仕方ないよ、好きなんだから7

いや。どう考えてもこの状況は俺が悪いだろ。
王子が俺を憎んでいることは知っていたし、そんなヤツがそもそも俺に対して好意的な行動をとる筈がない。
これじゃあ、俺は、幸裕に「知らない人や怪しい人についていってはダメ」などという教育は出来ない。
親がこれだもんな・・・。

これって、いわゆる犯罪だよな
医者がこんなことしていいんだろうか。
でも・・・。その犯罪的な行動を助長してしまったのは警戒心のない俺だったりするんだろうか。
そんなことを考えていたら、まるで心を読まれたかのように、王子が名を呼んできた。
「秋城さん」
「・・・」
答える気にならず、視線だけを王子に送る。
「この前の幸裕くんの急病の時の・・・。まだ予防接種受けに来てくださってませんよね」
「は、はい〜↑」
やべ。恐怖のあまり、上擦った声出しちまった。
「これでチャラにしましょう。なに、これも予防接種みたいなもんでしょ」
と王子は、この上もなくクソなこたぁ言っているというのに、あまりに美しい笑顔だった。
なにこいとるー。予防接種たぁ、腕に注射射すんだろうが。
確かに射すっつー行為は一緒かもしんねーけど、大雑把すぎるだろうが。
ケツにチンコ射してりゃ、予防接種じゃなくて、立派にセックスだよ。
だいたい予防接種受けるのは幸裕だったんだ。俺じゃねーーー!!
などとは、この状況で説明することは無意味だ。
というか、怖くて言えない・・・。
さりげに、この行為を正当化してきたよ、コイツ。
なんという、なんという。さすがだよ。さすがだよ。
さすが、お医者様っていうの?頭イイですね(泣)
「あ、あの、王子」
すっかり怯えモードの俺はもうプライドなんてそっちのけで、被害を最小に収めようとグルグルしている。
「なんですか」
俺の態度とは裏腹に、王子の余裕っぷりが憎らしい。
「おっ、俺、あの、俺」
「はい」
「はっ、初めてなんで、その。男とやるの」
もそもそと言うと、王子は、はあ?と首を捻った。
「白々しい嘘は止めてください」
ああ。お、怒らせてしまった。慌てて、王子に縋りつく。
「嘘なんかじゃっ。ああ、もういいや。面倒くさいっ。ど、どうせヤられるならば、どうせならばっ」
「どうせならば?」
うくっと言葉が喉に詰まる。
完全に誤解して、もう言い訳なんか通用する雰囲気じゃないから言わないし、言ったところで火に油を注ぐことになるような気がし
て、いずみのことは、俺の口からは言わないつもりだった。
嫉妬の炎しょってこられて、ガツガツこられたらたまらないからだ。
ここは冷静に落ち着いて、(ヤるならば)優しくしてくださいと言うつもりだったのだ。
やさしくしてください、と言うつもりだったのに・・・。
口が、口が滑って。
「やさっ、やさっ、やさいくださいっ」
と言ってしまったのだ。
「・・・」
王子は、キョトンとし、黙り込んでしまったが、すぐに俺から顔を逸らしては俯き、ククククと笑った。
その態度に、俺は恥ずかしくて、口から火を吹きそうになった。
「貴方という人は。こんな状況でも、そんなに野菜が欲しいのですか。ハッハッ」
珍しく、男らしく王子が笑っていた。いつもは、クスッとかフフッとかクク、なのに。
「あ、いや、ちがっ」
慌てて首を振って、否定する。
「まったく。なんだか憎めない人ですね。せっかくこの前の幸裕くんの恩を返してくださいともっともらしい理由を考えていたのに、
そんなの必要なかったですね。野菜と貴方の体を交換致しましょうでよかったんですもの」
