか?」
カデナは肩で息をしながら、イリアスを恐ろしいぐらいの勢いで睨んでいた。その迫力にたじろぎつつも、イリアスは聞き返す。
「バカっ。そんなところに、まさか、おまえのそのデカいのを挿れるつもりじゃないだろうな」
「・・・お誉めに預かり光栄ですが・・・。そのつもりですけど」
イリアスは、今更なにを言うんだ、この人は・・と訝しく思った。
「そんなことをしてどうするっ。俺達は子供を作れないんだぞッ。忘れたのか」
「はあ!?」
「バカな考えは止せ」
カデナは顔を真っ赤にしながら、叫んだ。
「さあ。アホなことをしてないで、こっちへ来い。今度は、俺がおまえにしてやるから」
「・・・って。カデナ様。あの、それマジで言ってらっしゃるのですか?」
「なにが」
「男同士のセックスは、口だけではないんですけど」
「・・・え?」
「・・・」
イリアスは、堪えていたがとうとう堪えきれずに吹き出してしまった。
「あはははははははっ」
「・・・」
カデナは目が点状態だった。目の前で大笑いしているイリアスを呆然と見つめていた。
「ほっ、本当になにもご存知でないんですね。くくくく。うわっ」
ボカッとイリアスの顔に、枕が飛んできた。
「笑うな。笑うなっ、イリアス」
「そ、それは無理と言うものでしょう。くくくく」
顔に枕を受けたものの、めげずにイリアスは言い返した。
「気分がそげた。もういい。やめる」
カデナはまだ顔を真っ赤にしながら怒って、ズリズリと体を反転させて、イリアスに背を向けた。
「それはないですよ、カデナ様」
「うるさい。そこで好きなだけ笑って。イリアス、重いぞ」
イリアスは、逃げようとしたカデナの背に乗り上げ、体重をかけた。そのせいで、カデナの体は、当然のごとく、潰れてしまった風船のように、ぺしゃんっとシーツに崩れ落ちた。
「私達には確かに子供を作れない。けれど・・・。カデナ様。貴方の可愛らしいココのおかげで、私達は別の悦びを味わうことが出来るんです」
「・・・おまえは誰だ!?」
ゾーッと、カデナはイリアスの台詞に体を震わせた。イリアスは、言いながら、カデナの最奥に指で触れていて、そして、キュッと萎んだそこに、指を突きいれた。
「う、あ」
ビクッと、カデナはシーツを思わず掴んだ。
「この悦びは、貴方と私でなければ、作り上げられないのです」
イリアスはカデナの耳元に囁いた。カッとカデナの体が熱くなった。
クチュ、クチュッと言う淫らな音を立てて、イリアスはカデナの最奥の襞を指でなで上げていく。
「や、めろ。こんなこと、必要・・・ないっ」
カデナはシーツに顔を埋めて、うめいた。だが、イリアスの指の動きは止まらない。
「痛い・・・。痛いっ、イリアス。指、抜いて・・・くれっ」
とうとうカデナは叫んだ。尻の奥を指で弄られる行為は、カデナにとって羞恥よりも痛みが勝った。
「痛いですか?」
「わかりきったことを聞くな」
「さきほどの貴方の精液で、結構濡れていたんですけどね」
「!!」
耳を塞ぎたい気分のカデナだった。恥じ入るつもりは、ここまできたらもうないけれど、あまりにあからさまに言われるのは、気持ちよくはない。
俺は、イリアスのこういう軍人気質なところは大嫌いだ・・・!とカデナは心の中で文句を垂れた。
口に出せば、イリアスは「貴方に言われる筋合いはありません」と言い返しただろう。
「わかりました。善処します」
イリアスは、言った。なんだか楽しんでいるような口調だ。
「調子にのるなよ・・・」
「そんなものに、のってる余裕は、今の私にはありません」
至極真面目にイリアスは答えてきた。「いつもないだろ」と言うのをやはり心の中でだけで済ませ、観念してカデナは目を閉じた。
「!」
善処って、こういうことか・・・。イヤだ、イヤだ。こっちのがもっとイヤだ!!めげるのが早いカデナだった。
「いやだ。いやだ。やめろっ」
尻を左右に開かれて、あっと言う間に、ソコに生暖かいモノが忍びこんできた。それがイリアスの舌だとわかると、カデナは身を捩って暴れた。
「あ、ううっ」
今度は痛くはないが、とにかく気持ち悪かった。虫が、ソコを這っているかのような感覚だ。
「い、やだ。ああっ。気持ち・・・悪いッ」
ゾゾッと体を冷し、そして、カッと体が熱くなる。なんなんだ、これは・・・。とカデナの心は、体とは裏腹に、グッタリと疲れて果てていた。
猛烈に暴れ出したカデナに手をやいて、イリアスは名残惜しくも、カデナの蕾から舌を引っ込めた。