「違うって、違うの、んぐぐっ」
王子の唇が重なってきた。
ああ俺。もうここ最近、どんだけ男とキスしてんの。
もうこれだけは完全に慣れたよ。男と女のキスなんて、なんも変わんねえよ。
「んんんっ」
情熱的なキスだ。見かけと違って、王子は、すごい濃厚なセックスしそう。
って、今、ターゲット俺じゃん、と思いかけたが、舌を吸われ、眉が寄った。
きつく吸われると痛い。痛いぐらいに吸われる。
知らなかった。これってきつく吸われると、痛いもんなんだ・・・。
「ああ、ん」
唾液がこぼれるのを感じたが、どうにも出来ないまま、王子の体が覆いかぶさってくる。
熱い・・・。
ものすごく体格が違う訳ではないが、確実に王子のが上背があるし、力も強い。
同じ男なのに、歯が立たない。
征服されるという感覚が自分を貫く。
女ならばまだ非力という言い訳がつくかもしれない。
けれど、俺は、同じ男で。男なのに・・・。
首筋やらあちこち舐められて、ゾワゾワと体が震えた。
昔から、人と比べて、くすぐられたりするのが弱かった。
「開発されてるだけあって敏感ですね」
案の定言われて、ムッとした。
いっちども開発されてねーし、てか、俺を開発してんのはおまえだよ、と心の中で王子を詰る。
俺の体は全部、未開発地帯なんだよ!と叫んでやりたかった。
「貴方、わざわざいずちゃんの為に、剃ってるんですか」
脚に触れられた時、王子が言った。
「昔から、元々毛が薄いんです。離してくださいよっ」
キスやら体中やら舐められるのは、なんとか我慢出来たが、さすがに、そろそろ・・・的なモードになってくると、抵抗もおのずと
激しくなろうというものだ。
「そうですか。僕は、ここらへんはそれなりに毛があった方が好みなんですよね。女の脚を抱えてるみたいで興ざめです」
つつつ、と王子は、俺の足首から太ももに向かって指を滑らせていた。
「それは俺にとっては好都合です。早く目を覚ましてください」
「いえいえ。まだまだね。大人の夜は長いんですから」
パッと、俺の脚から手を離すと、王子は再び俺の胸に顔を埋めた。
「!」
舌先が乳首に触れて、ビクッとした。
右の乳首を執拗に舐めあげられて、俺は唇を噛んだ。必死に声を押さえた。
散々嘗め回した挙句、左の乳首には噛みつかれて、今度こそ声を上げた。
「うあっ」
ビリッと走った痛み。そして、その走った痛みを宥めるかの如く、今度はぺろぺろと舐められた。
「ん・・・」
再び声を押える。
「なかなか素敵な顔をしますね」
王子が、舐めるのを止めて、呟くように言った。
「虐められるの、好きですか?右より左の時が反応イイんですけど」
「おっ、驚いただけです」
「いずちゃんは優しいンですか?彼は甘いセックスが好きそうだ。いや、意外とSにも似合いますよね、あの顔は」
どーでもいいわ!と喉まで出かかった。
しかし、今この場で、俺がいずみに対して触れるのは、興奮した獣を更に興奮させるだけだ。
勝手に妄想でもしとれっつーの、と思って、耐える覚悟を決めた。
「さすが。いずちゃんに抱かれてるだけありますよね。ほら、もうこっちは、勢いがよい」
言われて俺はギョッとした。
股間のモノが勃ってる・・・!?自分でも必死すぎてきづかなった。
「はぅっ」
王子が自分の屹立したものを俺のに擦りつけてきた。
「んー。でも、まだ僕のは足りないかな。それではお願いしますよ」
「えっ」
お願いって。お願いって、まさか・・・。
「興奮して噛まないでくださいよ」
にっこり。
やっぱり〜!????