「あまり色々言われると、どうしたらいいかわからなくなるので・・・」
イリアスは、カデナとシーツの間に手を差し込んで、そのままグイッとカデナの体を抱き起こした。カデナは強引にイリアスと向かい合わされた。
「とりあえず、最後までやっていいですか?」
「勝手にしろっ」
やけくそでカデナは叫んだ。
「ありがとうございます」
こんな時でも、イリアスは礼儀正しかった。
「カデナ様。脚を開いてください」
「イヤだ」
こんな時でも、カデナは意地張りだった。
「じゃないと、挿れられません」
「挿れなきゃいいだろう」
目の前のイリアスを睨んで、カデナはきっぱりと言った。
「そうですか。では、勝手にさせてもらいます」
「なにをするんだっ」
「勝手にさせていただいてます」
イリアスはカデナの足首に手をかけて、無理矢理脚を開かせた。
「やめろ、バカッ」
ググッと、カデナはイリアスの胸に手を突っ張り抵抗した。
「最後までやらせていただく約束です」
「約束なんかしてない。勝手にしろと言っただけだ」
「だから、勝手にさせていただいているんですよ」
「あ」
力でイリアスに適う筈がないカデナだった。閉じようとする力を簡単に無視され、脚を全開に開かされてしまった。
イリアスの目の前で、そんな格好を晒してしまった自分に、カデナは恥かしさに眩暈を起こしかけた。イリアスは、うつむいてしまったカデナを覗きこんでは、ニッコリと笑った。
「恥かしいのは、お互い様ですから」
「うるさい・・・」
言い返す声が小さく震えたカデナだった。
「痛かったら、どうぞ、私の肩にでも噛みついてください」
「思いっきり噛んでやる」
「いいですよ」
イリアスは、膨張した自分のペニスに手を添えて、目の前にしどけなく開いているカデナの小さな蕾にゆっくりと侵入した。まずは指で、ソコを広げた。
「ん」
カデナは、ギュッと目を瞑った。
「う。ああっ」
ググッと、侵入を開始をしたイリアスのペニスに、カデナは声をあげた。
「ダメだ。絶対に・・・無理。痛いっ、痛いっ!はいらない」
バタバタとカデナの脚が暴れ始める。
「息をはいてください。力を抜いて。そんなに締めないでください」
「無理だ・・って言ってる・・・。痛いッ」
まだ入口付近で、イリアスのペニスは、カデナの襞に絡めとられてしまって動けないでいた。
「カデナ様。力をぬいて」
イリアスは、カデナの耳に囁いた。
「無理だって・・・何度言わせるんだ」
叫んで、カデナは目を潤ませた。
「!」
「痛・・・いっ」
ポロポロとカデナの翠の瞳から、涙が零れた。真正面で、そんなカデナの泣き顔を見てしまったイリアスは、その瞬間に理性を完全にブッツリと手放した。
「あ、やめっ。やめろ、イリアス、イリアスッ」
無理矢理イリアスは、カデナの中を突き進んできた。
「んん、あっ、ああっ、あっ。んーっ」
敏感な部分を、抉じ開けられ、そして突かれて、カデナは喘いだ。
「あ、ああっ。イリアス」
イリアスの体重を支え切れずに、カデナはシーツに倒れた。イリアスが追ってくる。突き上げるイリアスの腰に合わせて、カデナの開いた両脚が揺れた。
イリアスは、探ることすら忘れてカデナの中を夢中で突いた。カデナの膝を、シーツにつくぐらいに深く折って、これ以上はないぐらいカデナの中を深く進んだ。
「ん、ん、ん」
カデナは、翠の瞳から、涙を零して、必死で唇を噛んでいたが、完全に喘ぎを殺すことは不可能だった。
「あ、くぅ」
カデナの中で起こる小さな爆発のせいで、キュウッとペニスが締めつけられ、イリアスの頭は何度か白く霞んだ。重なった部分が、濡れて淫らな音を立てて、泡立ちもした。
それほど深く繋がりあいながらもまだ貪欲に、イリアスはカデナの白い体に唇を寄せた。唇に触れると、カデナはぎこちなくだが、キスを返してきた。
舌を絡ませあいながら、イリアスは満ち足りた気持ちを感じていた。そしてカデナの唇を解放し、あちこちを啄ばんだが、やはり乳首を啄ばむと、カデナの内側が、益々過激に反応した。
それが嬉しくて、何度も乳首を攻めた。カデナは、自分ではもう止められない体の反応に、これ以上みっともなく喘いでしまうことだけを耐えていた。
キスする度に動いて、自分の目の前に降りてくるイリアスの肩に、カデナはガブリと噛み付いた。
「いっつ!」イリアスは、それには驚いたようで、予期せぬ衝撃のせいで、カデナの中を鋭く抉ってしまった。そのせいで、カデナは、「ひ、うっ」と、体を痙攣させた。
「あ、あ、あッ」
と、短く断続的に悲鳴をあげながら、カデナは射精していた。
「カデナ様」
イリアスは、カデナの頭を撫でながら、その体をしっかりと抱き締めた。
汗ばんだカデナの首筋にキスをしながら、解放の余韻に体を震わせているカデナを、ゆるりと突いた。余韻のせいで、カデナの中が一際強くイリアスを締めあげた。
「っうっ」
その勢いに、イリアスも耐えきれずに、カデナの奥に自分の熱を放った。
「ん、んん・・・」
体の奥でジワリと広がるイリアスの精液を感じて、カデナは目を閉じた。閉じた目から、涙が零れた。カデナの体の火照りは、今が最高潮だった。
「あ・・・」
ジワジワとカデナの中を侵していたイリアスのペニスが、退いていく。完全に抜かれる瞬間、カデナはウッと嗚咽をもらしてイリアスの肩にしがみついた。
散々に拡げられていた蕾が、異物の喪失を感じとり、閉じようとしていた。
フッと安心したように、カデナはクタッとイリアスの肩に自分の体を預けた。
「カデナ様。大丈夫ですか?」
「・・・大丈夫な筈あるか・・・」
「カデナ様」
「恥かしくて、死にそうだ」
そう言ってカデナは目を閉じた。
「俺はもう寝る。起こすなっ」
「え?そ、そんな。もう一回ぐらい・・・」
「絶対にイヤだっ。一人でヤッてろっ」
ガバッとイリアスの体から自分の体を離すと、カデナは毛布を頭から被った。
「え、カデナ様。まさか、怒ってるんですか?」
「怒ってる」
「ええっ?」
イリアスは、毛布を頭から被ってしまったカデナを、慌てて四つん這いで追いかけて、覗きこもうとした。
「おまえっ」
ガバッとカデナは起きあがった。ガンッと、カデナの頭がイリアスの顎にヒットした。
「うっ」
イリアスはうめいて、ドサッと背中からシーツに倒れた。
「うっ」
カデナはカデナで、あらぬところの痛みにギクリとなったが、転がっているイリアスをギロリと睨んだ。
「こんなこと、アスクルともしてやがったのか?」
「は・・・。ええ、まあ」
イテテと顎を撫でながら、イリアスは起きあがった。
「・・・」
カデナはムッとした顔になった。イリアスは、パッと顔を輝かせた。
「カデナ様。もしかして、お妬きになってらっしゃるのですか?」
「なにを言ってる。俺が言いたいのは、だな」
ますますムッとしたカデナだった。
「はい」
イリアスはニコニコしている。
「俺が言いたいのは。こんなことしたいならば、今度からアスクルに頼んで、アスクルとやりやがれーっ!俺は、もう二度とおまえとなんか、やるもんかっ」
そう怒鳴って、真っ赤になりながら、カデナはガバッと毛布を再び頭から被った。
「な、なんですって!?ちょっと待ってください。それはどういう意味ですかっ。わ、私が下手くそだったのですか?でしたら、次は頑張ります。お願いします、カデナ様。考え直してください。カデナ様」
「う、うるさいっ。起こすなって言ったろ」
「愛してるんです。貴方を愛してるんです。こんなことは、愛する貴方としかしたくないし、出来ません。それなのに、貴方は私にアスクルとやれと仰るんですか?どういうことですか。カデナ様っ」
わさわさとイリアスは、毛布の上からカデナの体を揺すった。
「や、止めろ・・・。目が回る。止めろっ」
カデナは再び起きあがった。イリアスは、予期したらしく今度はサッと避けた。
「う、動かすな・・・。出・・・る」
カデナは両脚をもぞもぞと動かしていた。なにが?とは勿論聞き返す筈もないイリアスだった。イリアスはカデナをガバッと抱き締めた。
「愛してます。カデナ様」
「わかってるから、離れろ」
「イヤです。こんなに愛してる私に、浮気を勧める貴方には、もう少し、私のことをわかってもらう必要がありますね」
「な、なに・・・?」
カデナは目を見開いた。イリアスは、ガシッとカデナの両膝に手をやり、左右に開いた。
「!」
「今度は、さっきより楽ですよ、カデナ様。ほら、ここがまだ、濡れているから」
イリアスは、カデナのソコに指を挿れた。
「うっ」
パクリと、カデナのソコはイリアスの指をスムーズに飲み込んだ。イリアスが先ほどカデナの中で吐いた精液が、イリアスの指を濡らしつつ、シーツに伝い落ちた。
「いやだ。もう、いやだっ」
「私をわかっていただくまでは、止めませんよ」
「いらんっ。おまえのことなんか、別にわかりたくなんかっ」
カデナの叫びをキスで封じて、イリアスは強引にカデナを再びシーツに押し倒した。