おっ、男のモノなんて、生まれてこの方咥えたことなんかねーよ。
興奮してじゃなくて、別の意味で噛むよ、こんなん。
てか、ソーセージ言ってたの、てめーだろ。
「どうしました。いずちゃんのじゃないと嫌ですか?」
「・・・」
とっとと終わらせてやるーーーーっ。
そろりと手を伸ばし、王子のペニスに指を添えた。
「ぞんざいな扱いですね。優しくしてくださいよ」
ああ。それは、さっき俺が言いたかった台詞だよ、と苦々しい気分になる。
俺は王子のモノを咥えた。
同じ男だ。多少の違いはあるものの、感じるとこなんざ、似たりよったり。
ケツに挿れられるより、口のがましだ。このまま口でイカせて、二度と勃たなくしてやる。
固い決意で、俺は、王子のモノに奉仕した。
「っく・・・」
自分のモノなど咥えたことなどないのでわからないが、それでも、王子のは俺のよりはデカい。
口の中で王子のペニスを舐めまわしながら、今更ハッとした。
やばい。俺ってば、えづく体質だった。
けど、咥えて、「おえええっ」なんてしたら、俺、一体どうなっちゃうのか。
王子の怒りを考えると、怖くて考えられない。
けど、けど。
「んぐっ、ぐっうっ」
喉の奥まで頑張った結果、やっぱり、ダメだった。
「うえっ」
予想通りの最低な音。これってば、かなりの確率で白けて、チンコ萎えるよな。
「・・・親子よく似てますね。幸裕くんも、喉を見たとき、速攻でオエされましたっけ」
などと、この場でいきなり医者発言をかまし、王子は意外にもムッとしなかった。
どこか、なんか、優しい瞳で、俺を見ては頭まで撫でてきた。
「!?」
すっかり子供扱いっぽい雰囲気だった。
「まあ、いいでしょう。いずちゃんに咥えてもらうならば喜びますが、貴方じゃ、興奮もそこそこでしょうしね」
って、かなり、ご立派に勃っていらっしゃいますが・・・。
目の前にそそり立つグロテスクなものに、俺は涙目ながらに思った。
「いずちゃんも、この程度で我慢出来るなんて、悔しいけれど、貴方のこと、余程気に入っているんでしょうね」
この程度=フェラチオ下手。
下手で全然構わないが、なんかムカツク・・・。
俺は王子を睨みつけた。
「おや。今まで従順だったのに、やはりセックスが下手といわれるのは悔しいんですか。でも仕方ないですよね。上手いとは言えない」
クスクスと王子は余裕の笑いだ。
「俺は別に商売してんじゃねえんだから、下手だって仕方ねえだろ。愛がありゃいいんだよ。こんなのっ」
「ふん。だからこそ余計にムカつくんですよ」
そう言って王子は、グイッと俺の両足首を掴んだ。
「うあっ」
しまった。俺ってば、ここまで我慢してきて、なんで肝心なときに煽るようなこと言っちゃうの。
しかも、フェラ下手って言われてなんで怒るかな、自分。下手で多いに結構だろうが!
カチンと音がして、王子の長い指が、ローションのボトルの蓋を開けた。
「!」
とろ〜りと上からローションをふりかけられる。
まるで、サラダにかけるドレッシング状態だ。
体に降り注ぐ冷たいローションに、俺はビクビクと体を跳ねさせた。
「なかなか色っぽいですよ。いちいちビクビクしてるとこ」
クククと笑う凶悪なその顔は、町で人気の小児科医とはとても思えない。
「慣れているんでしょうけど、やっぱりここはきちんとケアしておかないと。使い物にならなくなってあとでいずちゃんに怒られる
のは勘弁ですよ」
くっついた中指と人差し指を開くと、ぬちゃ〜とローションが糸を引いた。
俺は顔を引き攣らせた。
ぐっぷと音を立てて、濡れた中指が奥に差し込まれた。
俺は、モノホンの浣腸以外のモンを初めて胎内に受けた衝撃に「ひっ」と悲鳴を上げてしまった。
「や、やめっ。ちょっ。うあっ」
などと言ってる間に、指が増えたのがわかった。
「さすがに受け入れ慣れてますね」
いや、それ、おまえのローションのせいだよ。どうせ高級ローションなんだろよ、それ。
「あっあ」
体の中をぐちゃぐちゃと掻きまわされる初めての感覚に体中が総毛立つ。
かりり、と中を引っ掻かれると、体がビクンとひときわ跳ねる。
「いつもいずちゃんに可愛がってもらってる貴方のイイところはどこですか?はしたないなんて言わないから、腰を動かして教えて
ください」
イイとこなんて、知らねーよ、そんなん。あるかどうかだって怪しいっつーの。
「ふっ、や、やめろって。きもち、きもちわる・・・」
ああ、マシで気持ち悪い。
胎内の感覚もそうだが、いい歳こいて、男にケツ弄られて喘いでいるなんて、自分が気持ち悪い。
自分の声が気持ち悪い。
グッと唇を噛んで、耐える。
「彼氏にしか教えたくないんですか。まあ、それも仕方ないかもしれませんね。では、勝手に探させてもらいますよ」
指の圧迫が消えてホッとしているのもつかの間。
「!!」
声すら出なかった。
「きついですね・・・」
そんな声が部屋にひどく大きく響いた気がした。
それから、俺の絶叫だった。
「あああっ」
あまりの痛みに、俺は目の前にあるものに縋り付いた。
それが自分に痛みを与えている人間だというのに、まるで助けてくれることを求めるかのように。
「いっ、痛ッ。あ、あ」
バカみたいに涙が溢れた。
ガキの頃、裸足で公園を走り回っていて尖ったものを踏んづけて足の裏を切った時に零れた涙のようだった。
「こちらも痛いですよ。いずちゃんと勘違いされては困ります。力を抜いて」
なんと言われようと、なにかに捕まっていないと、この痛みでどうにかなりそうだ。
「ん、あ」
「秋城さん、うっ」
動いた拍子に体が触れ合い、さっき散々嘗め回された乳首と、王子の乳首が擦れあった。
そんな些細な刺激ですら、今の俺の体には地獄だった。
「イイです・・・ね、今の感触」
ふっ、と王子が耳元で囁いた。
「擦れて気持ち良かった。今の貴方は、落ち着くまで、下で擦るより上のが気持ち良さそうだ」
そう言って王子は俺をギュウッと抱きしめた。
「や、あっ」
揺れる王子の体は俺の乳首と尻の奥を攻めてきた。
「ひっ」
下半身は引き攣った痛みに支配されているが、確かに今の俺には、柔らかい乳首が触れ合う方が感じる。
「あ、あ」
ヒクヒクと体がブレる。
飲みきれない唾液が顎を伝った。
「どうですか。そろそろ、違和感にも慣れましたか」
そう言うと、王子は、グイッと俺の脚を大きく開いた。
股間に突き刺さった王子のモノが目に飛び込んできて、俺は目を見開いた。
とうとう、口だけじゃなくて、ケツで咥えてしまった・・・。

なんの因果で、こんなことに。
目の前が真っ暗になる。
どえらい恰好もさることながら、近年まれに見るこの痛み。
脚を開いたからって緩和されることなどないような気がするのだが。
「ひっ、あっ」
グイッと王子が圧し掛かってきた。
「さて。結構ほぐれてきましたね。では、本来の調子を見せてください。なに、遠慮することはないですよ。このことは、いずちゃ
んには内緒です。てか、絶対に内緒です」
そう言うと、王子の瞳がギラリと輝いた。
「こんなことしたことがバレたら、嫉妬深いいずちゃんに殺されますからね。いいですか」
すちゃ。王子が取り出したのは、携帯だった。
「!」
「撮らせていただきますよ。保険にね」
「ちょっ」
パシャッ、と部屋にフラッシュ。
「や、やめっ」
顔を隠そうとしたが、片手で遮られて、確実に顔を撮られた。
そして、繋がってる部分も、全て。
「大丈夫ですよ。ネット流出とか絶対にしませんからね」
ふふふ、と王子は笑い、ポイッと携帯を枕の下に差し込んでしまう。
「さあ、全部みせてください。いずちゃんに愛されている体を。いずれ僕がいずちゃんを愛する時に、参考にさせてもらいますからね」
「いやだ。やめっ」
ジタバタ。
「ああ、ん、んんっ」
ぐぬぬぬと胎内で膨れ上がる王子のペニスに、俺は体を捩った。