翌朝。
「お父様とカデナお兄ちゃまはどうしているかしら。見に行こうっと」
早起きのダイアナは、そう言ってモニカのベッドを脱け出した。
「だ、ダイアナ様。まだ朝も早いし、お部屋には行ってはいけませんよ」
モニカが僅かに顔を赤くしながら、駆け出そうとしているダイアナを引き止めた。
「なんで?カデナお兄ちゃまはいつも早起きよ。きっとお父さまももう起こされているわ。ちゃんとお二人が一緒に寝ていたかどうか確かめに行かなきゃ。せっかくプレゼントしたんですもの」
ルンッ♪と、ダイアナはモニカの部屋を飛び出した。
「いけません、ダイアナ様」
タタタと、モニカはダイアナを追いかけた。だが、すばしっこいダイアナには追い付かなかった。
「おはよーございますっ」
元気良くダイアナは、バーンッと、カデナとイリアスの寝室にノックもなしに飛び込んだ。その音に、イリアスは飛び起きた。
「な、なんだ、なんだ?なにがどーした?」
寝惚けていたので、イリアスは一瞬状況を把握出来なかったが、ドアのところに娘の姿を発見して、青褪めた。全裸だ。
あのまま寝てしまったので、自分とカデナは全裸なのだ。裸で寝ているところを見られたら、この娘のことだ。必ず質問してくる。
「わーい。やっぱりお二人は、仲良く寝てくださっていたわ」
父・イリアスの気持ちも知らずに、ダイアナは、ピョンとその場で飛び跳ねた。
「ダイアナ。し、静かにしなさい。まだ朝早いじゃないか」
イリアスは慌てて隣のカデナを見たが、彼はまだ目を覚ましていない。当然だろう。昨日はあれから、○回カデナとセックスをしたのだ。
最後の方のカデナは、ほとんど意識を飛ばしていた。
イリアスは、朝起きた時に張り倒されることを覚悟していた。悲壮な覚悟の上に、昨夜の甘い?情事が、成り立っていたのだ。
「お父様、どうだった?私のプレゼントは!?カデナお兄ちゃまと一緒に寝れて嬉しかったでしょう。気持ち良かったでしょ」
走りながら、ダイアナはベッドに向かってくる。
「あ、ああ。ありがとう、ダイアナ。嬉しくて、気持ちよすぎて、父様は、昨日どうにかなってしまったよ」
と、イリアスは正直な気持ちを述べた。
今でも夢のようだ。昨夜のことは・・・。と、ボーッと余韻に浸ろうとして、ハッとする。ダイアナが走ってきているのだ。
「お兄ちゃまは珍しくまだお寝ンネしてるのね。私も寝る〜」
「わー、だっ、ダメだ。ダイアナ」
今まさにベッドにダイブしようとしている娘をイリアスは大きな声で制した。
「なんで?」
ピタッとダイアナがベッドのすぐ前で止まった。イリアスはホッとしながら、「なんでも」と言った。
「納得出来ないわ。もうカデナお兄ちゃまの横は堪能されたでしょ。まだ足りないの?」
「そ、そーではなくて。とにかくダメっ」
「やん。いいもん。勝手に寝るから」
ダイアナは、ベッドをよじ登ろうとしていた。イリアスは続けて大声で叫んだ。
「濡れるぞ、ダイアナッ!ぬっ、濡れてるから、ダメだ。シーツが濡れてるからっ」
「どうして?」

・・・墓穴を掘ったイリアスであった。

答えられないイリアスを気の毒に思ったのか、モニカがババッと走ってきて、ダイアナを後ろから抱き上げて、「失礼しました。どうぞごゆっくり」と言って、走っていってしまった。
ダイアナは、キョトーンとしたまま、モニカに抱かれて去って行く。
「あ、吃驚した・・・」
イリアスはドキドキしつつ、胸に手を当てた。娘に、こういう時、どう説明すればいいものか・・・と悩みかけ、ハッとした。
すぐ隣から忍び寄る殺気。軍人であるイリアスは、こういう雰囲気には、とても敏感だ。
「イリアス・・・」
「カデナ様、おはようございます」
イリアスは慌ててカデナを振り返り、ニッコリと微笑んだ。カデナも「おはよう」と言ってニッコリ微笑み、そして。


ボカッ★

次の瞬間、当たり前のように物凄い音が響き、イリアスはカデナによって、ベッドから蹴り落された。

合掌

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