「貴方が教えてくれないならば、僕が探しますよ。いいところ。いずちゃんはどうやって探したのでしょうかね。きっと、何度も何
度も、根気強く貴方のココをこうやってねっとりと掻きまわしたのでしょうね。彼は、とても、根気強いので。だから、僕も、いつ
かはいずちゃんのイイところを根気強く探す予定なんですよ」
うっとりと王子は言った。
かっ、勝手にさらせ、てめえら。
なんでおまえら幼馴染の関係に、俺が巻き込まれてんだよぉぉ・・・。
「やっ、うっ」
王子が突いた一点に、体が無意識に跳ねた。
「おや。ここですか。ああ、そうですね。ここだ」
ズンッとペニスで押されて、俺は、竦みあがった。
「なっ、えっ」
ゾクゾクと体が震えた。今まで全身を支配していた痛みが、いきなりフワッと浮いた感じで、別の感覚が下半身からせりあがってきた。
「!?」
「どれぐらいで貴方は、イクんですかね?でも、いきなりイカせちゃつまらないですね。あちこち研究しないと」
そう言って王子は、再びキスをしてきた。
かなりの濃厚なキスだ。
「あっ、あっ」
やばい。本格的にセックスに突入してしまった。
勿論もう逃げられないけど、本当になんでこんなことに。
いずみ、俺を守るって言ったくせに。アレどころか、とんでもねーことまでされてんぞ、俺。
なのに、全然、助けに来てもくんないで・・・。
てか、仕方ねえよな。
いい歳こいた男が残業って言って、どんだけ帰りが遅くたって心配される筈ねえもんな。
帰りに飲んで、どっかで潰れてるぐらいに思われてて、
「ユッキーのパパはしょーもないねぇ」
ぐらい幸裕に言って呆れて笑ってるんだろうよ。
俺だって、野菜につられて、フラフラと王子についていってしまったなんて言えやしねえよ。
いずみは魔法使いじゃない。来てくれる訳が、ない。
バカだぁ、俺って。
溢れてくる涙を、めちゃくちゃ自然に、王子が舌で拭った。
「痛いですか?」
その声は、医者の王子の声。
「・・・」
無言で頷くと、抱きしめられた。
暖かい体温。妻だったら、恋人だったら。このまま、その背に腕を回したいところなのに・・・。
と、枕の下に置いてあった携帯が、ブブブと振動した。
俺と王子は同時にびっくりして、体を離した。
「もしもし」
携帯を手に、王子が律儀に電話に出た。
『おーまーえー。今、なにしてんの』
「いずちゃん!!」
明らかに王子の顔色が蒼白になっていくのがわかった。
『まさかと思うけど。まさかとは思うけどさあ。まあ、いいや。ドア開けて』
「えっ?今、どこ。なんで僕の番号知ってるの」
うろたえる王子に、俺の方が驚いてしまう。
すげえ、いずみの威力って・・・。
『アタシいずちゃん。今、貴方の家のドアの前よ。開けろっーの!』
ドンドンドンッ、とドアが激しく叩かれた。
ポトッ、と王子の手から携帯が落ちた。
「秋城さん・・・。さすがに、僕、この状況で冷静でいられる自信はありません。キッチンに、野菜。
やまほどあるので、もう好きなだけ持っていってください。ええ、もう全部的な勢いで」
「・・・は?」
バッ、と王子はシャツとジーンズを身に着け、携帯だけを握りしめると、玄関に向かって走り出した。
ロックを解除して、ドアが開く音がした。
「あっ、こら、待て。てめえ、昔と変わんねえな。逃げ足速くて。こらあっ、待ちやがれッ」
廊下でいずみの声が聞こえた。バタバタと走り去る足音。
どうやら助けは来たようだが、これって助けって言うのだろうか。
結局俺ってば、きっちり犯られてしまってるしさ・・・。
俺に出来ることと言ったら、今は。
開きっぱの脚を、そろそろと閉じることだけだった。
「いてぇ・・・」
それでも、尻の奥が痛くて、涙が零れた。


続き

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